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カレーポーク
2024年3月1日 05:51
拡大したモニターの映像には、青白い部屋で武人兄ちゃんが、タブレット端末を横に投げ捨てる姿を目撃した。そして、爆発が起きた。煙は部屋の内外で広がっていく。呆気に取られている暇は、なかった。【パスティーユ・フラワー】の目の前に、赤いラインが光る黒いロボが突進してきた!
2024年3月1日 05:56
最低限の微々たるバリアは張っていた。あまりの咄嗟の行動に、【フラワー】は手持ちのロッドで黒いロボとの間隔を取った。突進で機体ごとぶつかると、それだけで致命的な損傷に至ってしまう。突進による加速で、【フラワー】はどんどん後ろへ押される。今度は背後の心配をしないといけない。
2024年3月1日 06:02
数秒の時間で回避に移るのは厳しかった。だから私は、バリアの強度を調整した。衝撃による破損を、少しでも抑える為に。結果的に、【フラワー】は球状の広間の壁に、叩きつけられた。背後にバリアの強度を高めただけで、【フラワー】自体に傷は少なかった。被害は壁のヒビ割れのみだ。
2024年3月1日 06:08
「くっ…!」私はレバーを握っていた両手に、痺れの感覚を味わった。兄ちゃんに対して『残る』を選択した後、1分もかからない内に突撃を仕掛けられた。これが、武人兄ちゃんのHRの、ロボ形態である【ブラッドガンナー】の実力…?私の胸の奥に、得体の知れない痛みが押し寄せてくる。
2024年3月1日 06:16
『怖い』という感情。今までそんな経験を何度もしたけど、度合いが最高潮になるのはこれで3度目だろう。1つ目は10年前の娯楽施設の襲撃での微かな記憶。2つ目は同級生のお兄さん達からの過剰な身体接触による、忘れられないトラウマ。今の突進が3つ目の『怖さ』を感じた瞬間だった。
2024年3月2日 05:33
手の痺れはまだ残る。その回復を待つ時間はない。私達が戦闘の許可をした以上、【ブラッドガンナー】は攻撃の手を緩めないだろう。アレは突進後、距離を離して宙で固定していた。待機のつもりなのかはわからない。静止の時間は終わり、【ブラッドガンナー】は次の突撃を開始した。
2024年3月2日 05:52
迫ってくる、黒いロボ。威圧感がひしひしと伝わってくる。対処を、対処を考えなくては。私が手を焼いていると、突如コックピットのスピーカーが怒鳴り声でやかましくなった。勇希兄ちゃんの声だった。『未衣子!今すぐ俺に代われよ!』言いたい事は即座に理解した。
2024年3月2日 05:57
【フラワー】から【サニー】へのチェンジである。この広間には、私達【パスティーユ】と、武人兄ちゃんの【ブラッドガンナー】しか存在していない空間である。実質、1対1の対決だ。広範囲の複数の敵を片付ける【フラワー】よりも、対人戦闘で発揮する【サニー】に代わるのが良さそうだ。
2024年3月2日 06:02
「わかったよ。勇希兄ちゃん、行って!」私は下の兄の要求を認めた。【パスティーユ】はジェット機に分離しなくても、形態チェンジが可能である。両目を隠さないといけない位の眩しすぎる光を照らして、機体の外観を変化させる。《剛力ガラススフィア》のトライアングルを動かす。
2024年3月2日 06:08
三角形の上の頂点に、勇希兄ちゃんが中にいるコックピットが居座った。光は時間が過ぎれば、薄くなっていく。ピンク色の可愛らしい雰囲気のロボから、太陽のように輝く逞しい黄色のロボへと変貌を遂げた。【パスティーユ・サニー】がこの広間に姿を見せた。私はサポート役に回った。
2024年3月3日 05:36
もうすぐ【ブラッドガンナー】が【サニー】に接近するかと思われた。動きは一旦、停止していた。【パスティーユ】の形態チェンジ時に発する光は、まともに直視すると失明を起こしやすい。遮光性のあるゴーグルや板でも使用しないと、目眩を覚えて倒れる危険性もあるんだ。
2024年3月3日 05:50
発光に気づいた側が守りの体制に入るのは当然だ。できるだけ距離を離して、尚且つ目を、カメラアイを手などで覆い隠す。発光の継続時間は微々たるものだから、淡くなるまで耐えればなんとかなる。コックピット内の地図データが示す、赤い光の点。それは元々、青い光の点だった。
2024年3月3日 05:58
いつの間にか、色が変わっていた。点の色は識別で自動変化したり、手動操作で変える場合もある。【ブラッドガンナー】を示す光の点は、直前まで青く灯されていた。【サニー】のサポートに回るようになってようやく、色の変化に気がついた。突進で襲いかかってきたから、自動変化したのか。
2024年3月3日 06:07
頭の回転が速い和希兄ちゃんが密かに切り替えていたのか。真相はわからない。今は…真実を追及するほど余裕はない。【ブラッドガンナー】は眩しい光のショックから逃れる為に一時停止した。止まる理由が無くなれば、動き回っても何の問題もない。障害物は、無に等しいから。