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【白井未衣子とロボットの日常】5・酔狂の日《7》
※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。
愛嬌市は南北問わず、河川の数が豊富であった。
居酒屋の北には愛嬌市を代表する巨大河川も存在する。
巨大河川から枝分かれした、小さな川の側で、武人と女性は歩みを止めた。
「店長には許可貰ってるの。だからクビまでいかないわ。」
女性は石の柵にもたれ掛かっていた。
「隠さんでもわかる。お前は…。」
「気づいてると思うわ。海王星圏ミラニアのニシア・ペディルドだ、って言いたいのでしょ?」
「話が早いな…。」
武人は言おうとしていた事をニシアに見抜かれた。
彼の表情は居酒屋内と違い、笑っていなかった。
彼は石の柵から離れていた。
「ちょっと話、付き合うぐらいいいじゃない。隣に来てよ。」
ニシアの誘いに仕方なく武人は乗った。
彼も石の柵にもたれ掛かった。
「綺麗なところねぇ。地球は。」
「…どうやって降りたんや?」
「まだ強張ってるわよ顔、リラックスしなさいな。」
「まあ聞かんでも予測つくけどな。」
「本当、貴方の勘は鋭いわね…。若年期の優れた能力といい…。」
「よせや。今は静かに暮らしてるんや。過去は振り返りたくない。」
武人が言った後、ニシアは武人の体に触れた。
武人は触れた手を握った。ニシアは顔を近づけた。
「ねえ。平和に生活したいんでしょ?」
「…何のつもりや?」
ニシアは掴まれてない手で武人の頬に触れた。
今までの会話の時よりも、声量を落とした。
「この星気に入ったの。星の民を刺激しないようにしてあげる。」
「…手を出せへんってか?」
「そう解釈してもらっていいわ。その代わり、」
ニシアはハイヒールのつま先を上げて、更に武人に接近した。武人の耳元で、ニシアは条件を提示した。
「私の恋人になって下さらないかしら?」
ニシアは美貌には絶対の自信があった。
髪型、お肌、チャイナドレス。
どれを取ってもボロは一切ない、完璧に綺麗な美人だった。
男性である武人が惚れないはずがない、と信じていたのだが。
結果はニシアの期待を裏切る形になった。
「断る。俺はお前が信用でけへん。たかだか若年期に1戦交えただけの奴に。」「なっ…!」
ニシアは武人から瞬時に離れた。
微笑みの表情は驚愕の表情に変わった。
「私とあなたで協力すれば、他のHRなんて…」
ニシアは簡単に引き下がらなかった。
「潔白な奴ならまだ同情の余地はある。お前は黒い影がある。俺には見える。それに、」
今度は武人がニシアを引き寄せた。顎を親指でグイッと上げて。
「お前、『オス』やろ?性別詐称してまで俺に近づくなや。
わかってる。お前が俺を憎んでいるのは。」
この発言はニシアの怒りを頂点にさせた。
「もういいわ、あなたの望み通りにしてあげる。私が苦しめてあげるわ!」
ニシアは石の柵を乗り越え、川の中へ飛び込んだ。
入れ違いでリュートが駆けつけた。
「遅かったか!」
指で挟める程の極小の槍を持ったリュートだが、武人の腕が制止を促した。
「何故だ!」
「そのままやと溺れるで?」
リュートにはそう言ったが、武人は柵を乗り越えていた。
「宴会はおしまい。すぐに宗太郎に知らせや。こっちは警報を鳴らすように言うわ。」
「待て、お前が溺れ…。」
既に武人が飛び込んで、水飛沫をあげた。
川の深度は深く、ギリギリだがHR形態で泳ぐ動作は可能だった。
リュートは川から離れ、右腕の時計型の通信機を起動した。
通信相手は宗太郎。
走りながら、リュートは時計に向けて大声で言った。
「西条司令、至急警報をお願いしたい!HRです![宇宙犯罪者]の類いであろうかと…。」
『何だと!?』
通信先の居酒屋内はさらに騒がしくなった。