見出し画像

7月4日、独立記念日が人類存亡の日に ― 迫り来る巨大UFOの脅威 「インデペンデンス・デイ」(1996)


1996年に公開された「インデペンデンス・デイ」は、SF映画の金字塔として今なお多くの人々に愛され続けている作品です。本作の魅力と影響力について、詳しく考察していきましょう。

作品概要

「インデペンデンス・デイ」は、ローランド・エメリッヒ監督が手掛けたSFアクション大作です。1996年7月2日にアメリカで公開され、日本では同年12月7日に公開されました。製作費7,500万ドルに対し、全世界興行収入は8億1,740万ドルを記録する大ヒットとなりました。

物語の構造と展開

本作は、地球を侵略しようとする異星人と人類の3日間にわたる攻防を描いています。物語は7月2日から始まり、アメリカ独立記念日である7月4日で終わるという3幕構成になっています。

  1. 7月2日:異星人の襲来と大都市の破壊

  2. 7月3日:人類の反撃と作戦立案

  3. 7月4日:最終決戦と勝利

この構成により、緊迫感と時間的制約が効果的に表現されています。また、独立記念日という象徴的な日に設定することで、アメリカだけでなく人類全体の「独立」という主題を強調しています。

  • 監督:ローランド・エメリッヒ

  • 脚本:ディーン・デヴリン / ローランド・エメリッヒ

  • 製作:ディーン・デヴリン

  • 製作総指揮:ローランド・エメリッヒ / ウテ・エメリッヒ / ウィリアム・フェイ

  • 出演者:ウィル・スミス / ジェフ・ゴールドブラム / ビル・プルマン / ランディ・クエイド 他

  • 配給:20世紀フォックス

  • 公開: 1996年7月2日(アメリカ) / 1996年12月7日(日本)


あらすじ


月のそばを直径550キロもの巨大な隕石が通り過ぎる。そしてそれは地球に向かっていた。

そのUFOの信号がニューメキシコ州にあるSETI(地球外生命た探査)の研究所で最初にキャッチされ、すぐに国防総省に連絡が入る。

ホワイトハウスにいたトーマス・J・ホイットモア大統領は国務長官からその電話を受け、我が耳を疑った。

大統領は元戦闘機パイロットで湾岸戦争の英雄だったが、政治の世界では若さゆえでの実行力の弱さで悪戦苦闘し、支持率が40%にまで落ちこんでいた。

その大統領にさらなる情報が入ってくる。隕石から分離した40機ほどのUFOが25分後には大気圏を突入、そのUFOの直径は24キロだという。大統領は非情警戒態勢を敷くように軍に命令する。


同じ頃、ニューヨーク在住のデヴィッド・レヴィンソンが父との早朝チェスを終わらせてケーブルテレビ局に出勤する。

通信衛星が隕石に衝突していたため(この時点では消息不明とされている)全国のTVにノイズが現れていることで大混乱になっていた。

もともとマサチューセッツ工科大学を卒業したエンジニアだったデヴィッドは衛星通信のノイズを解析しようと試みるも、UFOが世界各地に出現、アメリカ本土にも3機現れたため、同僚のマーティ・ギルバートが地下への避難を指示し、放送局は機能を停止する。


その頃、ロサンゼルスの郊外で農薬散布業を営む軽飛行機パイロットで、酒浸りの生活をしていたラッセル・ケイスは農薬を撒く畑を間違えて、ダイナーで近所の男たちに冷やかされていた。

そんな彼だがかつてはベトナム戦争で戦闘機乗りだった経歴を持っていた。

妻を亡くしたが、彼には3人の子供がいた。しかし長男のミゲルと長女のアリシアは妻の連れ子であり、次男のトロイだけが実子だった。

トロイは病気持ちで薬を常時携帯しなければならなかった。ミゲルはそんなトロイを血の繋がった弟のようにかわいがっていた。

しかし酒を呑んで問題ばかり起こすラッセルを父親と認めていなかった。

彼は酒を呑むと、10年前に宇宙人に誘拐(アブダクション)された話を何度となく披露し、それを信じない周囲の人々からは変人扱いされていた。

そのことでバカにされたラッセルがダイナーを出ようとした時、大きな振動が起こり、外にUFOが現れる。

それを見たラッセルは「みんな殺されるぞ!」とわめき始め、警察に捕まり留置所に入れられてしまう。(その後すぐに釈放)


