もしも目の前で人が倒れたら、実際動けるのか。何ができるのか。
ある日の朝
中央線に乗り込んだんです。
始発で地元駅を出て、乗り継いで中央線。
到着した電車に
さて、と乗り込んだ瞬間、えっ……………………
こんなだったっけ
電車の雰囲気って…………
違和感。
普段電車移動は
そこまでしない生活スタイルなんですけど
なんか…なんか…
独特。この車内。
あぁ、そうか。
新宿とか都心から郊外に向かう電車だから
朝まで飲み明かした人たちが
乗っているんだなこれは…
だから異様な雰囲気なんだわ…なんて
我々夫婦揃って
うまいこと席にも座れて一息ついたんだけど
でも、わたしはものすごく落ち着かなくて。
「なんか…変じゃない?この電車」
「こんな雰囲気だったっけ?」
ってパートナーに聞いたけど
そうかな〜、くらいの反応。
うーーん………。
でも、この違和感。
何なんだ、気持ち悪い。
バイオハザード。
ゾンビ。
スリラー。
形容し難い異様な空気感。
みんな酔っ払ってて
疲れている空気が充満しているから
なのかな…
と、思うことにしたけど
違かった。
少し離れた席にいたミニスカートの
お姉さんが、なんとも言えない
異様な動き方をしていて
人間の関節とか重心とか
そんな方向とかそんな感じだと
なんか不自然だよねっていう
ぐちゃぐちゃな、奇妙な感じ。
違和感。
これか、違和感の正体は…と
納得できたところで
あんまり人のことジロジロ
見ちゃいけないな、と
気持ちを他に移した。
すると、お姉さんが
ヘナヘナと立ち上がろうとしながら
「う゜う゜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」って
奇妙な声というか音を出しながら、
見たこともない
腰の抜け方でへたり込んでいった。
足、そんな方向に曲がっちゃうのん????
もうどこにも力が入らないみたい。
固まる車内。緊迫。
ヤバイ!って思ったけど怖くて
異様なその様に硬直してしまって。
お姉さんを全員注視している。
誰も動かない。その瞬間。
パートナーが駆けていき
「大丈夫?」と抱き抱えて座席に誘導した。
そこで車内の空気が動き出した。
みんな動き出した。
お姉さんの荷物が散らばって
慌てて転がっていったものを拾うわたし、
一緒に拾ってくれたパリピお兄さん。
顔真っ赤で爆睡してたのに
シャッキリとして。
お姉さんの近くに
付近のみんなが一歩近づいた。
わたしも、ほんの一歩だけ。
それだけ。
触れない。話しかけない。何もできない。
これが…
結構ショックだった。
動けなかった自分。
どうしたらいい?
この人、とにかく怖い。
吐いちゃったらどうする?
暴れたらどうする?
自分が良かれと思って
背中を擦ったりして、逆効果に
なっちゃったらどうする?
わたしたち、この電車
一本見送ったら今日の予定狂うし。
ああ……セコ!しょぼ!!
ださ!!!!!!!
人、倒れてんのに???
目の前で人が!!
そんなもんか!わたしは!!
いや、でもそうだよ実際。
だって、やっと合わせて取れた休み。
意気揚々と乗り込んだ電車だよ。
なんで好き勝手やって
倒れちゃってるような人を
助けなきゃいけないわけ?
とか思っちゃう自分
嫌だなー…………
でも…正直気持ち悪い、触りたくない
でもどうにかしてあげたい
苦しそうだし
でも、こういう時って
こういう時って
どうしよう?
どうしたらいい??
と、頭の中
「どうしよう」しかなくなっている自分
かたや、パートナーは即座に介抱していて
お姉さんの背中に手を置いて
にこやかに談笑してる。
その姿!!!!!!
神々しさ!!!!!!
