クロスルーツの通訳スタッフに聞きました
通訳紹介
こんにちは。ワクワク・クロス・ルーツ(通称:クロスルーツ)運営スタッフのあかねです。今日は前回に引き続き、クロスルーツの通訳スタッフを紹介します。現在のクロスルーツの活動では、中国語・ネパール語・英語・やさしい日本語の4つの言語で対応しています。中国語とネパール語はネイティブスピーカーの学部生が行っています。(お二人の自己紹介は是非こちらでご一読ください。)
クロスルーツでの通訳
中国語はZoomのチャット機能を通して、ネパール語は口頭で通訳をしています。参加者が話したい言語で参加できるように、様々な工夫をしてくれています。通訳スタッフがいてくれるからこそ、参加者は安心して居場所を過ごすことができています。今回は、普段の仕事内容や心がけていることをお二人にインタビューしました。
通訳スタッフがクロスルーツで心がけていること
りゅう(中国語):一番注意を向けていることは、誠実に元の原稿(居場所活動当日に使用するスライド資料など)から中国語にすることです。また、自分の意見をここでは加えないこともすごく大事だと思います。
ぷら(ネパール語):心がけていることですが、事前に活動内容を一通り見て、シャドウイングをすることで活動当日に言葉が出ないことがないようにしています。口で言うのは時間がかかるので、なるべくすらすら言えるように、事前にもらった資料を見て1人で本番のように練習しています。
活動で役に立っている通訳メソッドとは
りゅう: 自分で考えたルールがあります。 誠実義務:通訳者として言語のメッセージの内容を誠実に通訳・翻訳すること。自分の考え方や意見を加えないこと。中立精神:子どもの尊厳を守り、子どもの意見を批判しないこと。 守秘義務:子どもからのメッセージを守ること。他の人に(個人情報を)伝えないこと。 協同作業:通訳者やスタッフ同士、分からないことがあれば積極的に聞き、協力し合うこと。また、子どもとコミュニケーションをとることで一方的な通訳にしないこと。 技術利用: スライドの内容を活動前に翻訳するため、わからないことがあれば調べたり、翻訳アプリを使ったりして翻訳のクオリティを高めること。自己啓発:プロではないので、ボランティアさんが通訳する場合でも、積極的な態度で通訳すること。また、通訳の本を読んだり、インターネットで通訳の方法を勉強したりすることで自分のスキルを常に磨くこと。
ぷら:シャドーイングをすること。居場所の活動でスムーズに通訳できるように半年くらい前(2021年2月)からしています。(当日の)テーマについて自分で事前に勉強したり、わからないことを調べたりすることが通訳するときに役立っています。あとは、日本語の難しい言葉だとネパール語の翻訳アプリを使ったり、他の人に聞いてみたりしています。
普段の活動の中で工夫していること
りゅう:例えば、日本語にある曖昧な言葉が中国語には少ないので訳しにくいと感じることがあります。言葉の違いだけではなく、日本と中国の文化的な差もあると感じます。中国語に対応しない日本語の言葉があったときは、活動全体の状況や文全体の意味を見ながら、その言葉を中国語の文章に直してより丁寧に説明しています。また、習慣的なルールの説明(活動でのグラウンドルールや自己紹介、ゲームのルール説明など)のところは、そのまま訳してしまうと堅くなってしまうので、日本語だと「よ」、「ね」にあたる中国語の語尾を使って訳しています。最後の「また来週」「さよなら」と言う場面でも「よ」、「ね」の中国語の語尾を使って柔らかい表現にしています。
参加者への翻訳をするタイミングについてですが、最初の頃は子どものこともわからなくて、日本語のレベルもわからなかったので、全部翻訳するようにしていました。そのあとどんどん子どもとの関係性ができてきたことで、「これは通訳いらないな」「今は通訳いるな」というのがわかってきました。今では、日本語のレベルが高い子だけが参加している場合は、アクティビティのルールと難しい言葉だけを通訳するようにしています。また、子どもが話したい言語で話せるように、例えば「中国語で話しても大丈夫だよ。」と直接伝えています。中国語の言葉を入れたり、子どもたちの母国語や慣れている言葉をちょこちょこ入れたりしながらコミュニケーションをとっています。