休暇中だったアメリカ海兵隊のスティーブン・ヒラー大尉は恋人のジャスミンと寝ていた。スティーブンは長らく宇宙飛行士を夢見てNASAに志願していたが、まだそれが叶わずにいた。

ジャスミンはストリッパー稼業をしながら、一人息子のディランを育てており、ディランもスティーブンになついていた。しかし自分とスティーブンとの仲が彼の昇進の妨げになることを恐れていた。

その日、振動で1度は目を覚ますも地震だろうと思い二度寝する。しばらくして起床し外を見ると、近所の人間たちが荷物をまとめて何処かへ行こうとしていた。気になったスティーブンが外に出ると、その眼前に巨大なUFOが浮かんでいた。


ノイズ(信号)の意味

デヴィッドはノイズがUFO同士が連絡している信号であり、なおかつそれは6時間後を何かの目標にしているカウントダウンであることを察知する。元妻で今はホワイトハウス首席報道官のコニーにそれを電話で伝えようとするも、話を聞いてもらえず切られてしまう。

その昔、政治運動に熱心だったコニーは家庭や夫婦関係を省みることがなくなり、ホイットモア大統領が大統領選立候補した際には、スタッフとして参加した。

その際、コニーがホイットモアに傾倒していたため、デヴィッドから浮気を疑われ2人は離婚したという経緯があった。

免許を持っていないデヴィッドは父親であるジュリアスに運転を頼み、ワシントンのホワイトハウスに向かうことにする。


UFOはワシントン、ニューヨーク、そしてロスに現れる。大統領はロスにいた妻のマリリンにとりあえず避難するように促す。

デヴィッドとジュリアスがホワイトハウスに着いた頃、政府はヘリに電光掲示板を付けて視覚的な交信を試みようとしていた。

大統領はコニーとのことで一度殴られていたデヴィッドに会いたくなかった。しかしカウントダウンの話を聞いたことで、そのわだかまりを一旦外に置く。カウントダウンは30分を切っていた。

交信を試みたヘリが攻撃を受けたことで、大統領はニューヨーク、ロス、ワシントンの住民に避難命令を出し、官僚やデヴィッドたちと一緒にホワイトハウスから退避する。

大統領たちがエアフォースワンに乗り込んだと同時にカウントダウンが0になり、3機のUFOは底面の中心部からレーザーを発射する。

その破壊力は凄まじく人や車はおろか、建物もすべて焼き尽くす威力を持っていた。そしてその炎はどんどん広がっていく。

渋滞にハマっていたデヴィッドの同僚マーティは炎に包まれて死亡。ジャスミンはディランを連れてトンネル内の配電室に間一髪で入り難を逃れる。


7月3日(接触)

夜が明け、各UFOのたった一度の攻撃でニューヨーク、ワシントン、ロスは全滅していた。

アメリカ海兵隊はロス上空にいるUFOに攻撃を加えることを決断し、スティーブンら隊員たちは戦闘機の乗り込み飛び立っていった。

十数機の戦闘機が一斉にUFOにミサイルうを発射するもバリアによって防がれ、その攻撃に答えるようにUFOから50機以上の戦闘機が出現する。

スティーブン以外の戦闘機はすべて破壊され、スティーブンも追いかけてきた戦闘機をなんとか撃墜するも緊急脱出を余儀なくされる。

スティーブンは撃墜した戦闘機から宇宙人を捕獲する。そこに通りかかったラッセルのトラックの荷台にそれを乗せることにする。

戦闘機群はエルトロ基地(スティーブンが配属されていた基地)を破壊、副大統領らが犠牲になる。元CIA長官だったアルバート国防長官はUFOに対する核攻撃を大統領に進言する。反対するデヴィッドとジュリアス。

ジュリアスがそれに乗じて政府によるロズウェル事件の隠蔽工作があったと言い出し、大統領は「ガセネタですよ」となだめる。しかしその時、国防長官がロズウェル事件は真実であることを告白する。


エリア51

エリア51に行く大統領とデヴィッドたち。1947年に起こったロズウェル事件で捕獲したUFOは、今回エイリアンが乗っていた戦闘機と同じものだった。その時に死んだエイリアンの死体も保存されていた。

