夏の終わりの外ごはん〜串焼き、バスク風
我が家の夏も、
そろそろ終わりを迎える頃。
いつもは8月最終週の土曜に花火大会が催され、すぐ近くの海から打ち上げられる花火を
目と耳で胸に焼き付けながらゆく夏を惜しむ、のが恒例でした。
それがここ数年、密を避ける為でしょうか。
中止が続いていて、寂しい限りです。
往く夏を惜しむべく、
自宅の前にテーブルやら椅子を並べ、
七輪でのんびりと焼きものを。
中でもピンチョ・モルーノという串焼きは、じっとりとへばりつくような湿気のなか、頬張るのがいい!と思える味と薫り。
夏の終わりに良く合います。
スペイン側バスクのビルバオを訪れた時、
これ食べたさに毎晩バルに通いつめていた
アラブ風のスパイシーな豚の串焼きを真似たものです。鶏肉やラムもあいます。
昨夜は牛肉も試しにつけて焼いてみました。
モルーノソースのモルーノとは、「ムーア人の」という意味だそうです。
ピンチョ・モルーノはつまり、ムーア人の串焼き。
スパイスに漬け込み、レモンやオリーブ油を効かせるところに、スペインのとは一味違う、アラブの食文化が色濃く馴染んでいるのを感じます。
仕込みは、
クミン大さじ1、ターメリック小さじ1/3、パプリカ小さじ1/3、レッドペッパーお好みの量(全てパウダー状のスパイスです)に、おろしにんにく1片分、レモン汁大さじ3と塩小さじ1、オリーブ油大さじ2を混ぜたソースと、一口大にしたラム肉または豚肉を合わせてジッパー付き袋で半日漬け込むだけ。
金ぐしにさし、途中で長皿に入れたレモン汁を絡めながら、香ばしく炭火焼にします。
仕上げにさらにクミンをかけても美味しいです。
手でいける酒肴も、
懐かしいこのピンチョスに合わせて。
どれも、残り物や瓶詰め中心で、
気楽に、好きなようにのせて頂きました。
一夜干しのイカをオリーブ油で両面香ばしく焼き、飴色玉ねぎとバルサミコ酢で和えたもの。
チョリソーという辛いソーセージを飲み残しのシードルで煮て、パプリカパウダーをたっぷり振りました。
マグロとアンチョビ、オリーブ、ケッパー、紫玉ねぎ、アーモンドを叩き、オリーブ油、おろしにんにく、レモン汁、塩胡椒で和えたもの。
作り置きのラタトゥイユと、イワシの缶詰。
椎茸と玉ねぎを多めのバターで炒めて潰し、生クリームとブイヨンで緩めて冷蔵庫で冷やしたディップを、生ハムとともに。
先日ご紹介したタルティーヌと違い、ピンチョスはこうした隠し味のベースと、乗せた具との味の絡みが楽しめるものがたくさんあります。
この椎茸のディップは、レバーペースト同様、作り置くと便利。
もちろん市販のディップでも十分楽しめます。
パンも焼かずに、薄切りで気楽に。
タイムを効かせた鶏のレバーペーストと、夏みかんの皮の甘煮(市販の瓶詰め)またはマーマレードに、昨夜の残り物の野菜のフリット。
フルーティーなジャムも良くあいます。
薄く粉をはたいたエビの白ワイン蒸しに、刻んだピーマンと玉ねぎと、ワインビネガーとオリーブ油、塩を混ぜたソースをのせたもの。
花火大会の喧騒も、
いつもは静かな町に溢れかえる昂揚感も、
お腹の奥にまでどんどんと響く花火の音も、
翌朝は嘘のように消えて、
やはりぐっとくる寂しさはあるのだけれど…
夏の終わりを告げてくれて、秋へと気持ちを切り替えるために、大切な一夜でもありました。
最初から見ることもできないのは、もう今年までにしてもらいたいなあ…と思うのです。
来年の夏は、もっと気楽にみんなで集まれますように。
夏が往けば、さあ、食欲の秋がやってきます。
寂しがってばかりいられませんね。