ふらっと入ったカレー屋での惨劇
「ごめん、着くの16時になる」
待ち合わせをしていた友達から
そう一報が届いたのは13時半の事でした
間に合うように電車に飛び乗った俺は
14時半には待ち合わせ場所に着いてしまう
さあ、困った、何をして待っていようか
考えを巡らせる事数分
急いで家を出たせいで非常に空腹だった僕は
昼飯を食べながら待つ事にしました
待ち合わせ場所周辺を散策しながら
食事処を探していると、どこからかいい匂いが
誘われるがまま匂いの元を辿った先には
小さなカウンターだけのカレー屋がありました
おお、いいじゃん!ここにしよ!
喜び勇んで、いざ入店
店内には5、6人のお客さんと
いかにも職人といった感じの店長さん
上着を脱いで、ハンガーにかけ
着席してメニューを開くと
一口にカレーと言っても色々と種類があって
2分ほど迷った挙句、ノーマルのカレーを注文
いきがって特盛にしました
「お待たせしました、カレーの特盛です」
こんもり盛られたライスと
なみなみと注がれたルー
さすがは特盛、でも、全然いける
なぜなら俺は腹ペコだから
辛いけど耐えられるレベルだったので
そのままガツガツと食べ進めました
半分を過ぎた頃でしょうか
食べ始めた時は
「カレー、カレー、カレー、水、カレー、カレー」
くらいの割合だったのが
「カレー、カレー、水、水、カレー、水」
と、徐々に水が追い上げて来ていることに
気がつきました
今思えば
これに気がつくべきではなかったのです
意識を向けてしまったがために
次第に舌が燃え盛る様な
痛みを発し始めたのでした
カレー優勢だった割合がもう
「カレー、水、水、水、カレー、水、水」
くらいになっていました
まだ半分弱も残っているのに
地獄、誰か助けて
店長さんも俺の異様さに気がついたのか
「え?まさか残して帰りませんよね?」
みたいな雰囲気を醸し出しながら
チラチラとこちらの様子を伺っていました
これは大変な事になった
こうなってしまってはもう
待ち合わせがどうこうという話ではない
自分がここを生きて出られるかどうかの話である
しょうがない、腹を括れ!男だろう!
と、自分を鼓舞しながら食べ進めました
残りが2割くらいになった頃にはもう
カレーをスプーン一杯につき、水をグラス一杯
と言った感じになる程
舌に激痛が走っていました
俺はあの時、泣いていたかもしれません
激闘の末、なんとか完食した俺は
ふらふらになりながら店を後にしました
満腹感はあれど、今、腹を満たしている物が
カレーなのか、水なのか
もう俺には分かりませんでした
そこから4時間、舌の痺れは回復する事なく
「特盛にさえしなければ...」と自責の念を
募らせるばかりでした
今日の名文
「初めて行くカレー屋で
無計画に特盛を頼んではいけない」
終