お姉さんがリラックスできるように
大丈夫?って笑いながら。
一方、わたしは西郷隆盛像のように
「!!!!!!!!!!!」
と、すべてを見開いたまま硬直してた。(憶測)
リラックスとは対極の
「おいどん!!!!!!!!!!!」
何も、何もできなかった。
介抱してもらって
正気を取り戻したお姉さん…
いや、正気ではないんだよな
ぶっちゃけキマっちゃってる。
「はりはろお〜」
ってパートナーに顔を近づけて
ヘラヘラヘラ〜って笑いながら言った。
多分、ありがとお〜って。
それを見て、また正直なところ
「怖い怖い怖い怖い!!!!!!!!!」
「なんでこうなっちゃったんだよお姉さん…」
って、やり場のない憤りみたいなものが
シュウゥっと自分を萎ませていった。
だから、やっている。
パートナーは
だから、合気道とか
こころや身体の仕組みとか
そういうものをやっている。
やっている、というのは
実践がすべてだ、という人で。
座学で学ぶ、知識を入れる。
これをやっても
今回のようなアクシデントの時に
動けないのでは、何の役にも立たない。
だから
言葉での学びを得たいという
知識欲を満たす欲求から、
実践派のそれに変わっていった。
彼がそのようになっていった経緯には
深く胸を打つものがあるんですけど
自分の事じゃなくて
彼の事なので、得意になって
ひけらかしたくなるような
気持ちは抑えておきます。
すみません。
とにかく、彼は
出来事に屈する人ではなかった。
不屈の精神、っていうものを
持っている。
実はこの数十分前にも
その、アクシデントが起こる前に
乗っていた電車を降りたときのこと。
通勤ラッシュで、電車のドアが開くと
当時に人がダバァーーーと
押し出されて長い階段を埋め尽くして
登っていくときのこと。
ごった返す人並みの中
ガチガチに肩を張らせた
イライラおじさんが割り込んできた。
ていうかタックル気味に。
カッチーーーーーン。
おい!!!!!!!!!!!!!!!
こっちも乗り換え数分で急いでんだよ
お前、お前、お前!!!!!!!!!
こんのやろおーーー!!!!!!!!
と、またここでも
西郷どんの如く「!!!!!!!!!」
と、気を漲らせていたところ
そのイキリイライラおじさんは
前にいた人にもどんどこ
ぶつかっていく。
で、だ。
若いお兄さんにドォン
ぶつかったら
お兄さんが「あぁん????」と
メンチ切った。
タックルイライラおじさんも…
応えるようにして…
ああ!!!!!!!
メンチ切っちゃった…!!!!
だめーーーーー!!!!!!!!
あららららららららら
これは!!!!!!!
これはやばい、一触即発!!!!!
はじまるか、はじまっちゃうのか????
お兄さんが手を振り上げる
ああーーーーーーーー!!!!!!!
と、そこにいた全員が
「はじまっちゃった!!!!!!!!」
と察知した瞬間!!!!!
お兄さんが
イラおじの肩に手を置いて掴んだ。
頷いた。
深く、何度も。
まっすぐ。
イラおじを見つめたまま。
何度もコクリコクリと頷いた。
イラおじを見つめながら
身体を寄せて、肩に手を置いて
「わかるよ、わかる………。わかる。」
「な。うん。わかる。」
「そうだよな………。うん。うんうん。」
って…。
言葉はない。
そこに言葉はなかった。
すると、イラおじも
お兄さんに吸い込まれるようにして
静まって、ゆっくり頷き出した。
「あぁ……………そっか。………だよな。」
「うん。あぁ、そっか。うん。そうだよな。」
「うん。うん。そっか、そうだよな………。」
何の言葉もない。
ほんの数秒のこと。
お兄さんの足取りは
ものすごく勇ましくて
イライラを全部地面に放って
その反動で一段ずつ跳ねるようにして
階段を登っていった。
その足取りとイラおじも同調しだして
同じ速度で。歩調が合っていく。
階段を登り切ったら
互いにまたコクリコクリと
頷き合ってサッと別々の方向へ
散っていった。
はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
まじで、まじで
まっじっで痺れた。泣いた!!!!!!!!
