見出し画像

7月12日は人間ドックの日!お酒の飲み方を見直すきっかけに

飲酒は多くの身体疾患の原因となり、緊急の治療を要する状態になることがあります。既に飲酒に伴って生じる問題が重篤である場合には、医師にご相談ください。

7月12日は公益社団法人日本人間ドック・予防医療学会によって制定された「人間ドック」の日です(1)。病気の早期発見や予防のためには、定期的な健康チェックが欠かせません。飲酒は高血圧、肝障害、様々ながんなど多くの身体疾患の原因であることが分かっており、飲酒習慣のある方にとっては、人間ドックの受診が生活習慣の見直しを行う絶好の機会になります。そこで今回は飲酒が影響することが分かっているがんについて紹介し、早期発見に役立つ人間ドックの検査と「減酒」について、CureAppで減酒治療アプリプロジェクトを進める宋医師が解説します。



人間ドックとは?健康診断との違いは?

 人間ドックは予防医学の観点から、自覚症状の有無に関係なく個人が任意で受ける任意検診です。法定健診(定期健診)よりも検査項目が多く、40〜100項目程度のより高度な検査で普段気づきにくいところなど、全身を徹底的に検査することが可能です(2)。

まずは知ろう!飲酒によりリスクが増すがんとは

 令和4年の死亡数を死因順位別にみると第1位は悪性新生物(以降がんと記載)となっています。年次推移でみると、がんは一貫して上昇しており、昭和56年以降常に死因順位の第1位となっている疾患です(3)。そんな誰もがかかる可能性のあるがんが、飲酒によってリスクがあがることが研究で明らかになっていることはご存じでしょうか。飲酒は日本人において食道がん、大腸がん、肝臓がんのリスクが高くなることは確実であると発表されています。

【食道がん】
 1日の純アルコール摂取量*23〜45.9gで2.6倍、46g以上で4.6倍、100gで12倍と摂取量に比例してリスクが増加します(4)。(下図参照)
*お酒の量(ml)ではなく、お酒に含まれる純アルコール量(g)に着目します。各社の商品裏面に記載している場合もあります。

アルコール摂取量と食堂がん罹患リスクの関連

【大腸がん】
 部位別の死亡数男性2位、女性1位となっているがんです(3)。男性の場合、1日の純アルコール摂取量23〜45.9g、46〜68.9g、69〜91.9g、92g以上のグループでそれぞれ1.4倍、2.0倍、2.2倍、3.0倍と摂取量に比例してリスクが増加します。女性においても1日の純アルコール摂取量23g以上で1.6倍とリスクが増加します(4)。(下図参照)

アルコール摂取量と大腸がん罹患リスクの関連

【肝臓がん】
 肝臓病の病歴のない人に限ると純アルコール摂取量46g以上でリスクが上がる傾向があります。女性においては純アルコール摂取量23g以上で3.6倍のリスクが増加することがわかっています(4)。しかしながら、上記の量未満であれば安心という訳ではありません。国際的な研究を統合すると、少量であっても飲酒量が増えれば増えるほど肝臓がんになる確率は高くなるようです。肝臓がんはアルコール性肝炎や肝硬変などの長期にわたる病態が背景にあります。肝炎や肝硬変の状態にまで至っている場合は断酒が必要です。

【その他のがん】
 また国際的な研究により乳がん、口腔、喉頭、咽頭がんも飲酒により発症リスクが上がることが確実であることが分かっています。食道や大腸、肝臓など消化器のがんは飲酒によりリスクが上がるとイメージできる方もいると思いますが、乳がんなど消化器以外の臓器にも影響があることが明らかにされていることに驚く方もいらっしゃるのではないでしょうか。乳がんは30代前半から急増することが分かっており、女性のがん罹患率第1位となっています(3)。飲酒習慣(週に3日以上飲酒し、かつ飲酒日1日当たり1合以上を飲酒すると回答した者)のある女性の割合は増加傾向にあり(5)、アルコールの影響が懸念されます。

飲酒量が多い人のがん早期発見に役立つ検査

 人間ドックの検査項目は多岐にわたるので、どの検査を受けたら良いのか、どの検査が何を目的に行っている検査なのか分からない方も多いと思います。性別、年齢、生活習慣によりリスクの高い疾患は異なります。飲酒習慣のある方はがんのリスクが上がることも考慮して検査を受けることを検討してみてください。がんの早期発見に関連する検査項目を下記に示します。

がん早期発見に役立つ検査項目

お酒の飲み方を見直そう

 血液検査結果に大きな異常はなくとも、飲酒習慣がある方はがんのリスクは高くなります。厚生労働省が提唱する健康日本21(第2次)において生活習慣病のリスクを高めるアルコール摂取量として、1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上が掲げられています。さらに、これまでご紹介してきました飲酒とがんの関係についての様々な研究結果を踏まえると、がん予防のためには20g未満にすることが推奨されると考えられます(4)。例えばビール500ml(アルコール度数5%)に含まれる純アルコール量は20gですので、アルコール量の目安にすると良いでしょう。また、1週間のうち飲まない日を設けることも重要です。「減酒」に努めると共に、がんの早期発見のために人間ドックを是非活用してみてください。

(1)出典:日本人間ドック・予防医療学会HPhttps://www.ningen-dock.jp/
(2)出典:e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-093.html
(3)出典:厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf
(4)津金昌一郎 アルコール飲酒とがん:エビデンスの現状 医学のあゆみVol.274No.1 2020.7.4 77-82
(5)尾崎米厚 金城文 アルコールの疫学-わが国の飲酒行動の実態とアルコール関連問題による社会的損失のインパクト 医学のあゆみVol.274No.1 2020.7.4 34-39

解説