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前向き駐車ってどっちか分からなくなりませんか? なんとか言い換えできんのか。



はじめに 前向き駐車という抽象

車の運転は、ルールがある。日常生活には法律をはじめいろんなルールがあるけれども、車の運転はその際たるもので厳密な取り決めがある。

これは当然ながら、車の運転は人命に関わるものだし、財産にも関わることだし、事故でインフラを毀損させないことにつながるものだからだ。

厳密なルールについては、たしかに若干のバッファがある。法定速度をどこまで遵守するか。冬道で黄色信号をどこまで真面目に守るか。日々厳密な多岐にわたるルールが参照され、個別の事例に反映させながら運転を行う。

このように運転というのは、ルールも現場での一つ一つの振る舞いも、具体的なものだ。はっきりさせて責任を持って行う。それが自動車の運転だ。

ところが、なんだぁ? 「前向き駐車」って。

どっちが前か解らんし、それは俺のせいじゃなくて「前」という言葉に秘密があるのだろうと思っている。今日はそんな話。

前向き駐車をするための具体的な方法

1 前向きに駐車する

前向き駐車するには、前向きに駐車すればいいのである。

車の前を向いて駐車する。前に向いて行けば、駐車場の壁なり、車止めなり、駐車スペースの奥の方に頭から入っていくことになる。

内輪差に気をつけるのはセオリー通り。何度か切り返しても良いだろう。

前向き駐車をするには、このように基本的に前向きに駐車すれば良い。

2 バック駐車で前向きに駐車する

意外にも、世の中でバック駐車と呼ばれる駐車方法も、前向きの要素をかなり含んでいる。

畢竟、前向き駐車とは全く逆であるバック駐車に、前向き駐車のエッセンスがありすぎるのだ。混乱の基(もとい)はここにある。

すなわち、駐車スペースにバックで入っていく。ミラーや周囲をよくみて、時に同乗者に降りて確認してもらうことも有効だ。

この時、駐車スペースというハコに対して、車は前向きに入っている。

トミカとかのミニカーがハコに入っているのを想像されたい。子供の頃、ワクワクしながら箱を開けると、自動車の前の部分が先に見える。そして前から取り出す。これ前向き駐車っていえないだろうか。

ハコに対して出る方向に向いて駐車している。出る方向ってのは前だ。これを前向きと考えて何が差し支えあるだろうか。

3 気分的に前向きに駐車する

俺がもしルンルン気分で駐車を試みた場合、これは前向き駐車にほかならない。

前向きな気分で前向き駐車をした場合、これは紛れもなく前向き駐車だ。そして前向き気分でバック駐車をしたとしても「2」で詳論した通りバック駐車には前向きな要素が含まれる。気分的なものも相まって、前向き駐車のエッセンスが濃くなる。

フランスの作家ジュール・ルナールに次のような格言がある。

ユーモリストとは不きげんを上きげんにぶちまける人のことである

巌谷大四『おにやらい』「ルナアルの人生訓」(三月書房、1963)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2933149/1/161

この格言は個人的に結構好きで記憶にあったものだが、もしこの格言が真であるならば、我々ユーモリストはたとえ不機嫌であっても前向き駐車が可能になる。これすなわちいかなる心理状況でも前向き駐車ができることになる。

『るろうに剣心』に悠久山安慈和尚というキャラがおり、必殺技に「二重の極み」というものがある。基本形はパンチで「二重の極み」を放つのだが、安慈和尚は「二重の極み」を極めすぎた結果、全身のどこからでも「二重の極み」を放つことができるようになってしまう。

精神的前向き駐車もこれと似ているのかもしれない。最終的にはどの心理状態でもでも前向き駐車が可能になる。極めるとはこういうことなのだろう。

おわりに

つまるところ「前」という表現があやふやすぎるのだ。

前は、日常のいろんなところに潜んでいるし、なぜかわからないけど後ろも前も前と呼ぶことがある。これはこれで便利な言葉で、「前」は社会のいろんなところで活躍している。

一方、そんな「前」という言葉に交通ルールを担わせるのは、この言葉の特性からして得意分野じゃないところを任せてしまっている感じがする。

「車止め方向に駐車してください」「壁向きに駐車してください」とか、より正確かつわかりやすい言い換え方法があると良いのではないかと思っている。

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