そこにスティーブンが宇宙人をのせたラッセルとともにやってくる。

薬がなかったため次男のトロイが道中で意識不明になっていた。宇宙人で頭がいっぱいの医師に「俺の息子が死にそうなんだ!見てやってくれ!!」と胸ぐらをつかんで詰め寄った。それを見ていた長男ミゲルは少しラッセルのことを見直すのだった。


一方、無事だったジャスミンはトラックを発見、デュランや生存者とそれに乗ってスティーブンが配属されているエルトロ基地へ向かうことにする。(何かあったら基地に来るようにスティーブンから言われていたため)

途中でヘリの墜落現場に遭遇し、瀕死状態の大統領の妻を発見する。
(この時点でアトランタ、フィラデルフィア、シカゴが壊滅、アメリカ軍はわずか15%の戦力しか残っていなかった)

捕獲したエイリアンを手術中に医師たちは襲われる。エイリアンは医師の一人に触れて人間の言葉を発する。「解放しろ」と。

その際、大統領は和平を臨んだがエイリアンはそれに応じる考えがないことを知る。それにより大統領は核攻撃を決断する。しかし核攻撃は失敗し、UFOに損害どころか傷一つつかなかった。

その頃、スティーブンはエルトロ基地に向かいジャスミンたちと再会、大統領の妻マリリンも保護して帰ってくる。大統領とその娘もマリリンと再会できるも、怪我の状態がひどく、数時間後に死亡する。


7月4日(突破口)

デヴィッドはジュリアスとの会話の中で、ある打開案を思いつく。そして普段はバリアで守られている捕獲した戦闘機にコンピューターウイルスを仕掛けると、バリアが無効になった。

デヴィッドは捕獲した戦闘機で母船UFOに入り込み、そこにウイルスを仕掛ければ母船を倒せるのではないかと提案する。

スティーブとデヴィッドが戦闘機に乗ることになり、世界各地の残存兵力も攻撃に参加することを了承する。しかしアメリカ軍にはパイロットが不足していた。そこでラッセルが酔っ払いながらも参加を希望する。


基地内でスティーブはジャスミンと簡易的ではあるが結婚式をし、立会人はデヴィッドとコニーが務めた。すでにその2人には昔のわだかまりが溶け、お互いが大事な存在であることを再確認していた。

出撃するパイロットたちの前で演説する大統領は、力強く、威風堂々としていた。

そして演説を終えた大統領もネクタイを外して、攻撃部隊に参加する。


決戦

デヴィッドとスティーブンが乗った戦闘機は大気圏外で各都市のUFOに指令を送っていた母船に入ることに成功し、ウイルスを放出する。

それを確認した司令部は大統領以下、各パイロットたちに一斉攻撃を指令。バリアが消えUFOにミサイルが次々を命中する。しかしミサイルの弾数は少なく、すぐに底をついてしまう。

UFOは各都市を一発で壊滅させたビームを撃つために底面の発射口を開き始める。唯一、敵の戦闘機から逃げ回っていたラッセルが一発だけ持っていたミサイルを発射口に撃ち込もうとするが、不具合で発射できない。

ラッセルはコックピットに飾った子供たちの写真を眺めながら、「頼みがある、子供たちに愛していると伝えてくれ」と司令部に連絡し、「ようお前ら!帰ってきたぜ〜!」と笑いながら玉砕覚悟で発射口に突っ込んでいく。

UFOはそれによって内部爆発を起こし、完全に機能を停止する。

大喜びの司令部内で1人落ち込む長男のミゲル。酔っ払いだが仕方なく採用を許した空軍少佐は、「お父さんを誇りに思え」という言葉をミゲルに送った。


ウイルス放出に成功したデヴィッドとスティーブンだったが、母船から脱出できないでいた。最後の手段でミサイル型の時限爆弾を発射し、それによって脱出口が開く。2人の乗った戦闘機はそこからなんとか脱出。母船は木っ端微塵になりエイリアンは全滅、各地のUFOもビーム発射口に攻撃を加えられ沈黙する。


考察

革新的な視覚効果

本作の最大の魅力の一つは、当時としては革新的な視覚効果でした。ミニチュア・ワークなどの伝統的な手法と最新のデジタル技術を組み合わせたSFXは、観客に強烈な印象を与えました。

特に、直径24キロメートルに及ぶ超巨大円盤が世界中の大都市の上空に現れ、一斉に攻撃を仕掛けるシーンは圧巻でした。ホワイトハウスやロサンゼルスが破壊される映像は、当時のテレビCMでも繰り返し放送され、多くの人々の記憶に焼き付いています。


