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【白井未衣子とロボットの日常】3・糾弾の日《5》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


マニュアル操縦時での初陣後も、私は毎日[ラストコア]に通っていた。
武人兄ちゃんの問いには答えられなかったけど、だからと言って、サボる理由にはならない。
せめて、私にできる精一杯の努力をしなければ。
次の学校休日。朝から来ていた私は、昼食を食堂で取るようにした。
正午だとやはり人は多い。
でも、座席は確保しやすいので、この多さは苦じゃなかった。
栄養満点なメニューを注文して、席を決めようとすると、ある人物を見つけた。

端の座席で1人座る男性。食事は飲み物とパンだけ。
私はこの人を知っていた。
武人兄ちゃんに挑んだリュート王子だった。
「あの…向かい、いいですか?」
私は先に聞いた。
黙って座るのは相手側が不愉快になるかもしれないから。
王子の返事は。
「ああ…構わない。」
OKらしいけど、どこか元気がない。
やっぱりこの前の戦闘を引きずっているんだ。
私は悩みを聞いてあげようと、向かいの席についた。

「それだけで、足りるんですか?」
「ああ…。随分量が多いようだが、君は食べられるのか?」
「朝はたくさん動いたから食べられるよ。」
訓練を通して、鍛えられてきたから。と私は続けて言った。
そうか、と王子が反応した後は、2人の間に沈黙が続いた。私もどう話したらいいか難しくて…。
でも、このままでは何も始まらない。

私は勇気を出して、王子に話しかけた。
「あの、」「君は…奴についてどう思っている?」
王子が喋り出した。奴…?
「武人兄ちゃん?」
「そうだ。純粋な少女である君は、奴を慕っているのか?」
「助けてくれたんだよ?兄ちゃんは私達を。」
「奴は犯罪者なんだぞ。」
「犯罪者…?私にはそうには…。」
と言いかけた私は、思い出したのだ。
兄ちゃんが言った、『敵になったらどうする』という問い。
私はまだ答えていないのだ。お箸の動きが遅くなった。
「…何か、奴が言ったか?」
王子が私の食べる動作を見て言った。

私は黙り込んだ。王子にはお見通しなのかな、と思ったから。

「もういい。質問を変えよう。」
王子は話さない私を見て、話を切り替えた。
「君は何故、毎日この基地に来ている?学校などあるだろう?」
「学校は行ってるわ。その時は終わってから来ているよ。」
「しんどくないのか?」
「むしろ楽しいよ。新しい事に挑戦できて。」
「それが何を意味するのか、わかってやっているのか!?」
王子の声のトーンが大きくなった。
これは多分、私達子供を心配しているサインなのは、理解できた。
「…教えてもらってる。危険なのは。でも私、学校が嫌いなの。無理して通ってるの。」
「学校が嫌い…?」
王子は驚いた。彼からしたら、学び舎を嫌うなんて考えられないんだろう。
「いじめられてるの私。だから外では私1人にしない決まりができて…。」
「君は1人でも来ているだろう?」
「勇希兄ちゃんの空手について行く、って言って出て来たから。帰りは迎えにくるよ。」

もちろん本当の事。嘘はついてないよ。

王子は質問を繰り返した。
「君はなぜ、いじめられているのだ?」
学校が嫌って答えたら、そう聞いてくる人がほとんど。
慣れているので、正直に答えた。
「私のみる夢がおかしい、って口を揃えて言うんだ。同じ夢しか見れないのに。」
「夢?」
「いつも同じ男の人が戦っている夢しか見れなくて…でもみんなはいろんな夢を見るからおかしい、って言うんだ。」
「…待て。同一の夢しか見れないとは…!」

王子が言い終わる前に、大きなサイレンが響き渡った。
もちろん、警報アナウンス付き。
1週間も経たぬうちに、敵がやってきた…。

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