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僕がインクルーシブデザインデザインスタジオを設立したきっかけ
CULUMU主催のイベント第1弾は「企業課題と社会課題の解決を共に目指すインクルーシブデザインとは」という題目で開催されました。3名の登壇者からそれぞれが体験したインクルーシブデザインの事例を紹介いただきました。
今回はイベントレポート第1部として、インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」の立ち上げを務めたCDOである川合の登壇内容をレポートします。
デザインスタジオの特徴
本イベントは、イベントの主催でもあるインクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」の紹介から始まりました。
CULUMUは「企業課題と社会課題の解決を共に目指し、多様な人に優しいデザインを」をコンセプトに活動しています。インクルーシブデザインの考え方によって人々の多様性を理解した視点を持ちながら、デザイン思考によるユーザーを巻き込むアプローチを実行する事で、+αのアイデア・価値創造を実現するデザインスタジオです。インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」の詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
→「はじめましてCULUMUです」
次に、川合自身がインクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」を設立するきっかけとなったプロジェクトを2つ紹介しました。
インクルーシブデザインスタジオのきっかけ①
最初のプロジェクトは、外資系保険会社とのデザインリサーチのプロジェクトです。
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(川合):「保険会社のサービス提供において、多様な病状をお持ちの患者様に対する持続可能な価値提供が必要とされています。本プロジェクトは、どのようにサービスを変容させていけば、多様なユーザー様の要求に応えることが可能なのか、ユーザーリサーチに基づき考察するものでした。
サービス提供者である保険会社からの視点では、病気を患った際に、出来る限り早急に金銭の給付を行うことが保険の最重要な価値であるという仮説が存在していました。しかしながら、実際にユーザーリサーチをしていくなかで、患者視点では、病気を患った際の不安は、金銭面のみならず、家族や自分、仕事を休まなければいけないことなど未来に対する多様な心配が存在することが分かりました。
プロジェクトを進める人員は一般的に健常者が大多数を占めるためか、『保険』の既存概念に捉われた価値提供を行い、病気を患った方々の視点が抜け落ちてしまっていることが明らかになりました。そこで、ユーザーリサーチを行い、多様な人々の視点に立つことで、本来のサービスとしての在り方を見直すきっかけとなるプロジェクトでした」
インクルーシブデザインスタジオのきっかけ②
次に紹介したプロジェクトは、障害者雇用支援を行なっているコンビニエンスストアとのプロジェクトです。
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(川合):「軽度な知的障害の方々が、コンビニエンスストアでの業務でタブレットやアプリケーションを活用し、品出しや商品管理の業務を遂行できるように支援するプロジェクトでした。プロジェクトは、軽度知的障害の方が健常者の方とトラブルに発展してしまう事や、業務を遂行する際に通常よりも多くの時間を有してしまう事などを問題視し、業務遂行を容易にするために、ユーザビリティやアクセシビリティを意識したプロダクト開発を目的としてスタートしました。
しかし、実際に開発を進めると、上記のようなアクセシビリティを意識する事も重要ですが、何よりも、知的障害者の方がデジタルプロダクトを通してモチベーションが高まった事や、健常者の方々よりも集中力があり業務効率が上がり、業務を楽しむことが可能になった事、結果的に障害者の雇用の幅が広がった事が効果として感じました」
最後に
川合自身は今回紹介した2つのプロジェクトなどをふまえて、「多様な方々の視点に立って理解することからデザインを始める必要性と価値に気付き、その考え方に基づくデザインはどの様なアプローチで体系化していくことは可能か?という疑問や期待がインクルーシブデザインスタジオCULUMUの設立へと繋がった」と言います。
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私たち「CULUMU」はまだスタートしたばかりですが、「多様性を理解した視点を持ち、企業課題と社会課題の解決を共に目指す」というひとつの旗を立てたCULUMUの今後の活動にぜひ注目していただければと思います。
「企業課題と社会課題の解決を共に目指すインクルーシブデザインとは」の第1部イベントレポートは以上になります。
次回は、第2部で登壇いただいた株式会社LIFULL FRIENDLY DOOR 事業責任者龔(きょう)さんのイベントレポートになります。どうぞお楽しみに。
登壇者プロフィール:
川合 俊輔(かわい しゅんすけ):株式会社STYZ UX Designer / CDO
グローバル10拠点で展開するデザインファームTigerspike株式会社にてUXデザイナーとして従事。その後、スタートアップ数社でデザイン組織の立ち上げやプロダクトマネージメントを行う。
株式会社STYZに参画し、インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」を設立。
2018年からは芝浦工業大学でUXデザイン演習の非常勤講師を務め、人間工学をベースにユーザー中心のプロセス、ユーザビリティ評価手法、UXデザインの研究に従事。その他に、UX関連書籍の執筆・翻訳を行う。
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インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」のご紹介
私たち「CULUMU」では、多様性から考えるデザインプロセスであるインクルーシブデザインと、デザイン思考によるユーザーを巻き込むアプローチの両輪もって取り組むことで、+αのアイデア創出と、新しい価値創造を実現することが可能になると考えています。
私たち「CULUMU」がデザインプロセスにおいて大切にしていることは、自分とは異なるレンズの存在を把握することです。ユーザーの多様性を理解し、私たちの価値観を見直し、ユーザーの持つ多様な価値観を理解し、課題の抽出や新しい価値の創造を行います。その後、下記の様な手順を経て、デザイン思考やHCD(Human Centered Design)の手法に基づきアイディエーションを行い、サービス・プロダクトを開発していきます。
私たち「CULUMU」の行うデザインアプローチの具体的な内容はこちらの記事をご覧ください。
多様性に配慮したCULUMUのデザインアプローチとは?
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