ストーリーの魅力

本作のストーリーは、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』からインスピレーションを得ていますが、いくつかの重要な違いがあります。『宇宙戦争』では宇宙人が自然の細菌によって敗北しますが、「インデペンデンス・デイ」では人類の意図的なコンピューター・ウイルス攻撃によって宇宙人が敗北します。この違いは、人類の知恵と団結力を強調する本作のテーマに合致しています。
ストーリーは単純明快ですが、それゆえに観客を引き込む力があります。突如として現れた宇宙人に対し、人類が一丸となって立ち向かうという展開は、観客に強烈なカタルシスをもたらしました。


キャラクターの魅力

本作の魅力の一つは、個性豊かなキャラクターたちです。特に、ウィル・スミス演じる戦闘機パイロットのスティーブン・ヒラー大尉は、本作の出世作となりました。アフリカ系俳優がメジャー級のアクション映画で主演を務めた先駆的な作品としても評価されています。

また、ビル・プルマン演じるトーマス・J・ホイットモア大統領のキャラクターも印象的です。大統領自らが戦闘機に乗り込んで戦うという設定は、アメリカ映画らしいヒロイズムを体現しています。


テーマと社会的影響

本作のテーマの一つは「人類の団結」です。国籍や人種を超えて、地球人全体が一つになって外敵と戦うという設定は、当時の観客に強い共感を呼びました。

また、「落ちこぼれが世界を救う」というモチーフも、多くの観客の心を掴みました。主人公たちは必ずしも完璧な人物ではありませんが、危機に直面して成長し、世界を救う英雄となります。この展開は、観客に希望と勇気を与えるものでした。


批評と評価

公開当時、本作はアメリカ礼賛的な内容に対して批判的な意見もありました。しかし、時を経るにつれて評価は高まり、現在では90年代を代表するSF映画の一つとして認識されています。本作の成功は、その後のディザスター映画やSF映画に大きな影響を与えました。特に、世界規模の危機を描く大作映画の先駆けとなり、同様のテーマを扱う作品が多く製作されるきっかけとなりました。


若い頃に見た時は、お涙ちょうだい的な展開が気に入らず、いい印象を持っていませんでした。
今回20年ぶりに見ましたが、「アルマゲドン」ほど感動させず、ユーモアもあり、なおかつ20年前の特撮も素晴らしかったことなどで、結構楽しめました。

4つの家族のお話を取り入れながら、それぞれが同じ目標につき進んでいくお話は「これぞ、エンターテイメント!」と言わんばかりの超大作に仕上がっています。

ひとつだけわからないのが、物語の内容ではなくて翻訳されたセリフです。ラッセルがUFOに突っ込むシーンで「I'm back」と叫んで突っ込みます。しかし字幕では「お返しだ!」となっています。これはなぜなのか?

わかりやすく考えれば、今まで散々攻撃して負けっぱなしの人類を代表し、反撃を加えてやるぞ・・・という意味なのでしょう。しかし過去にUFOに誘拐されていたと吹聴していたラッセルの話が本当であれば、嫌味を込めて「帰ってきた」と言った・・・というのが自然です。こっちのニュアンスが好きなので、字幕とは違った解釈で「ようお前ら!帰ってきたぜ〜!」と書かせてもらいました。


続編との比較

2016年に公開された続編「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」は、今作から20年後の世界を描いています。しかし、多くの評論家や観客は、続編が前作の魅力を再現できなかったと指摘しています。

続編では特撮技術は向上し、宇宙船のスケールはさらに巨大化しましたが、ストーリーの面白さや人間ドラマの深さでは前作に及ばないという評価が多いようです。この比較からも、オリジナル作品(本作)の魅力がいかに特別なものであったかがうかがえます。

「インデペンデンス・デイ」が公開されてから四半世紀以上が経過しましたが、本作の魅力は色あせていません。むしろ、現代の分断された社会において、「人類の団結」というテーマはより重要性を増しているとも言えるでしょう。

また、本作は90年代のアメリカ映画を代表する作品として、映画史的にも重要な位置を占めています。デジタル技術とアナログ技術を融合させた視覚効果や、古典的なストーリーを現代的に再解釈する手法など、本作の革新性は今なお評価されています。

技術的には古びた部分もありますが、その本質的な魅力は今も色褪せていません。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?