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デカい西郷隆盛「大蔵大臣! 大蔵大臣!」  ←西郷さんをなんだと思っているのか?

西郷隆盛「大蔵大臣! 大蔵大臣!」


謎のCM

西郷隆盛と思しき漢が、相も変わらず巨大化しCMで叫んでいる。

経理とか会社で使うソフトの宣伝のコマーシャルであることは十分にわかる。ところが、このCMにはいくつか不可解な点があることは、note諸賢おかれては人生の都度都度において認識されてきたことだろう。

本稿ではこのCMでなぜ西郷隆盛と思しき漢が「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と巨大化して叫んでいることが、なぜ不可解なのかについて幾つかの論点を提示しながら考えてみたい。


1 巨大化

西郷隆盛が、巨大化している。

まずこのことが若干おかしい。

世の中巨大化するモノってのはある。戦隊シリーズの敵役なんかは巨大化するし、一方正義側は巨大ロボットで戦闘する。特撮シリーズでも巨大怪獣相手に巨大なヒーローが戦うことがある。人間が大きな兵器に乗り込んで戦うという作品も数多い。

また、人間そのものが巨大化しちゃうこともないわけではない。巨大化フェチみたいなのが確かにあって、でっかくなった可愛い女の子が街を破壊するのが好き的なフェチを見聞きしたことがある。

ところが、西郷隆盛が巨大化している。

巨大化しているのは西郷隆盛だ。

西郷隆盛は歴史のいかなるタイミングでも巨大化していないし、そうした契機を孕む生涯を送ったとも思われない。なんならそもそもの時点で西郷さんは巨漢なのだから、そっから巨大化するのはかなりおかしい。

西郷隆盛が、巨大化する。これは違和感があるということだ。


2 「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と叫んでいる

西郷隆盛と思しき漢が「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と叫んでいる。

これは絶対におかしい。いや正確にいうと、おかしくはないのかもしれない。

まず西郷さんが生きた王政復古の時代では、律令制度になぞらえた官職が高級官僚に与えられた。三条実美が太政大臣になったりとか大久保利通が内務卿になったりとかだ。

大久保利通
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%B9%85%E4%BF%9D%E5%88%A9%E9%80%9A#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Toshimichi_Okubo_4.jpg

それでだ。当時も大蔵省はあったりなかったりしたんだが、そのトップは大蔵卿で、大蔵大臣が出てくるのは明治18年の大日本帝国憲法以降の話なのだ。

そのため、明治10年の西南戦争で散った西郷さんが、「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と叫んでいるのはおかしいし、もちろんなぜか巨大化しているのもおかしい。

また最大の問題点は、西郷さん自身は大蔵卿になっていない点だ。財務担当してないのに巨大化して「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と叫びながらオフィスを覗き込んでいる。

もしかしたら、同じ薩摩出身で激動の時代を共にあった大久保利通を呼んでいるのかもしれない。大久保は明治4年から6年まで大蔵卿だったからね。盟友に声をかけているのかもしれない。

あるいは、西南戦争時の大蔵卿である大隈重信は、戦費調達の結果インフレーションを引き起こしたことで知られる。直接的には、西郷さんはこのことに対して巨大化し「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と、放漫な財政支出をした大隈を批判しているのかもしれない。

大隈重信
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%9A%88%E9%87%8D%E4%BF%A1#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Shigenobu_Okuma_5.jpg

いずれにしても、「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と叫び回ることには、歴史の妙があるとはいえ不自然な点がある。


3 西郷隆盛

そもそもなのだが、西郷隆盛って時点でおかしい。

しかも西郷さんは私服だ。あの上野の銅像の西郷さんの姿だ。あれはウサギ狩りに出かける際の姿だぞ。新宿にそんな姿で来るかぁ? しかも巨大化までして。

さらにそもそもなのだが、私たちは直感的にあのフォルムは西郷さんだとわかる。でも、私たちの知っている西郷さんは述べてきた通り巨大化しないし、「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と叫ばない。

それではあの巨漢が西郷さんであるという可能性は奈辺に求められるのだろうか?

あれは西郷さんのそっくりさんが巨大化しているにすぎないのではないか?

いやまぁ多分あれは西郷さんなんだろうとさすがに思う。ところが、もしかしたら西郷さんじゃないかもしれないという可能性を考慮することで、私たちはこのCMの問題を正しく理解することにつながるのではないかということだ。


おわりに 西郷×巨大化×「大蔵大臣! 大蔵大臣!」

西郷隆盛と思しき漢が巨大化し「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と叫んでいる。

これらのエッセンスは、どこを切り取っても奇妙な印象がある。

少しずつ少しずつ奇妙さに掛け算がなされていって、結果として雪だるま式に奇妙さが膨れ上がっていった結果があのCMだ。こんなセンスは常人には発想し得ない。端的にいってクレイジーだ。それに私たちはこれを当たり前のようにテレビで見ていることも、同じくらいクレイジーだ。

センス抜群で印象に残りまくるCMをつくった応研株式会社に敬意を表し、これからのますますの発展と新CMの作成を祈念している。


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