見出し画像

映画「ロボット・ドリームズ」を見てくれ!

映画『ロボットドリームズ』を観て、なんとかこの気持ちを形にしたい!と殴り書きました。間違いなく今年見てよかった作品の1つです。結末にも少し触れています。


犬は一人で生活しているが、その暮らしは決して孤独ではなく、しっかりと日々を楽しんでいる様子が伝わってくる。毎日同じ時間に起き、部屋はきれいに整頓され、ハロウィンには仮装をして子供たちにお菓子を準備し、冬にはクリスマスツリーを飾る。台詞がないからこそ、画面だけでその犬の生活や心情を表現しようとする映画の気概が感じられた。テレビを消した際に自分の顔が映ることや、レンジの蓋にチーズがついてしまう些細な出来事が細かく描写され、犬が「生活」していることを強く感じさせられた。こうした一瞬一瞬が、犬が確かに生きている証だと見せつけてくる。

犬は日々の生活を楽しもうと努力しているが、やはり寂しさは避けられない。そんな中でロボットを購入し、犬の生活は一変する。誰かと楽しみを共有することがこんなにも幸せだとは、観ているこちらも胸がいっぱいになった。公園で「September」が流れた瞬間、涙が止まらなかった。「幸せってこれでよかったんだ!」と思わず自分に問いかけた。犬とロボットが共有した幸せな時間が、もっともっと続けばいいのにと強く思った。

しかし、別れが訪れ、ロボットは壊れて氷漬けにされる。それでも犬はまた、普通に遊んでいる。その瞬間、私は少し驚いた。大切な存在がいなくなった後でも時間は流れていく、そして生活は続く。これは何も特別なことではない、失ったからといって楽しいことをしてはいけないわけではない。人生は、どんな状況でも前に進んでいかなければならない、という普遍的な現実が描かれている。それは当たり前のことだが、この映画はそのことを優しく、しかし力強く教えてくれる。

映画を通して、「他人」を意識させられる場面が多かった。舞台がニューヨークという多様な人々が住む都市であることも、このテーマを際立たせている。街にはそれぞれの人生があり、誰もが日々の中で自分の物語を紡いでいる。些細なきっかけで出会い、また別れて、雑踏の中で二度と会えなくなる感じもする。この映画におけるニューヨークは、まさに「出会いと別れ」の象徴のような場所だった。犬とロボットだけの世界ではなく、うさぎにも事情があり、ロボットの足を折ってしまう場面がある。犬もハロウィンの夜にやってきた子供を理不尽に追い返すが、子供からすればお菓子をもらいに来ただけで、彼らの間に何の悪意もない。しかし、犬の目線では、それもまた仕方ないことなのだ。こうした描写は、他人の生活を意識する大切さを教えてくれる。自分が感じる理不尽さや苦しみが、実は他人の事情に根差していることを忘れてはならない。

物語の中で、ロボットが犬を追いかけたいと思う気持ちが描かれるが、それを抑えるシーンが印象的だった。ロボットは、今の犬の幸せ、今犬の隣にいる黄色いロボットの幸せ、また自分と一緒にいてくれるラスカルの幸せも壊れることを恐れて、追いかけるのをやめたのだろう。他人の幸せを尊重するその優しさに、深く感動した。
新しくなったロボットがカセットを分けて保存できるシーンも印象深かった。最後に画面が二分割になり、犬とロボットが「September」を踊る場面は、素晴らしい演出だと感じた。たとえ離れ離れになっても、二人で過ごした時間が無駄にならないことを示している。思い出は宝箱のように心にしまっておけばいいのだというメッセージが胸に響いた。

また、この映画でロボットと友達になることが選ばれた意味がとても大きいと感じた。ロボットに足を折られたり、体を壊されたりすることに悪意はない。それは単に、ロボットが物として扱われる世界の中で必要な行為だったからだ。また、犬とロボットの関係も、努力して仲良くなったわけではなく、最初から友好的に接してくれる。物として購入した友達というスタートだが、それは決して否定的に描かれていない。映画を観ている私たちも、手軽に楽しめる娯楽を通じて幸福を感じることができるし、それは悪いことではないと、この映画は伝えている。それもまた、良いことだと感じさせてくれる。

さらに、この映画には様々な映画のパロディが散りばめられており、映画好きにはたまらない要素が満載だった。『オズの魔法使い』を観るシーンや『サイコ』のシャワーシーンなど、監督が映画への愛を込めて作ったことが伝わってきて、それもまたほっこりとした気持ちにさせてくれた。映画館を出た後、「ああ、『花束みたいな恋をした』をもっと普遍的にしたような映画だ」と思った。さらに、他者の介入する「ラ・ラ・ランド」だとも思った。しかし、その後すぐに、そんな自分が嫌になった。何でも類型化してしまう自分に反省したのだ。犬とロボットの関係は、他のどんな映画とも比べることができない、ただ一つのものなのだ。目の前にいるその人、今一緒にいるその人を大切にしなければならない、と強く感じさせられた。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集