見出し画像

Paul McCartney / Give My Regards To Broad Street 音源備忘録43

 ポール・マッカートニーが脚本と主演を担当した映画『ヤァ!ブロード・ストリート』のサウンドトラック。1984年リリース。映画自体は評価がイマイチで興行としても失敗だったらしいし、アルバムとしても絶賛されるようなシロモノではないのだが、実は私がリアルタイムで聴いた初めてのポールのアルバムなんである。

 前年の『パイプス・オブ・ピース』さらにその前年の『タッグ・オブ・ウォー』は評価が高く、特に『タッグ・オブ・ウォー』は名盤とも言われるが、地方の中学生は経済的にも地域的にもハードルがあってシングル曲しか聴いていなかった。まあシングルはスティーヴィー・ワンダーとデュエットした“Ebony & Ivory”とマイケル・ジャクソンとやった“Say Say Say”だからラジオでもガンガンかかるし、聴いてて当然ではあるのだが。

 高校に進学してやや大きい街に通うことになり、その年にリリースされたアルバムを、地元の町にはなかったレンタルレコード店で借りて聴いたというわけである。そのとき一番新しいアルバムだったというだけでなく、ビートルズやウイングス、ソロの過去曲が入っていて入門編的だったということもある。ただ前述の『タッグ・オブ・ウォー』『パイプス・オブ・ピース』もさほど間を置かず聴くことにはなる。

 肝心の内容についてだが、とっ散らかっていてアルバムとしての統一感はあまり感じられないし、そもそも新曲が3曲しかない。シングルになった“No More Lonely Nights”は良い曲だと思ったが、ポールの曲にスティーヴ・ルカサーのギターというのは不思議な印象。「入門編的」に思えるというのは何より“Yesterday”や“Eleanor Rigby”なんかが入っていることが大きい。アルバムとしてイマイチだとはいえ、それぞれに曲も演奏も良いし、ビートルズの曲をライヴではなくしっかり再レコーディングしているのも今となっては貴重。ジョージ・マーティンのプロデュースも功を奏している。

 そう言えば当時ロッキング・オンで松村雄策氏が、3曲しかない新曲が“No More Lonely Nights”“Not Such A Bad Boy”“No Values”と全て否定型なのは意味があるか、みたいなことを書いてたと思う。単なる偶然だと思うが、40年前のことでも憶えてるもんだな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?