お兄さん!!!!!!!!!!!!
お兄さんんんんんん!!!!!!!!!!
そうなんだよね、
イラおじも、好きでイラおじになって
無様で情けない生き様
晒してたわけじゃないんだよね……………
もう…………
本当に本当に本当に美しかった。
イラおじに成り果てた
おじさんの人生。
本来のイラおじの
尊いひとりの人間の光。
そこを掴んで、お兄さんが
元に戻してあげてた。
わかるよ。色々ある。
わかるけど。
でも、貴方がいま起こしている現象
違うよね、それ、違うよねって。
それを、あんな…
至近距離で………………
イラおじが血迷って
殴りかかったらモロに食らうよそれ…って。
でも、それもすべてを包み込んだ上での
あのハグと頷きだった。
はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………………………………
我に返ると
もう自分がイラおじに食らった
数十秒前のイライラとか
もうどこにもなかった。
むしろ、イライラの種火は
すでに自分の内側にあって
そこにイラおじが現れただけだった。
イラおじのせいで!!!!って
思い込んでたけど。
イライラに取り憑かれたイラおじが
元に戻っていく…
わたしのイライラも
一緒に連れて行ってくれた
お兄さんの美しさで…
ほんの数秒の出来事…
もう………感動しちゃって
それをパートナーに
涙ながらに興奮して熱苦しく話すと
感嘆して、それはすごいねー…!!って
言ってくれていた
その
数十分後、だ。
お姉さんのアクシデント発生は。
わたしは
「感動したばい!!!!!!!!」と
西郷どんのように熱く語ったのに…
それでも、それでも
何っっっにもできなかったんだ。
道具を持っていても実際に使えないと
アクシデント発生から
お姉さんを介抱し、お姉さんは無事に
駅を降りていったのを見送ってから
「わたしは何もできなかった…………」
と落ち込んで、パートナーに話すと
あなたは、意識とか
考えていることとか、もう素晴らしいから
実践したほうがいいよ。
体術とか。
心理学だとかもうそんなの要らないから。
と。
もう、確かに………しか
確かにそうだわとしか思えなかった。
知識はある。
イズム、というか信念もある。
意識もいろいろ使っている。
しかし、身体が伴っていない。
歌うとき以外の人生で。
むむむむむ。
もう、やるしかないのか…。
でも身体動かすの嫌い…。
でも体術って面白いんだよね確かに…。
なんて経緯、思い。やり取りがあって
いま合気道をごろごろ農園で習っている。
本当に本当に本当に
その通りでした………………………
そして、音楽や祈り
想いを放つということと
合気道って根源は同じだったって
ここまで同じだったとは、って。
想っているだけじゃ動かせない。
感じているだけじゃ動かせない。
想って、感じて、触れて、放って
なりたい状態になっている。
そしたら結果として動かせている。
動け動け動け動け、では動かない。
何事もそうなんだ。
そして、恐怖を感じている自分。
恐怖を感じている相手。
その根源は何なのか。
自分を何者だと捉え違いをしているのか。
どうして恐怖に身を強張らせるのか。
自分は何なのか。
人は何なのか。
ヒトという入れ物に何を入れたいのか
ヒトというラッパを吹くのは誰なのか
誰が奏でるのか
誰に奏でさせることを許可するのか。
ありがとう。
4000字突入です…………
本当に…お疲れさまでした………!!!!!
こんなにも長文に
なってしまうとは思わなかった……。
締めの言葉もろくに見つからないまま
今日はこの辺でお開きとします。
いつも、今日は1000文字くらいの
ライトなやつにしよう〜って
思いながら書き始めるのになぁ。
感受性がものすごい強いから
その分アウトプットしまくらないと
帳尻合わない、ってことなのかな。
自分語りすみません、
いや全編自分語りだけどね。
ではでは、良い一日を
お過ごしください◎