もう一つの味方〜中華街で見つけた料理道具
前回、料理の味を際立たせる上での強い味方、という話をさせていただいているうちに、
もう一つの味方、
料理時に特に賢い働きをする道具たちについて、
あれやこれやと考えるようになりました。
これまでの経験から、自分が使いやすいと思うものを仕事上でご提案することも時折ありますが、
改めて、家庭の料理を日々頑張っていらっしゃる方にとってどんなものをお勧めすれば、より楽に作業が進んだり、料理そのものが楽しくなるのだろうか、という目で考え直してみることにしました。
たとえば、いくら自分が厚手の鉄鍋を愛用していて、美味しくできますよ、と言ったとしても、
錆びやすさに重さ、毎回のメンテナンスの必要を無視してお勧めするのは意味のないことです。
また、簡単に手入れができるなど、作業が楽であることはたいせつでしょう。
けれどそればかりに気を取られて適当に買ってしまうことで、結果的に好きになれずにしまい込んだり、使わないことで後に処分してしまうことになりかねません。
そこが悩みどころでもありますが、日頃の愛用品の中から吟味していくつかご紹介してみたいと思います。
◦照宝の大きめ中華せいろ
照宝は、横浜中華街、大通りの真ん中辺りにある中華料理道具の専門店です。
中華鍋とせいろの品揃えは頼もしい限り。
せいろは、杉、竹、桧、白木と材質も選べます。
桧は耐久性が良いのですが、ほんのり桧の香りがするのが気になり、私は、無臭で丈夫な作りの竹のものを愛用しています。
料理で使った後はきれいに洗剤で洗いたくなるものですが、せいろは水で洗わないで乾かすのが望ましいそうです。
使う際に、中にクッキングシートなどの紙や葉物野菜、器などを仕込んで蒸し、しっかり乾かすことで長持ちしますよ。
かわいらしい一人分のせいろと鍋のセットもよく売れているようですね。単身の方や、忙しい朝ごはんの時などは重宝することもありますが、家族がいれば便利さは比べ物にならないので、スペースが許すなら、できれば大きいものを使ってみてください。
固くなったパン、レンジに頼らない温めも蒸気ですぐに仕上がります。もち米と好みの具、味付けしたスープをフライパンで加熱し、汁けが飛んだら耐熱容器に移してせいろで蒸せば、アレンジ自在なおこわも出来上がります。
中華の調理器具は、餃子のあんのヘラや中華包丁など、中華に限らず用途がとても広いものが意外と見つかります。
ネットでお探しになられる他にも、中華街にお越しの際など、お散歩しながら使いやすい自分の相棒を探してみてはいかがでしょう。
◦DANSKミルクパン
別名バターウオーマー。直径13㎝の深めの小鍋です。
前述の中華せいろと違い、こちらは小さいことが大切な魅力です。
小さいだけでなく深いことで、湯せんもしやすく、ゆで卵も、ちょっとだけゆで野菜も、気軽にできます。お弁当で忙しい朝にどれだけ助けられたことでしょうか。
使いやすいだけでなく、手にしっかり馴染む形の木の取っ手に、外側は赤や空色、黄色に白と、手に取るのが嬉しくなるような色の豊富なバリエーションも、お気に入りポイントの一つです。
ほうろうなので酸にも強く、リンゴやかんきつ類を煮るのも得意です。火の回りが早く、光熱費も節約できるので、単身の方にもぴったりですね。
◦TURKフライパン・グリルパン
数々の鉄のフライパンを使ってきましたが、今のこのフライパンを超えるものはもう見つからないのでは、と思うほどに頼りになります。
買ってすぐに空焼きをし、くず野菜をいためて捨て、油をひくだけで、こびりつくことはほとんどありません。
また、料理の後の手入れはたわしでごしごしと洗ってから火にかけて水分を飛ばすだけ。ほかの鉄フライパンよりずっと楽なのです。
このフライパンの良さは何といってもおいしそうな焼き色と味わいの良さです。卵や野菜をただ焼くだけでもこんなに違うのか、というほどに、外側のクリスピーな焼き具合に対して内側はジューシーに。肉はさらに違いが大きいと感じます。また、お好み焼きや、厚揚げ、パンケーキ、トーストなどにも。
驚くほどにおいしく焼きあがります。
フライパンは浅め。ものによってはこぼれる場合もあるため、炒め合わせる料理が多い方は両手のついた少し深めのグリルパンもおすすめです。オーブンに入るサイズにすると、グラタンやトルティーヤ(オープンオムレツ)、タルトタタンなどのケーキもひと鍋で仕上がり、そのまま食卓へ出すこともできる美しい形をしています。
◦干物かご
海の近くに住んでいて、釣魚を料理する機会が増えたのもあり、3段の網でできた干物かごを釣具店で調達しました。
当初は魚の干物を中心に干していたのですが、野菜やきのこ、薄切りにしたフルーツ、味付けた薄切り肉などを干したくなり、魚と分けて野菜フルーツ用を買い足してみると、これが実に楽しくて便利。
特に寒い時は乾燥しているので、とてもうまく干しあがります。
◦オリーブなどの木のボード
木のナチュラルな表情をそのまま生かしたものを大中小、いろいろ揃えています。パンやチーズを切るだけでなく、大きな肉料理や前菜を盛り合わせるなど皿として、ココットやスキレットを食卓に置く鍋敷きとしても。
