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Tom Petty & The Heartbreakers / Let Me Up (I've Had Enough) 音源備忘録22
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ1987年の作品。なかなか代表作には上がらないアルバムを何故選んだかというと、単純に何度も聴いていて思い入れが深いから。実はCDプレーヤを買ったばかりの時期に入手したうちの一枚で、最初から何十枚も買う経済力はないので(当時19歳)数少ないCDを繰り返し聴くことになる。そんな時期なので知らないバンドの新譜をジャケ買いする余裕は当然なく、知っている上にラジオで聴いてから買ったと思う。
1曲目の“Jammin' Me”「Take back Eddie Murphy」が面白かった。それまでも実在の固有人物が出てくる歌詞はあったが、エディ・マーフィのようなリアルタイムの超有名人が出てくる歌は私には初めてだった。実際にはもちろんこの曲だけではないし、またヒップホップでは珍しくもないんだが、当時の私の知識はそんなものだった。歌詞を書いたのはボブ・ディランだそうで、今思えばなるほどという気もする。この歌詞、エディ・マーフィに何か言いたいわけではなく(他の名前も使われているし)、メディア含めた社会に対しての内容らしく、単に象徴として使われていたようなのだが、エディ・マーフィ自身は不快感を表明したとの話がある。ホントかな。
この“Jammin' Me”はイントロからギターが格好良くてハマったが、アルバム全体としてはいろんな曲があり、さすがにこの時点でキャリアもそれなりに重ねてただけのことはある。所謂ギターヒーロー的ではないけれど、自分はマイク・キャンベルのギターが好きなんだということを改めて感じたりもする。また“It'll All Work Out”で使われているのはおそらくマンドリンだと思うが、フレーズが東洋的で面白い。
このアルバムの翌年にはトラヴェリング・ウィルベリーズのリリースがあるのだが、ジョージ・ハリスンもロイ・オービソンも、そしてトム・ペティも亡くなってしまった。トムは66歳、他の2人は50代だからまだまだ若い。残念。存命なら一度くらいワールドツアーもあったんじゃないかと妄想してみる。