カブトムシに夢中になった2年間
私のパパは私が幼稚園児の時に仕事を辞めて毎日いつでも家にいた。
高校生になりそのあと浪人生になるまで実家にいたがパパはいつも家にいて
外に出て働きに行く姿は一度も見たことはなかった。
一度もというと噓になるが、一度だけ幼稚園の送迎バスの窓からパパが働いている姿を見たことがある。パパは建築?建設?関係の仕事をしていたので
ちょうど現場に遭遇したんだと思う。
パパが仕事を辞めたのは、病気になってしまったからである。いわゆるメンタル的なものである。
小学生の頃、授業の一環で自分の両親はどんなことをしているのか(訳すと職業は何か?)をまとめて話さなければいけない授業があった。どうしたらいいのかわからなくて本当に困ってしまったことをよく覚えている。当時は、今ほどメンタルで仕事を辞めるとか専業主「夫」とかレアケースだったからパパが働いていなかったのは恥ずかしかった。し、その時から他人の家族について聞くのは辞めよう。なぜなら自分が聞かれたら困るから。が定着したんだと思う。
そんな私のパパは数年単位で趣味が変わる人間に変化していた。
ある時は海水浴にハマって熱海にしょっちゅう通ったり、またある時は植物に目覚めて胡蝶蘭を大事に育てたり。極めつけはタイトルにした「カブトムシ狩り」である。
なぜパパがカブトムシ(クワガタも)に目覚めたのかは知らないが、カブトムシに夢中になりほぼ毎週?山?林?へカブトムシを捕まえるために足を運んでいた。最近ママから聞いた話だと、ある朝パパが家にいなくてママがパパに「今どこにいるの?」と電話したら「カブトムシ」と答えるくらいパパはハマっていたらしい。この話にはオチがあり、おそらく当時パパの存在にママは悩んでいて「このままカブトムシ狩りに出掛けたまま行方不明になって家に帰ってこなけばいいのに」とふと思ったらしい。確かに私が小学生の頃、パパがとんでもなくおかしい時期があってパパと遭遇しただけで怖くてたまらなくて、毎晩布団にこもってママに「大丈夫だから」と言われて寝てた時期があった気がする。し、その後パパが入院して家にいなくて安心感に満ちていた時期があったことは記憶として今もなお覚えている。
話はズレたが、ある日パパとママと私の3人でパパの夢中の趣味に付き合わされることになった。
パパに「ここにカブトムシたくさんいるから」と言われた場所は
たしか「立ち入り禁止」と書かれたロープが張られた林?森?の中だったと思う。大人になって「なんであそこのエリアに入ったのか?」あ!「カブトムシがたくさんいるから教えたくなかったんだ!」の発想にようやくたどり着いた。
捕獲したカブトムシは家で育てられることになった。たまにパパと一緒に昆虫ゼリーをあげたり、実は冬も飼育が必要なことを知ったり(幼虫時代に土をかき回す必要がある)大人になった今振り返ってみると楽しかった思い出だな~と思う。
その後2年間の「趣味:カブトムシ狩り」に飽きたパパは最後は虫かごを開けてカブトムシズが飛んでいくのも見守っていた。これも話の続きがあって
数日後、近所の人から「家にカブトムシがいてさ~びっくりした」と言われ
「そのカブトムシは牛丼家から飛び立ったカブトムシです」とも言えないまま「そうなんですね~」で過ごしたと言っていたパパの話もよく覚えている。
そういえば今、上野の科学博物館で昆虫展をやっているらしい。
もう少し涼しくなったら小学生のあの頃に戻るべく行こう。