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古梅干しと煎り酒



梅仕事の話をする季節ではありませんが、
我が家に残る古い梅干しの話を。

それはもう30年以上も前の、息子の育休中でした。
初めて10キロの梅を漬けたのです。

梅自体の種類も塩のまぶし方も干し方も心許なく、その時に縋るように読み込んでいたのが乗松祥子先生の「梅暦、梅料理」の本。

ページごとにその面白さに魅せられ、
エキス、シロップ、梅酒にカリカリ漬け、甘漬けなど、梅仕事のワクワクする楽しさに、
年ごとにのめり込んでいきました。
思いついては夜な夜な試し、うまくいけばまた嬉しくなって、を繰り返していた日々。

今も毎年、季節が終わると寂しくて、
なんだかずっと終わりたくない心持ちになるのです。

その古梅干し。
ずいぶん減りましたが、甕の底で今も歳を重ねています。
初めての、へたくそだった梅干し。

普段の食事には、この頃よりは上達した新顔の梅干しの方が食べやすく並びがちですが、
古株さんを時折り刻んで使うと、思いのほか良い味わい。
当時はガツンと効いていた塩も、
いつしかそれなりにまるくなっていくと気づきました。

自分も、歳だけは同じように取っているのに…。
まだまだ未熟です。

その後、縁あって乗松先生のお宅に伺う機会を頂き、お料理をご馳走になりながら
梅仕事の想像もつかない奥深さ、
大事にすべきことと、そこまで気にしなくても良いこと、
出来上がった後にさらに形を変えて
いくつも広がる新たな楽しみ、
さまざまに教えて頂いて来ました。


帰宅後すぐ、忘れないうちに
この古梅干しを使い、
醤油よりも古くからある、煎り酒という調味料を作りました。
種を集めておいてでも作れます。
また、古い梅干しでなくても、甘味など無添加のものなら大丈夫。
(塩だけで漬けたものの市販品が思いのほか少なく、甘味料や添加物で別のものになっているものが多いのに驚いたことがありました。)



*煎り酒
日本酒2カップに古梅干し4個、生姜のスライス3枚を鍋に入れて、3/4量になるまで煮詰めます。ここにかつお節ひとつまみを入れ、あればお茶漬けのぶぶあられも加え、最後に昆布を沈めてひと煮立ちさせ、そのまま冷まします。

使いやすいので、もっと多めに作っても。

これは本当に使いでがあります🎵

サラダに、魚の下味、炒め物に煮物。
まろやかな味がつき、色が濃くつかないので、白身魚にぴったりです。

もうひとつ、
先生の練り梅のレシピをかなりお手軽にアレンジして、
古梅干しと去年の梅酒の梅で
鰹梅を、作ってみました。


*古梅干しの鰹梅

①小鍋に入れた煮切り酒1カップに昆布を2時間ほどひたす。ここに種を除いた梅酒梅8個を入れて柔らかくし、種を除いた古梅干しも加えて火にかけ、木べらでつぶしながら酒をなじませていく。汁気が少なくなったら火から外し、冷ます。

②①の梅をまな板にのせ、包丁で細かく叩く。青じその葉5枚、白いりごま小さじ1も一緒に刻んで叩き混ぜる。

③鰹削り節ひとつまみを手で揉み解しながら混ぜ、生姜の絞り汁小さじ1/2、焼き海苔少々も混ぜて、一晩寝かせる。

そのまま酒の肴に。
野菜と和えても、麺の薬味にも。
すし酢代わりにご飯に混ぜても。

毎年、秋になると(多分、食べ過ぎで)胃腸の調子が落ちてしまう私ですが、
こうした梅干したちや梅肉エキス、梅酒などに助けられるたび、
薬を超えた梅の不思議とも言えるチカラに、驚くばかりです。

30年経ってもまったく傷むことなく、
ひとの身体に寄り添い支え続けてくれ、痛みを和らげてくれる梅干し。
思わずありがとう、を言いたくなります。

来年のおせちにも、息子と同い年の古梅干しを隠し味に、家族の健康を守ってもらえますように。


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