ぷら:日本文化に関するときなど、ネパールにない言葉があると、どういう風に言おうかなというのはあります。あと、普通に活動内容について通訳することは問題ないですが、(他の人が)会話している内容も通訳するときは難しいと感じます。ネパール語にない言葉のときはたとえ話みたいな感じで説明しています。例えば、日本語のこの言葉の意味はネパール語だとこうだよとか。日本語の言葉を言ってからネパール語で例えを言うみたいな。(通訳するのをネパール語通訳が必要な参加者が)待ってくれたりしているので、ちゃんと彼ら・彼女らに通訳するようにしています。それから、内容が難しい時は何回も同じことを詳しく説明するようにしています。
参加者に対して基本は全部通訳しています。通訳が必要かどうかは、例えば、会話している場面で、誰かからの質問に対して(ネパールルーツの子が答えられるか、)1,2秒くらい待って返事が来なかったら日本語の質問を通訳すると、答えが返ってくることが多いです。ネパールルーツの参加者が日本語での質問内容を理解していたらそのまま彼ら・彼女ら自身で答えるし、出来ない場合は1,2秒くらい待ってからネパール語に通訳するようにしています。時間をおいてやっています。
子どもが話したい言語で話せるように「ネパール語で話していいよ。」と言っていますし、グループワークでネパールルーツの子が多い時はネパール語で話すことが多いです。自己紹介とかもネパール語で話すことが結構ありますね。日本語で話そうとするけど上手く出てこないときは「ネパール語で言っていいよ、僕が日本語で通訳する。」と伝えています。
子どもたちとのつながり
りゅう: 中国のwechatでつながっています。毎週の居場所活動のお知らせにもwechatを使っています。居場所活動日以外も、子どもたちとのコミュニケーションのツールとして活用しています。
ぷら: 基本、クロスルーツに来ている子はWAKUWAKU勉強会などで実際に会った子ばかりですね。実際に会って話したりして、一緒に日本語勉強したり、ゲームしたり、外でサッカーしたり、子どもたちと楽しく過ごしてきました。週に1回、WAKUWAKU勉強会で会うのでそこで話すなどしています。
クロスルーツは自分にとってどんな場所
りゅう: わたしにとってクロスルーツは居場所のひとつです。留学生なので日本に来てからずっと1人暮らしをしている中、(運営スタッフが)声をかけてくれたことを嬉しく感じます。通訳者はクロスルーツでの自分の役割であり、責任感をもって活動しています。
ぷら: 子どもたちとかかわりを持てる場所です。ネパールだったり他の外国ルーツの子とはWAKUWAKU勉強会やクロスルーツでしかかかわれる場所がなく、他の場所ではあんまり会えないので、自分が参加していて楽しいです。一緒に楽しくワイワイできる場所だと思います。
インタビューを終えて
クロスルーツでは、土曜日の活動時に進行をするファシリテーターが事前にプレゼン資料や進行プランを他のスタッフに共有します。通訳スタッフはそれらの情報から、より正確に通訳するために、また子どもたちが過ごしやすい環境を整えるために、様々な工夫をしながら毎週の活動に向けて万全な準備をしてくれています。通訳スタッフは、居場所活動での通訳に加えて子どもたちへの参加の呼びかけなども行っており、子どもとスタッフをつなぐ仲介役や子どもの身近なロールモデルになっています。
筆者であるわたしは英語での通訳を活動中にしています。しかし、英語はわたしの母語ではないため、残念ながら通訳スタッフのように子どもたちのロールモデルにはなれません。運営スタッフとして自分にできることは、困ったときにいつでも話せる存在でいることだと思っています。今回、通訳のお話を聞けたことで、筆者自身のクロスルーツでの役割について考えることができました。このきっかけをくれたお二人に感謝します。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
さいごまで読んでいただき、ありがとうございました。実は、通訳スタッフにインタビューをしたのは夏頃なので、やっと記事にすることができて嬉しく思います。
クロスルーツではボランティアを募集しています。活動に興味を持たれた方は、下記のメールアドレスまでご連絡ください。
メール:cwfr.ibasho0523@gmail.com
※2022/04/26付記
この記事の情報は2021年のものです。リュウ・プラは、2022年4月からは通訳スタッフではなく運営スタッフとして活動を行っています。