なぜ私たち北海道民はイキってしまうのか?
最近はイキリ道民という便利? な言葉もでてきた
序言 「イキり」の道民的構造
「イキる」とか「イキリ〇〇」みたいなものがある。
意気がって調子に乗っていることを指す言葉で、関西方面の方言から全国あるいはネットに広まった。まぁネットや現実には実際調子こいている人が結構いるから使う頻度も高いのだろう。
さて、私は北海道に住んでいる。私たち道民もまた、その本州とは異なる地域性から調子に乗って意気がってしまうことがある。最近は便利な言葉というかネット発祥の「イキリ〇〇」から派生してか、調子に乗っている北海道の人々を「イキリ道民」と呼称するケースも散見される。
本稿では、私たち北海道民がどのタイミングでイキってしまい「イキリ道民」になってしまうのかを考えることで、イキリすぎないことを目指すとともに、イキリがどのような要素を内包しているのか推究を行なう。
北海道2大イキリシチュエーション
まずは北海道民がイキリがちな要素を確認しよう。
皆さんは周りの北海道出身者から、その地域性をもってイキられたご経験はないだろうか?
ありがちな「イキリ道民」ムーブとして下記の2つが挙げられる。
すまん書いてたら3個になっちまった! 以下詳述する
気候系イキリ(数センチの降雪でマウンティングパターン)
都市はその気候や役割で機能を最適化させている。東京では雪が降ることは滅多にないのだから、数センチの雪で機能が麻痺することは仕方がないし想定の十分な範囲内なのだろう。
そこを「イキリ道民」は十分に配慮が及ばず、イキってしまう。
近いジャンルとして、北海道の寒さや雪質イキリみたいなのもある。こんな感じで、北海道の寒い気候や、その他北海道ならではの気候(GWに桜が咲くのでお花見が楽しい! みたいなのも含めて)からイキってしまうことが可能だ。
広さ系イキリ(北海道旅行の際の無理な旅程マウンティングパターン)
次に、北海道は広いことをテコにイキってしまうパターンだ。先述の観光客が無理な旅程を組む話などもそうだし、俺この前札幌まで〇〇時間で行ったわ! みたいなのも広さ系イキリの典型だ。
あとネットでは北海道島をどこか別の地図にトレースすることで北海道の広さを示すことが頻繁に行われる。適切な場面で説明がなされれば良いのだが、いつのそこはかとなく北海道は広い・デカいとPRする「イキリ」感のある説明になってしまいがちだ。
ご当地美味しいもの系イキリ(セイコーマートにこんな美味しいものが! パターン)
これはある程度仕方のないことなのだが、北海道にはミルクや海産物をはじめとしてやたら美味しいものがある。またご当地系の独自の商品が結構ある。地元資本のコンビニセイコーマートの事例もある。美味しいものをきっかけにイキってしまう道民が後を絶たないのはこのためだ。
似たような事例で、札幌や小樽でちょっと高い海鮮丼を食べている観光客に対して「俺ならもっと安くて美味しいところを知ってるwwwwwww」とイキってしまう道民がいる。そりゃ道民なんだからそうなんだろう。例えば海鮮丼だと羽幌とか小平くらいまでいくと札幌より安くて美味しいのがあるのだが、札幌市内でそれに匹敵するお店を探したり、観光客が羽幌や小平まで行く旅費と時間とを考えると札幌や小樽の観光地で食べてしまうことの蓋然性に気がつけるはずだ。そこを認知せずに「俺ならもっと安くて美味しいところを知ってるwwwwwww」をやってしまうとイキリの構造に手をかけることになる。
「イキリ道民」の内部
さてそれでは、道民がイキってしまうケースではどのような現象が起こっているのだろうか。内部の要因について考えてみよう。
他地域との比較の構造がある
1番の問題はここだと思っている。道民がイキるとき、他の地域と比較をし、往々にして下にみる傾向を見出せる。先述の雪の話はそうだし、他所から来る観光客に対して距離や美味しい食べ物でイキってしまうケースも同断だ。
何かと比べて自分の良さをPRすることは、比べられた側にとっては嬉しいものではない。ここに、相手方から調子こいてるな、イキってるなと思われる構造がある。
こんなの北海道にしかない! こんな風景北海道にしかない! 的な言説も同じで比較の構造の中からイキリは生まれてくる。
あと前章でうまく組み込めなかったのだが、コンサドーレや日ハムやレバンガで他チームと比べてしまうってのもある。ただスポーツイキリはまた別に考察する必要がありそうなので詳述を避ける。
リサーチ不足
「言説の裏どりが甘い」という点もイキリにつながる可能性が高い。
例えば、東京と札幌の都市の仕組みや気候の違いを十分に理解していれば、数センチの積雪でイキリ始めることは抑えられるだろう。
美味しい穴場の海鮮丼の店を知っているのはいいけれども、そこに観光客が時間とお金をかけていく場合の計算をして二条市場で食べるのと比較すれば、イキらずに済むかもしれない。
こんなのセイコーマートにしかない! 本当か? 似たような事例が他にもあるかも。事前に調べて発言すれば、イキリにならずに済むかもしれない。
どのジャンルにも詳しい人がいる。北海道の鉄道や炭鉱などの地域産業に関わる事柄や、開拓の歴史ジャンル、はたまたセイコーマートファンなど、それぞれとても詳しい人がいる。そういう方は道民であったり道民でなかったりするのだが、間違いや中途半端な言説にはすぐ気が付くだろう。事前にリサーチをすることで、知識不足によるイキり投稿を防ぐことができる。
自分の実績でない事柄について紹介してしまっている
前章では北海道が寒かったりして本州とは異なる気候にあること、北海道がとても広いこと、北海道には美味しいものやオリジナルのものが結構あることを紹介してきた。
これらの3つは、誰か特定の個人の功績によって形作られたわけではない。
北海道を紹介する際、北海道自慢や北海道イキリになってしまう原因として、「お前は何もしてねーだろ」的状況がある。寒さや広さやセイコーマートがあることについて、そのイキリ道民が何か功績を残したわけではない。寒いのや広いのはお前のおかげじゃねーだろ、って話になる。
例えば岩村通俊とか太田寛一とか、北海道の歴史や産業に足跡を残した偉人だったらイキっても「イキリ道民」とか言われないと思う。だってそれだけの実績を残したんだから。
一方何もしてないのに北海道の何かをテコに言説をするということは、そこにイキリの萌芽を生じさせることになってしまうのだろう。
結語 でもまぁ「イキリ道民」がいた方が・・・
ということで、北海道のイキリの構造について考えてみた。北海道という本州とは異なる気候や文化について、他地域のと比較を行ないつつ言及したりリサーチ不足のまま言及してしまうと、イキリ道民となってしまう可能性を示唆した。
大抵の場合「イキリ道民」ってのはよくない文脈で指摘されるものだ。
ただ私は思う。ネット上とかリアルの会話でもいいのだが、多少調子こいている人がいた方がリズムが出るのではないか。
やりすぎてヘイトを貯めるくらいになってしまうとよくないのだが、ちょっとした「イキリ道民」がいた方が会話がはずむし、ネット上で言うとイイねやリポストなんかもつきやすい、あるいは反論のコメントがついたりして話題になりやすいのではないか。
道民のイキリの構造について論じてきたが、ほどよい「イキリ加減」はむしろ地域を知るため、あるいは地域についての会話のための良い刺激として機能するのかもしれない。