君は OFFICE CUE を知っているか ~SLAM DUNK はどこへいった~
「いったいスラムダンクはどこへいったんだ?」
ここ1年ほど、家族が集まると必ずその話になっていた。
仕事を辞めて、人生初のロングバケーションに入ってからしばらくは、ぼーっと日々を過ごしていた。
これではいかんと一念発起。ずっとやりたかった断捨離を敢行したのは2021年夏。
まず、物置同然になっていたロフトに手を付けた。
子どもたちの残していったものは勝手に捨てられないから置いといて、使っていない布団に5人分のランドセル、剣道の胴着、防具、ささくれた竹刀ほか、なんでとっておいたんだっていうもの。
これは捨てられないなと思うものはほんの少しで、ほとんどが役割を終えたものだった。
剣道関係のものは町内の少年団に寄贈できた。また少年少女剣士に使ってもらえるのでほっとした。
ものがなくなって広々としたロフトがまた物置にならないように、ここをマンガ部屋にしようと決めた。
本棚をDIYして、子どもたちが残していったマンガ本を並べた。
どうよ なまらいんでないかい とファミリーラインに写真をのせたら
いいじゃんの後に
「あれ?スラムダンクは?」 と 長女。
子どもたちはリアルタイム世代ではないけれど、みんなスラムダンクが大好きだ。
再放送を何度も観ていた。
特に長女は高校生の頃、バイト代で完全版を買いそろえるほど。
その思いのこもった完全版がないのだ。
きっと他の部屋を断捨離したら出てくるよと、たかをくくっていたが、
その後どこを片付けてもスラムダンクは見つからなかった。
人の記憶というのは実に曖昧で断片的なものだ。
正月に子どもたちが帰省してきた時にも、スラムダンクの行方を話し合った。
「姉ちゃんが箱にいれてたっしょ」
「いやタンスの一番下に入れてたわ」
「引っ越しの時持っていったんでないの?」
「三男の部屋の本棚にあったべさ」
「かあちゃんがブックオフにもっていったんだわきっと」
「泥棒でない?」
「1番金目の物が、スラムダンク?」
爆笑
そして、私がもう一回探すということでまた落ち着くのだ。
「THE FIRST SLAM DUNK」の公開日は2022年12月3日。
その前日、私は札幌にいた。
映画を見るためではない。
3年ぶりのリアル開催の
『ThankCUE+FAN MEETING 2022』に参加するためだ。
初の、しかもボッチ参戦。
チケットが当選した日から,夢見心地で浮かれまくっていた。
しっかり事前勉強して,準備万端でシャトルバスに乗り込んだ。
隣に座った方もぼっちだったので、一緒に行動していただいた。
その方は何回かファンミに参加していらしたので,ほんとに心強かった。
ガトーキングダムは夢の国だった。
今でも、お見送りの時にしっかり目を合わせて,
手を振ってくれたシゲちゃんを思い出す。
その度に、半開きになった口を身もだえながら両手で抑え、大きく深呼吸して天を仰ぐという、異様な動きをするおばさんになってしまう。
ファンミの次の日、ある方と待ち合わせをしていた。
その方は、オフィスキュー期待の若手ボーイズユニット
NORD(ノール)のライブで知り合った子顔(森崎博之推し)さん。
すごく気が合って、また必ず会いましょうという約束をしていた。
娘のお店でたっぷり3時間、推しのこと、昨日のファンミのこと、
自分のことも、何も飾らず隠さずいっぱい話した。
何より私の話すことに「へぇ、そなんだ」ではなく、
「そうそう、そうなのよ」と言ってもらえるのが、本当にうれしかった。
後で娘に
「ほんとに会ったの2回目なの?」と聞かれるぐらい話が弾んで、
笑って笑って、最後には声が枯れた。
また絶対会おうと約束をして彼女と別れた後、娘とサッポロファクトリーに向かった。
もちろん「THE FIRST SLAM DUNK」を観るためだ。
公開日のレイトショー。ほぼ満席の映画館。
別々に予約したので、娘とは離れた席になっていた。
推し友とめいっぱいおしゃべりして、気づくと完全なファンミロスに陥っていた私は少し安心した。もしも気が抜けて途中でうとうとしちゃう私を、スラムダンク崇拝者の娘が見たら、絶対怒るなってちょっと思ってたから。
しかし、そんなことは全くの杞憂に終わる。
冒頭 え?このエピソードはなに?からずっとスクリーンに釘付け。
そのまま息継ぐ間もなくエンディングまで突っ走った。
エンドロール観ながら、うるうるしている自分にちょっと驚いた。
館内が明るくなってから、娘の席に行った。
足早に客が出ていく中で、彼女は立ち上がれずスクリーンを見つめたまま、号泣していた。
そんなこんなの昨年の年末。
重い腰をあげて大掃除を始めた。
元子ども部屋 現帰省の時のベッドルームはめったに使わない。
いつもさらっと掃除機をかけるくらいなので、久々に念入りに掃除しようと、ベッド下の子どもたちが置いて行った部活の思い出のジャージやらユニフォームやらが詰め込まれている収納ボックスを引っ張り出した。
その時、奥に見慣れない段ボールが隠れているのに気が付いた。
いや、正確に言うと、この箱の模様にうっすら見覚えがある。
あぁれぇぇ
これってもしかして
そろっと開けてみたらば
うぇい やっぱりだよ
そうかそうか ここは盲点だったなあ
ここだったかぁ
記憶というものは、何かのきっかけで一気に蘇ってくるもので、
この箱にスラムダンクを詰めたのは、確かに
ワタクシでした。
はい。
推し友と出会えたNORDのライブについては
またいつか
したっけ