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私と「はたらく」の初めての出会いは、1メートル四方の試着室の中だった。 社会に出て働きたいなんて一度も思ったことはなかったが、大学3年生の時に、ついにリクルートスーツを買った。 正確には親に買ってもらった。これから就職活動をする私のために、正月の休みを使ってスーツを選んでもらった。 「試着してみなよ」 と言う親の声に、全く気乗りしない声で面倒臭そうに答えて試着室へ向かう。 「サイズが合わなければお声がけください! 」 店員が餌を見つけたかのような声で、試着室のカー
10月1日に誕生日を迎えた。その日の0時00分に一番初めに思ったのは、嬉しいよりも「怖い」であった。 イベントの仕事を生業にしてきた私は、いつの間にか社会人10年目を迎えた。 がむしゃらに仕事に打ち込み実績を積んだ一方で、漠然とした不安に駆られる。 プレッシャーの大きい仕事を扱う中で、もしも心を壊してしまったら。2度とイベントの仕事をしたくなくなった時、自分に何が残るのだろうか。何かをやり直す気力はあるのか。 昔よりも、目の前のネガティブな事に目を向ける時間が増えた。
つい先日、noteから通知が届いた。 どうやらこのアカウントを開設してから4年が経ったらしい。 当初、noteを始めた理由は「何となく」であった。ただ本格的に始めたのは、忘れもしない2020年の5月だ。あの時の選択が、私の可能性を大きく広げた。その時のエピソードを書きたい。 ========== 2020年3月、私はIT企業に転職した。その年に30歳になる私は、今年は節目であり、30代の華々しいスタートを切る年にしたいと思っていた。 そのために、これまでの社会人経験を
「『これを機に』集まってみようか」 ある日、友人の家に集まり一通り話した後、一度自分たちの友人を集めて合同で同窓会をしたら面白いのではないか、という話となった。きっかけは、お互いの友人の自慢をしていた時、どの話題も面白そうだ、とその場にいた人全員が思ったからだ。 その時集まったメンバーの中には、実は初対面であったり数年ぶりにあった友人もいた。ただ、共通の経験として、学生時代に東南アジアや韓国など、国際交流事業に参加したという共通項で仲良くなった。 合同の同窓会を開くこと
定期的にKorecolorの体験談を書いていきます。 第一回目の様子はこちら Korecolorは全5回のプログラムで構成されており、そもそものKorecolorの全体感については、下記のイラストのイメージとなる。 第一回目は「軌跡を辿る」というテーマで、ライフチャートをもとに自分のこれまでの人生を振り返ってきた。自分の人生の軌跡を複数人の前で共有することで、自分では考え付かなかったような内省をすることにできた。 まさに、「対話を通じて自己内省」を行えたというか、複数人
2023年に入って、やりたいことが1つあった。 それは、「人と関わりを増やすこと」だ。 2022年は、仕事に邁進した年だった、と我ながら思う。毎日毎晩仕事のことを考え続けた結果、友人に会う心の余裕がなかった。 結婚した友人、子どもができた友人も増えたこともあるかもしれない。 20代の時と同じペースで外に飲み会にはいけないな、と何となく理解してはいたものの、いざ予定が減ると悲しい。 その結果、仕事しかやることがなかった。仕事の飲み会にも誘われるようになったが、楽しい反面、
「ちょっと電気消しなよ」 「水、出しすぎじゃない?節約しなきゃ」 「クーラー消して!」 家の中でこうした言葉をパートナーから聞くたびに、イライラしてしまう自分がいた。なぜ不毛な節約をしなければならないのか。終わりのない苦行に身を投じているかのような気分となった。 同棲を始める前は気にならなかったお金の話が、いざ同じ家に暮らし、生活費を支払うとなったときに問題として顕在化した。 どうしてもパートナーとお金の話をするのが嫌だと感じてしまう。 その理由は3つある。 ・どちら
普段あまりドラマを観ることはないのだけど、久し振りにぶっ刺さり、毎週欠かさず観ているドラマがある。 それが、「正直不動産」だ。このノートでは、ぶっ刺さりポイントを書いていきたい。 簡単にあらすじを書くと、とある不動産仲介業者の営業が、ひょんなことから祟りにあい嘘をつけなくなった。その状態でいろんなトラブルや苦難に見舞われるのだけど、逆にその「正直さ」を武器に仕事を続ける、という話。 以前は営業成績ダントツ1位だったけど、その時は売って成果を得るために、客にとって都合の悪
