魔法が使えなくなっちゃったみたい
ちーっちゃい時から
レッスンに通ってくれている女の子。
今では中学生のお姉さんになり、
部活動に励んでいる。
この子のことが
可愛くて大好きでたまらなくて
本当ーに伝えられるもの
伝えられるだけ伝えてきた。
彼女も受け取れるだけ受け取ってくれて
本当に会うのが楽しみで
レッスンでは毎回
最高の時間を過ごせています。
しかし。
ある時期を除いては。
そのある時期の訪れまでは
のびのびと気持ちよく歌っていたのに
どんどん不調になっていって
様子を見ていると
肩や手に不自然な力みが生じることが
増えていった。
部活での様子が見て取れた。
手を酷使している。
不自然に握りしめ過ぎる動作をしている。
はずみや反動を使えていない。
エネルギーが内にこもる使い方。
収縮ばかりで伸筋の伸びやかさが皆無。
部活で忙しくなるにつれ
声が変わっていく。
やがては、耳が聞こえづらくなる
症状まで出るようになった。
彼女はひどく落ち込んでいた。
歌うことが大好き、喜び、幸せなのだと
全身で表していたのに。
それが、もうできない。
自分の声がおかしくなってしまった。
耳も聴こえにくい。
歌うことが苦しい、と。
自分の声が不快でたまらない。
だから身体が拒否して聴きたくないという
働きをしてくれていたようだった。
お母様からも連絡があって
もう、魔法が
使えなくなっちゃったような気分だ
と言っています…。
かなり落ち込んでいて
もう歌いたくないんだそうです…
と、伝えられた。
歌うことが大好きで大好きで
いっつも歌っていたのに。
いつも笑っていたのに。
この頃になると
いつも俯いていて考え事をしていて
気分も非常に良くなさそうだった。
人と目も合わせたくなさそうにしている。
そして、それまで休むこと無く
7年通い続けてくれた彼女が
ついに一ヶ月休むことになった。
◆
わたしは、その部活動の教え方に憤りを感じた。
それはないんじゃないの、って。
どんな指導をしているか等
何ひとつ知らないけれども。
どんどん不調になってきたある時に
彼女に質問させてもらったことがあった。
彼女は、とあるスポーツ系部活に属しており
部活の時、どんな動きをするの?
再現して欲しい、見せて!とリクエストすると
彼女は、応えてくれた。
それは、明らかに肩を力ませて
手の力でどうにかしようとする動きだった。
加えて、指導者からは姿勢を良くしなさいと
叩き込まれているのだそうで
背中を反り返らせ胸を張らせながら
いかり肩になり、首を縮こませて
更に大声で張り上げる動きをしていた。
声出しが必須、しかも
最大級の大声を張り上げるように、と。
気合を入れて。
そんな身体を緊張させた格好を取らせて
喉が張り裂けんばかりの
大声で叫ばせるだなんて有り得ない。
人を萎縮させて
交感神経バリバリにさせて。
彼女は声帯閉鎖が困難になり
声がスカスカになってしまった。
それまでは、ツヤのある
素晴らしい声だったのに。
そして、無理に首周りを締め付けたまま
大声を出すことで
耳管閉鎖と開放に不調をきたし
耳の聴こえが悪くなった。
それは大変不快な症状なのだそうで…。
耳に水が入ったときのような
耳の詰まり感。
更には高層ビルのエレベーターや
飛行機での移動時に生じる
耳抜きが不意に起こってしまう。
しかも、手を腰にやり
肩をいからせて物を考える仕草が
癖になってしまった。
首を縮こめて、重心を極端に頭部に集めて。
出会った頃の
フワフワとして、よくはしゃぐ
感覚優位だった性格が
思考優位に転じてしまっていた。
精神的にも、かなり落ち込んでしまっていて
身体的症状の辛さから
耳鼻科や整体にも通っているとも聞いて
そんな、めちゃくちゃな!と
わたしはもう耐えられなくなった。
これまで
育んできたもの、大切な大切な感覚の領域を…
無知な大人が先生という権威を使って
無思慮な命令を繰り出し
それを真に受けて
一生懸命にやることで
踏み荒らされるままに、壊されてしまった…
そんな感覚がして、
奮い立つような想いがしたんです。
これは…わたしが終わらせなければ!と
妙な使命感のようなものに燃えて
彼女の為にできることをやろう
本来の彼女に戻れるまでやる、と決意した。
《続きます》
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