藩士ではない男
水曜どうでしょう2023新作ライブビューイングという世界的にも希なイベントから帰ってきた母と、藩士ではない男の話をしよう。
ただいま~~
と陽気に返ってきた母の目を見て、男は悟った。
「こいつ 何もかもしゃべるつもりだ。」
男は「自分は藩士ではない」と言っている。
水曜どうでしょうに一切年貢を納めてはいないし、母の影響でDVDを否応なしに見させられて、大泉洋が言った言葉を脳裏に焼き付けられてしまった、ただのどうでしょうが好きなだけの男だと。
母が今日は遅くなると言っていたので、彼はコンビニの稲荷ずしで夕食を済ませていた。
思ってたよりも早く帰宅した母は、半額シールが貼られている刺身と惣菜をテーブルに並べ、いつもよりちょっとお高いであろう白ワインを開けて、上機嫌で一緒に食べようと言い出した。
食べたりなかった男が素直にテーブルに着くとすぐに
「いやあ、笑い疲れたわー」と喋り始める母。
ネタバレする気満々じゃねーか!
誘いに乗ってしまった自分を悔いたがもう遅い。
母の喋りは止まらない。
しかも彼女の話は、絶妙にネタバレをかわしている。
男はちょっとイラついた。
「ホテルでさ あ、これは言っちゃいけないわ。」
「西表は西表だったんだけどさぁ。もうこれ以上は言えない。」
「すべり台が最高なのさ。笑ったわー。」
「エンディングがもう・・・言わない!」
止まらないネタバレの寸止めに苛立ちは頂点に達し、男は言った。
「もういい。もう何も言うな!」
そう言い残して二階に上がる階段の途中で、我慢できず男は振り返り、言った。
「で、ロビンソンは生きてたの?」
母は、男を見上げ
「生きてたよ。」
と、にやりと笑った。
藩士ではない男は
「8月30日か・・・」
と呟いて部屋に入っていった。
おまけ
洋ちゃん単独リサイタルするってよ。
武道館満員にするってよ。
たのしみっ。
したっけ
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