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お茶
2021年3月14日 05:03
うだつの上がらない日々、家でも一人、職場でも一人、社会的にも一人。ひとりぼっちの延長線に生活が偶然あるような閉ざされた春、遂にわたしはマッチングアプリをインストールした。おしゃべりロボットを買う財力はなくて、犬や猫のいのちを預かるほどの懐はなくて、植物を育てるのは何だか味気なくて、やっぱり私は人間だから、人間と会話をしてみたいと思った。「いちばん出会える」と口コミで評判のマッチングアプリは、「
2021年2月16日 03:18
君の爪はいつも綺麗に切り揃えられていた。きっと丁寧に磨いていたのだろう、君の爪は私のそれよりずっと艶があった。君の部屋はいつもそれなりに片付いていた。長めの髪の毛が落ちていたことは一度もなかったし歯ブラシも一本だけだったけれど、洗面所にはコンタクト液があった。君の視力は1.5だと、いつか自慢されたことがある。君と私は友達といえるほど近くはなくて、でも知り合いと呼ぶよりも少しだけ密度が高い、
2020年10月31日 03:10
数分前に何と言ったかすら覚えていないけれど、特に届けたい言葉でもなかったし相手に振り向いて欲しかっただけだから、喉から甘い声を出したことだけが確かだ。小手先の甘い声は耳にべたっとはりつくから煩わしいのに、私は気付いたらそういう声を出している。寒さをしのぐための寄り添いで良かった。眠れない夜に息をひそめて隣にいるだけで良かった。それ以上はいらなくて、だってそれ以上になればもっと難しいことを沢山考