ゴールデンウィークを機に、自分の人生を振り返ってみようと決めた。きっかけは、ある漫画を読んで感銘を受けたからだ。 そして結果として、何かを積み重ねることの難しさ、周りの人への関心を高めることの大切さを実感した。この記事にはそこに至るまでのプロセスが書かれています。 きっかけは、GW中に読んだ『しあわせアフロ田中』の34話、「はたして80枚もあるのか?」という話を読んだことだ。 ざっくりとしたあらすじは、一年をチケット1枚、余命が仮に80歳まであるとして、あと何枚チケット
毎週土曜日に、クロスバイクで多摩川沿いを走るのが趣味だ。川の流れを見ながら、羽田方面に走り、ゴールである神社を目指す。 川沿いの土手では、たくさんの人が思い思いの時間を過ごしている。少年野球の野球の風景は、そんなに怒鳴らなくたっていいのではないかと言うくらい、大人が声を出して指導している。高校生くらいの野球チームの練習は、とにかくストイックに練習に取り組んでいるのに対し、その隣の社会人野球は、どこか楽しそうに試合をしている。 子供向けのサッカー教室の指導者は、見た目が若い
2021年を振り返ると、改めて楽しかったなあと思う。 海外で働いている友人を交え、オンラインで数年振りに会話ができたこと。実家に顔を出して、家族と食卓を囲んだこと。おばあちゃんの家に行けたこと。イベント仲間や、大学の友人と対面で会えたことなど。 自分の大切な人たちと同じ時間を過ごせたことで、だいぶリラックスができた。でも不思議なことに、彼らと同じ時間を過ごしている最中は、どこかソワソワして、その瞬間を楽しめてなかったことに気づく。 例えば、「明日はこの予定があるのか」、
「ああ、やっちまった…」 深夜、自宅の鏡の前でひとり立ち尽くした。もう後戻りできない。でもこの日、あることを手放すことで、日々に微かな希望を感じた気がした。 話は2日前に戻る。 仕事の繁忙期につき、どうしようもなく忙しい毎日を過ごしていた。PRの代理店で働いていた私は、毎日深夜に家に帰っていた。業務が忙しいあまり、疲労が元であり得ないミスをしてしまう。そうした失敗は雪だるまのように積もる一方で、仕事の自信はどんどん溶けていく。どうしよう。本当に追い詰められていた。 ス
2021年の年の瀬、ふとLINEの友人の一覧を見たくなり、画面をスワイプしてみる。すると、過去に連絡をとっていた友人たちの存在に気づく。なぜ彼らと連絡を取らなくなったのか。 いや、特に理由はない。別に嫌いでも何でもないのに、距離と時間が離れれば、自然と他人の状態に戻ることも多いと、30歳になった頃から実感し始める。 その後もLINEの友人一覧を見ていると、元カノの苗字が変わっていることに気づく。それを見て、悲しい気持ちを抱くことなく、事実として受け止めている自分に、大人に
「今までの人生の中で一番のターニングポイントとなった出来事はなんですか?」 ともしも誰かに聞かれたら、私は迷わず、 「鉄棒です」 と答える。 ===== 小学1年生のある日、体育の授業で鉄棒をすることとなった。横一列に並ぶ鉄棒を前に生徒が並ぶ。順番に、「つばめ」という技から練習に入る。鉄棒を両手で持って、自分の体を持ち上げ、上体をやや前傾に保ち、まるで燕が飛んでいるかのような格好をすることだ。 私はつばめに関しては難なくクリアすることができた。そのあと先生が「次は前
ほとんどのイベントがデジタル化した昨年。あらゆるイベンターが試行錯誤しながら「オンラインイベント」に向き合ってきたのではないかと思います。 かくいう私もこの一年で、「zoomってなんだろう?」「Vimeoって何?」「配信ってなんか怖いなあ」、とか言っている暇もなく戦場に駆り出され、文字通り身体で配信の仕組みを覚えた結果、今では本当に当たり前のようにツールを使いながらオンラインイベントを運営できるようになりました。 それだけ打席に立たせてもらったのだろう、と書きながら思い感
緊急事態宣言下になってからのもっぱらの趣味は、歩くことだ。 家から駅までの道を、歩く。駅から会社までの道を、歩く。通勤の駅から一駅分離れた駅まで、歩く。正直ちょっと疲れたりもする。けれど、不思議と心地よい気持ちになる。 歩く時間を確保するために、少し早い時間に起きる。7時台の街並みは、車通りも少なく、少し静かだ。朝日が徐々に上がっていくのを、体の表面で浴びる日の角度で文字通り体感していく。少し汗をかくと気持ちがいい。足は疲れているはずなのに、なぜか軽く感じてくる。 歩く