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クーピーペンシル

学生時代、書店でバイトしていた頃。
毎日店に来る小学5年のMくんという男の子がいた。
彼はいつもひとりでマンガを立ち読みしていて、その姿を少し気の毒に思った僕は、彼とコミュニケーションを取り始めた。

Mくんの両親は共働きで、家にひとりでいるのがつまらないこと。
人見知りで友達が少ないこと。
などなど、色んなことを教えてくれた。
彼は当時大流行していたマンガ「おぼっちゃまくん」がお気に入りで、よくモノマネもしてくれた。

そんなある日、彼は初めてママと一緒に店にやって来た。
ママは僕に「いつもMが立ち読みしてすみません。あなたのことはMからよく聞いています。親しくしてくれてありがとう」
そう言ってお菓子をくれた。

いえいえ、とんでもないです〜なんて言っているとき、ママと一緒で気が大きくなったMくんが突然、ともだちんこ〜と言って僕の局部を握ってきた!
僕もともだちんこ〜、とMくんの局部を握り返す。

が、握り返したMくんのそれは、クーピーペンシルのようにカチカチに固くなっていた…。

ハッとして思わず手を離すと、Mくんは、はにかんだ表情を浮かべていた。

なんでやねん!がアタマにぐるぐる渦巻く僕。
そんな僕をよそに、Mくんはママと帰っていった。

ほどなくそのバイトは辞めてしまったので、Mくんのその後はわからないが、彼のクーピーペンシルや、はにかんだ表情、そして、うっすらと裏切られたような気持ちを今でも時々思い出す。

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