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穢れた聖地巡礼について(ネタバレあり)
※本投稿はネタバレを含みますのでご注意下さい!
※※あくまで一個人の感想です。「こいつはこう思ったんだな〜」程度に思ってて下さい。
出ました。背筋さん最新作。待ってました。
しかも何ですか、ほぼ同時期に「口に関するアンケート」という新作も書かれたようで、こちとら供給が多くて嬉しい限りでございます。
そう言うわけで読ませていただきました「穢れた聖地巡礼について」。
背筋さんの著作名は事務的で淡々としているところが逆に興味をそそりますよね。
そして表紙にちらちら見切れてる頭部のいろんなパーツがやたら巨大な何か。
不気味の谷とはちょっと違いますけど、こういう人体の歪みも恐怖を掻き立てますよね。
(僕は本を読むときカバーを外して読む癖があるんですけど、今作は出来ませんでした笑)
この本の導入はざっくりこんな感じでした。
元オカルト雑誌編集であるフリーライター小林は、心霊系YouTuber池田のファンブック刊行のために池田と打ち合わせをする。
池田の動画は心霊スポットの廃墟に突撃するスタイルで人気を博しており、再生回数の多い動画をいくつかピックアップして書籍化する企画である。
それだけではいまいち面白くない、企画を通すのは難しいと考えた小林は、霊視ができる知人の宝条の協力も仰ぎながら、その廃墟に関するいわくや噂、怪談を無理やり結びつけて脚色する所謂ヤラセをしようと持ちかける。
様々な情報網から入手した怪談を調べていく中、池田の身の回りで不可解な現象が起こり始める。
小林…たぶん天パ。本が売れるためならヤラセも辞さない。肉体派な見た目に反して計算高い。
池田…イケイケのチャンイケ。イケメンで、クレバーで、若干天狗気味な感じ。YouTuberってこうだよなあという偏見を見事に体現した感じの人物。たぶん短髪。
宝条…実家が有名神社系関西ガール。霊が見える。たぶん金髪(プリン頭)つり目三白眼。
だいぶ僕のイメージが多いですが、こんな感じの3人が今回の旅のお供になります。
三者三様の軽薄さを持ち合わせているんですが、みんなして過去になんかあったりするのも徐々に明らかになっていきます。
ちなみに僕はなんとなく宝条さんサイドで読み進めてた気がします。
前作の「近畿地方〜」がエッセイ×断片的な不穏な情報で話が進むのに対して、今作は小説×短い怪談で話が進むような構成になっています。
そのため登場人物の会話が非常に多く、テンポよく読めるのが特徴です。会話劇を観ているような感覚ですね。
メディア化がしやすそうな印象を受けました。
そういう全体のテイストも相まってか、読み進めている間も頭の中ではドラマの日常パートのような明るめのBGMがぼんやりと再生されており、怖さはあまり感じなかったです。
(悪い意味ではなく新しい背筋さんの引き出しを見られた気持ち)
怖さの順だと
近畿地方>口>聖地巡礼
って感じな気がします。
もし背筋さんの本を読もうと思ってるけど、怖いのはな〜って人は先にこっちから読んでみてもいいかもしれません。
とはいえしっかり随所に恐怖や得体の知れなさはしっかり仕込まれておりまして、僕は『輪廻ラブホ』の章が一番「やだも〜」ってなりました。
出産・赤ちゃんが関連する怖い話は個人的には刺さりますね。
ちょっぴり考察(?)も…。
ある境界を境に、自分が立つ側を「こちら」、向こう側を「あちら」とすると。彼岸此岸のように、俗世と霊界と区別することができる。
こちら側からあちら側へ何かを投げ込むことは、我々が誰かの肩をトントンと叩いて振り向かせるように、向こう側の住人をこちらに気づかせるきっかけとなる行為なのではないだろうか。
そして振り向いてくれた人に何か語りかけるのと同じように、向こう側の何かにお願いをするという「交信の手段」が「投げ込む」という行為なのではないだろうか。
お賽銭は金銭を投げ込んで、神社に祀られている神様に語りかける(=お願いをする)行為と捉えられるし、童話「金の斧」は泉に斧を投げ込んだことで、泉の精霊と交信している。
何を投げ込むかは、何かが何に興味を持ってくれるのか次第であるし、我々が語りかけた何かが必ずしも善良なものとは限らないが…。そう考えると投げ込むという行為によって発生する『振動』があちらとこちらを結ぶ縁・媒介のようなものになっているのだろうか。空気・音・波紋…。
赤ん坊って頭が大きくて、ゆらゆらしてますよね。そういう存在ってこの作品にもたびたび登場してましたよね。あれはいったい何だったんでしょうね。
興味のある方は是非、お手に取って下さい。