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なぜ日本のデジタルサービスはこうも使いにくいのか
「マイナンバーカードの手続はオンラインで出来ますよ!」
おお、それは朗報だ!などと喜んだのが運の尽き。満面の笑顔に騙されて、すっかり油断していた。
「アプリをダウンロードして、PIN1を入力してください」
はい、出ました。もう最初からつまずく。
PIN1とは何だ?そもそもPIN1ということは、PIN2やPIN3もあるのか?
解説書には「交付時に設定した暗証番号です」とあるが、
設定した記憶など一切ない。
いや、ほんとに、まったくない。
適当に入力してみるが、どうにもならない。
すると無情にもこう表示された。
「設定したPIN1を5回誤ったためロックがかかりました」
なるほど。で、どうするの?
「解除は区役所で手続きしてください」
つまり、オンラインで手続きできると言われた案件を、結局はリアル区役所で処理することになったわけだ。
この時点で、一つの真実が露わになる。
「オンライン手続きというのは、手続きの種類の一つであって、決して“便利”という意味ではない」
こんな経験、私だけじゃないだろう。
日本のデジタルサービスに足を踏み入れた者は、まるで壮大なRPGの冒険者だ。解読不能な説明、無意味なエラーメッセージ、出口なきループ、進めば進むほど深みにハマる迷宮。そして最後に待っているのは「最寄りの窓口へお越しください」という、まさかのオフラインエンディング。
もちろんこれはマイナンバーだけの話ではない。飛行機のオンライン予約で、何度も何度も最初からやり直しになるあの絶望。
検索窓に「スニーカー」と打ち込んだら、「スニーカー」「スニーカー特集」「スニーカー在庫一掃」「スニーカー10倍ポイント還元」と広告の洪水に襲われるECサイト。数え上げたらキリがない。
なぜ、日本のデジタルサービスはここまで使いにくいのか?
日本のデジタルサービスが使いにくい理由
ユーザー視点の欠如 「ユーザーにとってどうか?」より、「運営側にとって都合がいいか?」が優先される。ユーザーの利便性?そんなものは後回しである。
組織文化の問題 シンプルなものを作るはずが、縦割り組織の意向をすべて詰め込んだ結果、もれなく複雑怪奇な代物になる。
フィードバック軽視 海外企業では「ユーザーの声を拾ってサービス改善」が常識だが、日本では「不具合?それ仕様です」がまかり通る。
海外の成功事例:SpotifyとMonzoの戦略
海外のデジタルサービスは、日本とはまったく異なるアプローチを取っている。特にSpotifyとMonzoは、ユーザー体験を最優先にし、顧客との関係を深めることで成功している。
Spotify:個人に寄り添うパーソナライズ戦略
Spotifyは単なる音楽ストリーミングサービスではない。「あなたの好みを理解する音楽プラットフォーム」である。AIとデータ分析を駆使し、ユーザーの好みに合った曲を自動的に選び、プレイリストを作成する。
例えば、「Discover Weekly」は、ユーザーの過去の再生履歴を分析し、毎週新しいおすすめの曲を提供する。ユーザーはこう思う。
「あっ、自分のことを理解してくれるんだ!」
この感動が、Spotifyのブランド価値を押し上げている。
Monzo:顧客と共に成長する銀行
イギリスのデジタルバンクMonzoは、従来の銀行とはまったく異なるアプローチを採用している。最大の特徴は、**「顧客と共にサービスを作る」**こと。
新機能を開発する際には、オンラインフォーラムでユーザーの意見を募り、実際に反映させる。支出の自動分類機能や即時通知機能など、ユーザーの利便性を最優先した設計が評価されている。
日本企業の成功事例と課題
もちろん、日本にもデジタル変革に成功している企業はある。例えば、ユニクロとメルカリ。
ユニクロ:データ活用による最適化
購買データを分析し、商品開発や在庫管理を最適化。ただし、オンラインストアのUXにはまだ課題が残る。
メルカリ:シンプルなユーザー体験
簡単な出品プロセス、匿名配送、即時決済など、ユーザー目線の設計で成功を収めた。しかし、不正取引や偽物の問題は今後の課題。
デジタル変革の障壁と突破口
日本企業のデジタル変革を阻む主な要因
レガシーシステム:古いIT基盤が足かせ。
組織の抵抗:変革に対する社内の抵抗が強い。
人材不足:専門人材が不足し、外部依存が高まる。
これを乗り越えるために必要なこと
突破口
デジタルを経営の中心に据える。
小さな成功を積み重ねる。
ユーザー視点を最優先する。
短期間での劇的な変革は難しい。しかし、小さな一歩を積み重ねることで、未来は変わる。
まとめ:変化を恐れず、デジタル時代へ
日本のデジタルサービスは、まだまだ課題だらけ。しかし、変化を恐れず挑戦する企業は確実に成長している。
完璧を求めるよりも、まずは実行し、改善を重ねることが成功への鍵。
テクノロジーが進化する中、今こそ日本企業も「ユーザー目線」を徹底し、デジタルの力を最大限に活かす時だ。
いや、ほんとに、活かしてほしい!🙇
What to watch
映画「マネーボール」
データ分析を駆使し、メジャーリーグの常識を覆した実話を描いた映画。ブラッド・ピット演じるビリー・ビーンが、「伝統と勘」に頼る旧来の野球界を相手に、合理的なデータ戦略で挑む姿は、日本のデジタル改革にも通じるものがある。