このように様々な用途があり、食卓にしつらえるだけでどことなくこなれた雰囲気が漂います。オリーブ油を塗りながら、経年変化を愉しめるのも嬉しい道具です。
◦脱水シート
ピチットという商品名で、業務用の大容量のものもありますが、家庭用でしたら釣具店で手に入ります。肉も干物も冷凍まぐろも、白身魚の昆布〆なども、挟むだけで余分な汁気がシート内部に吸い込まれて、程よく熟成されます。
食材が傷みやすい真夏でも、冷蔵庫で干物ができるのに気付いてからは、うれしくなって、ナムプラーや山椒、みりん干しなど色々な下味をして干物を作るようになりました。
ひらめの刺身に塩をし、濡れぶきんで拭いた昆布ではさみこのシートに包んで冷やすと、ぎゅっと旨味の増した昆布〆ができるのが、特に嬉しいところです。
◦いちはらの盛り付け箸
京都の箸専門店、いちはらさんの、先が極細の竹の菜箸です。
どちらかというと家庭用でないかもしれませんが、針海苔や小さな金箔、松葉柚子などの小さな小さなあしらいも、置きたいところにすっと配置ができる気持ちの良さは、仕事だけではもったいないほど。家でも毎日使っています。
指が箸先まで伸びているような使いやすさです。
◦金串
写真は、ラム肉や豚肉をスパイスとレモン汁につけながら焼くピンチョモルーノです。金串に刺して焼くとすぐに程よく火が通ります。
金串は、焼き魚の串打ちなど、業務用に使うイメージがありますが、金串でないと出来ない用途が様々あり、結果毎日使う大切なものです。
ゆで卵をする前に、尖っていない方の殻に一か所穴をあけたり、かたまり肉のローストの焼け具合を見るときにこれを中心に差し、唇に当てて温かさを見たり、鶏の皮や魚の皮、パイやタルトの生地の縮みを押さえるために数か所穴をあけたり。
また、若鮎やおまんじゅうなど、和菓子の表面に焼けた金串で絵を描くように焼きを入れて楽しんでいます。
◦大久保ハウス木工舎の調理ベラ
これこそ用の美だと感じた、軽くて美しく手にピタッとなじむへら。ブーメランのような独特な形で、ボウルの中や鍋肌にもうまく沿って動かしやすいなだらかなカーブがありがたいです。
先端が平らになっていて、フライパンの上でひき肉や、麺をほぐすのも楽々。ケーキの生地に粉を混ぜるのもとてもスムーズです。
様々なカンナだけで削りつるつるに仕上げられているので、メンテナンスも楽で丈夫、さらには左利きがあると知って嬉しくて泣きそうになりました。
これを使いだしたら他のヘラは使えないなと思うほどです。
◦銅製玉子焼き器(関西型)
かなり年季が入っています😅
厚焼き卵を毎日作っている頃に違いを実感し、サイズを変えて二つ揃えるほど愛用しています。
銅は熱伝導率が高く焼きむらが起こりにくいので、きれいに仕上がるだけでなく、ふんわりと焼きあがります。
正方形の関東用もありますが、私は使い慣れている関西型を愛用しています。
手入れは洗剤なしの水洗いと乾燥のみ。
合羽橋の釜浅商店や銅源サイトウ、日本橋の木屋などで買い、木の柄を替えたり手入れしながら一生ものとして使うのをお勧めします。
◦空心菜ピーラー
横浜市泉区にあるいちょう団地は、訪れると驚くほどに多国籍なエリアです。ごみの捨て方の案内も何か国語も表示があり、驚きました。
ベトナム戦争で南ベトナムの崩壊から大量の難民が生まれたことで、ここが定住を促進する場所だったからだそうです。そうして多国籍な街に変貌したこの界隈が楽しく、時折行っていますが、ベトナム食材があふれるほどに並ぶ、「タンハー」という店の片隅で見つけたのがこの空心菜用のピーラー。
針金の先に鋭利な金属製の風車のようなものがついていて、空心菜の穴の部分をこの針金に通す作業を続けていると、クルクルに丸まった空心菜の細切りがあっという間に山盛りに出来上がるのです。
ガーリックピーラーや玉ねぎのみじん切り器など、用途が限られている道具はほぼ使わずにきました。これも包丁で千切りにすればよいので、けして必須の道具ではありませんが、このユーモラスな道具の楽しさにいつも嬉しくなってしまいます。
なければないで済む、でも調理していて笑顔になる。
そんな道具もとても大切に感じています。
⚪︎MicroPlaneのゼスターグレーター
イタリア料理屋さんなどで、食卓でチーズをおろしてくださるときに使われている道具です。ナイフのように細長いものを愛用しています。チーズに限らず、自家製パン粉もきれいにできますし、柑橘類の皮やトマトをおろすのも簡単。ホールトマト缶要らずです。
ニンニク、玉ねぎ、人参、オレンジの皮、ナツメグにわさび、チョコレートまで、刃の上で軽く滑らすだけで、カンタンにおろせます。
以上、包丁やまな板などのように必須ではないけれど、使い始めると手放せなくなる魅力を持つと感じた道具たちについて、いくつかご紹介してみました。
道具はその人の生活スタイルに合うかどうかが大切なので、見てくださっている方の料理に添う道具になりうるかは未知数ですが、
もし気になるものがあったら、ものは試しと使ってみられてください。
これが使いたいからあれを作ろう。という発想になったなら、それはかなりの高相性だと思います。
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