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「スマホひとつで」稼げるわけがない。そしてこの言葉はもっとポテンシャルのあるものだったはずだ。
はじめに スマホひとつで副業
ネットを見ていると怪しい儲け話がわんさか確認できるわけなのだが、そのなかで頻出の表現に「スマホひとつで」がある。この枕詞が出てきたら、眉に唾をつける必要が出てくる。
こうした怪しさがグッと深まるキーワードは結構ある。本人たちは良かれと思っている表現のなかにこそ、こうした怪しいワードは生まれてくる。
「スマホひとつで」はそんな言葉だ。
今日はこの言葉について色々考えてみたくnoteを更新してみよう。
怪しすぎる「スマホひとつで」
例えば新X(twitter)で「スマホひとつで」「スマホ一つで」でアカウント検索をしてみてほしい。
無限に「スマホひとつ(一つ)で」「秘密の」「今だけ」「スキマ時間で」「月収〇〇万(なぜか38万が多い)」稼げると豪語するアカウントが出てくる。
閲覧数は総じて低く、閲覧数やリアクションよりアカウントの方が多いのではないかと思うほどにコピペアカウントばかりだ。
例えばガレソなどが一声、あるいは一呼吸するだけで全て吹き飛んでしまいそうなほどの泡沫のアカウントが「スマホひとつで」を連呼している。
Youtubeなんかでもこうした儲け話では、広く人々に募るためにおおよその人が持っているスマホを掲げて、「スマホひとつで」儲かりますと述べる人物は多い。
彼らにもし直接聞けば、おそらく「本当に儲かります」ということだろう。しかしそれは搾取する側の説明だ。説明を受けて搾取される側に回った人間にはお鉢は回ってこない。それに、搾取する側にいるはずである人々も、こんなにパイが薄くては話にならないだろう。
要するに、これではごく一部の搾取者しか儲からないのだ。そしてそれは道義的にはギリギリの儲け方だろう。
「スマホひとつで」はすっかりそんなレベルの言葉になってしまった。
誰が言葉を殺すのか?
ここにきて「スマホひとつで」は随分つまらない言葉になってしまった。月に〇〇万円稼げますと宣う際の触媒になってしまった。
元来「スマホひとつで」いろんな可能性があった。連絡手段もそうだし、カメラで写真や動画を撮影でき、インターネットに接続してシェアできる。またいろんな情報をネットから入手できる。地図でも交通機関でも調べられるし、今だったらメシも頼めるしタクシーも呼べる。便利なアプリがたくさんある。
「スマホひとつで」は、こうした現代科学の恩恵に多くの人があずかれることを指す言葉ではなかったか。
富める人も貧しい人も、おおよそみんなスマホを見ている。それぞれの利便性をスマホから得ている。これこそが「スマホひとつで」という言葉で表現するべき状況ではないのか。
誰が「スマホひとつで」をこんなにつまらない言葉にしたのか。
再現可能性の低い儲け話をさせる際の合言葉に「スマホひとつで」を使ったがために、この言葉は死んだ。本来私たちの身近で楽しく役にたつ状況を示しうる言葉だったにもかかわらず、清流に有機水銀を流すかのように汚染が始まった。
端的に言って、「センスがない」とはこうした営為を指すに相違ない。
いろんなうまい楽そうな儲け話を持ってくることはまだ普通のことで、有史以来いろんな儲け話が山師たちによってもたらされたことだろう。これ自体は普通のことだ。
ところが便利なスマホを表現する「スマホひとつでなんでも・・・」みたいな表現を殺し、詐欺っぽい表現にしてしまったのは当代の山師たちだ。おそらく何も考えずに「スマホひとつで」と打ち込んだり、動画で話したりしているのだろう。そこには全くセンスがないということだ。
「スマホひとつで」という社会的新規性からもたらされる言葉の質感を認知できず、無感覚に使ってしまうセンスのなさこそを私は問題視したい。
おわりに 性癖
雑に使われて雑に消耗されていく言葉は結構ある。広く見れば性癖とかもその具体例の一つだ。
私たちにできることと言えば、勇気と誠実さとをもって言葉を使っていくことくらいだ。もし「スマホひとつで」いろんなことができるということを表現したいのであれば、堂々と「スマホひとつで」と口にしたり書いたりしてみよう。やましいことがあるかも、と思われる可能性を打ちやり、堂々と表現してみよう。
性癖も同じだ。エッチな性的嗜好の意味に捉えられる可能性をなげうち、誠実さと勇気とを持ち堂々と原義に近い意味で用いよう。
言葉の意味は変わっていく。とはいえ、言葉の変化を無理のない範囲でとどめようとすることだって、変化の領分のうちの一つだろう。
言葉を大切にするという行いの一端がここにはある。