撮影の前に「人間関係」がある。フォトグラファー・葵とカメラの向き合い方。|Artist Interview - 葵 1/4
What’s “Artist Interview” ?
写真のCURBONが、「写真の階段の登り方」をテーマに、活躍中のアーティストにインタビューする連載企画。フォトグラファー・葵さんのインタビューを、全4回に渡って掲載します(全記事は、記事末尾を参照ください)。
葵 profile
2001年生まれ。高校一年生の冬にフィルムカメラで学校生活を撮り始め、TwitterをはじめとするSNSで発信。プールで撮影した青の写真が話題になり、米原康正氏のグループ展に参加。3月には高校生活の集大成となる個展『未完成な青』を開催。青が好き。
・Twitter ( @aoii6327 )
・Instagram ( @aoii6327 )
・note ( @unfinished_blue )
写真はときに、その人と世界の向き合い方を映し出すものだと言われます。カメラの使い方を覚えたのに、憧れのあの人と同じように撮れない。奮発して機材を揃えたのに、いっこうに上達した実感がない……。そんな葛藤を覚える人も、少なくないはず。
そんな中、フォトグラファーの葵さんは、メルカリで買ったフィルムカメラやスマホのアプリなど、身近なツールを使いながらも、独自の青の世界で見る人を魅了しています。
機材のスペックにはこだわらないという彼女は、いったいどんな感性を持ってファインダーをのぞいているのでしょう。そして、その視点はどうやって培われてきたのでしょう?
自分にしか撮れない写真ってなんだろう? ほかの人とは違う、自分だけの「表現」を探している方に、ぜひ読んでいただきたい全4本のインタビューシリーズです。
以下
インタビュアー: 片渕ゆり
インタビュイー:葵さん
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ーー 葵さんの写真というと、人を撮っていらっしゃるイメージが強いのですが、普段からやっぱり「人」に興味がありますか?
そうですね。コミュニケーションの一部として撮っている感じがすごくあります。
人と自分のあいだにあるものって、目に見えないじゃないですか。それを写真で表現するのが楽しくて。だから、物撮りとか風景にはあんまり興味がないです。
これは写真を撮り始めた高校生の頃からずっと思ってたことなんですけど、自分が撮る意味のようなものを写真に落とし込みたいんです。必要性って言葉を使っちゃうとちょっと固いかもしれないんですけど。
私と目の前の人だからこそ撮れるものを、作品に落とし込みたいなって思っています。私と相手の、お互いらしさを合わせてひとつのものを作るような感覚。
ーー 「必要性」というのは、別の誰かじゃなくて、葵さんと相手の人だからこそ撮れる写真ということでしょうか?
ああ、そういうのです。まさにそんな感じです。自分たちの関係性でしか写せないものって絶対あると思っているんですけど、それに重きを置いている感じですかね。
だから、フォトグラファーと被写体っていう関係で出会った子とも、めちゃめちゃ仲良くなって、何回もそのあと会ったり遊んだり、という関係に発達していくことも多いです。撮影の1回きりっていう関係は、あんまりないかもしれない。
ーー モデルさんとカメラマンとして、ビジネスライクに「こんにちは・さようなら」で終わるようなことは、したくない?
なんかちょっと寂しいなって思いますね。もちろんお仕事であればそれも全然悪いことではないと思うんですけど、せっかく出会ったからには相手のことをもっと知りたいですし。
写真を撮っているあいだも楽しい時間を一緒に過ごせたらなっていう気持ちが強いんです。
ーー 関係性を大事にしながら撮影しているからこそ、自然と友達になっていくんですね。ちなみに、どういうタイミングで、「今を写真に収めたいな」って思うんでしょうか?
なんだろう。頭で考えるよりは、直感でやっている感じがします。あとから振り返ってみると、「この瞬間がめっちゃ好き!」って感じたときですかね。
ーー 感情の高ぶりとシャッターが連動しているような?
そうですね。直感で撮っている感じです。
< Artist Interview - 葵 1/4 につづく >
[ インタビュアー:片渕ゆりの取材後記 ]
写真を撮るより先に、自分と相手の関係がある。表情を「引き出す」のではなく、自然とあらわれた表情を写真におさめる。フォトグラファーと被写体という枠を飛び越えて、友達になる。
葵さん「だからこそ」撮れる写真の数々が生まれてきた理由に、深く納得したインタビュー初回でした。
Interviewer / Writer : 片渕ゆり(@yuriponzuu)
大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いから退職。2019年9月から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。
Editor :伊佐知美(@tomomi_isa)
「旅と写真と文章と」をこよなく愛す編集者、フォトグラファー。日本一周、世界二周、4年間の旅×仕事の日々を経て、2020年夏より日本で一番人口の少ない沖縄県読谷村にて、海と空とさとうきびに囲まれた暮らしを開始。