ゾウとキリンって実際脚も長いですよね!
はじめに
ゾウといえば! 鼻が長い。
キリンといえば! 首が長い。
アフリカをメインの舞台にするこれらのエキゾチックな生き物は、私たちの普段目にしない形態を有している。
すなわち驚嘆するべき鼻の長さと、首の長さとがある。
これらの生き物はその特徴的な長い身体機関を優美にそして効率的に用いて暮らしており、ネット社会ではその様子を動画でつぶさに見ることも可能になっている。
ところがである。こいつら実際、脚も長い。
しかしながら、彼らの脚の長さは全然顧みられることはない。
これはいったいなぜだろうか。今日はこのことについて深掘りして考えてみよう。
ゾウさん、ゾウさん いや実際脚も長いですよね?
ゾウもキリンも、脚が長い。なのに、いっつも鼻が長いだとか首が長いだとかいっつも言われていることばかり、いっつも指摘される。いっつもいっつも! いっつもおんなじことばかり! 辟易するばかりだ。ゾウもキリンもいっつもおんなじことばっかり言われて困ってるんじゃなかろうか。
たとえばこれは骨折してギプスをして職場にやってきた人と近いかもしれない。みんなして「どうしたんですか!?」「大丈夫ですか!?」「何があったんですか!?」と聞く。これは当然で相手を心配してのことである。ところが、よくよく考えてみると、聞かれる側にとっては毎回毎回説明せねばならず、めんどくさい気持ちになっているかも知れない。
ゾウとキリンも、ぶっちゃけ骨折してきた人と同じように思っているに相違ない。ヒューマン毎回おんなじエピソード何回擦るんだ。みたいな。
こうした鼻や首のちやほやぶりに比して、なぜ脚が長いことは無視されるのか。
それは脚が長いことは結構普通だからだ。
長いのにそれが普通すぎると目立たない
ゾウとキリンの脚は十分に長い。でもそれは普通なのだ。首が長いとか鼻が長いみたいな、他の生き物にない特徴ばかりが目立つから、そっちばかりがちやほやされてしまう。
脚は首や鼻並みに長い。絶対値を取るとそうであるのに、印象だけでそうなってしまう。
意外に人間はハエとかカエルとかと同じレベルの状態に未だあるのかもしれない。ハエとかカエルってのは動体視力がいいというか、動くものを捉える能力に長けている。一方で微動だにしないもの、ゆっくりと動くものを視認するのは苦手なのだそうだ。
人間はそうした視認が結構得意な方なのだが、やはりどちらかというと大きく動いているもの、目立つものの方を認識しやすいってのは変わらないのではないか。
激動史観
大学の頃、日本史を勉強していた。個別の論文はともかく、多くの一般書の類では帯とか冒頭の解説などに「激動の〇〇時代」「激動の〇〇国」みたいな謳い文句があった。直接書物のタイトルに『激動の〇〇史』とつくものも多い。
「おいおい常に激動だな」と思ったものだ。要するに、歴史が大きく動いているように伝える方が、人々に本を手に取ってもらえるのだ。もちろん本当に激動する場面ってのはあるだろう。でも多くの時代の多くの要素ががそれぞれ激動しているのであれば、それはインフレしているのであって、真に激動とはいえないのではないか。
逆にいうと、静かにずっと続いているものは歴史家の眼に観察されうるのだろうか? なんて疑問も湧いてきたものだ。
ゾウとキリンの鼻と首と、脚とにはこれと同じことが起こっている。より目立つ、「激動」タイプの鼻と首は注目され、地味な脚は長さ的には前者たちに匹敵するものの、派手さが全くないために議論の蚊帳の外になっている。
私たちもまた、目によく入る際立つ要素しか語り得ないのだ。
ではゾウさんとキリンさんに対して、私たちはどう振る舞い、語るべきなのか?
長さで語るなら
長さで語るのであれば、ゾウの鼻やキリンの首と同じように、ゾウの脚やキリンの脚を同列に語るべきだ。長いってところを語りの切り口にするのであれば、そうすることが誠実である。
あくまで鼻や首を語るなら
鼻や首を語りたいのであれば、その機能について語るべきだ。ゾウさんが鼻で器用に水を飲んだりコミュニケーションをとったり、木の枝を折ったり色々するのを論じたり、鼻はどこまで骨があるのかとか、どうやって進化してきたのかとか、そうしたことを語るべきだ。
キリンについても同じであり、キリンの首を用いたオス同士の争いだとか、寝る時どうするのかとか、キリンの首を支える骨の本数を人間と比べてみた、とか色々考えたり知るべきことは多い。
要するに、長いってことのみで語ろうとするなということだ。
おわりに
私は、ゾウの鼻やキリンの首が長いことは理解しているが、象の鼻やキリンの首が長いということにことさらな意義を認識として有していない。なぜならば、論じてきた通りゾウやキリンは脚も長いからだ。まだ、脚が長いにも拘らず、それがあまり論じられていないからだ。
私はゾウが鼻が長いとかキリンが首が長いというのがあまり好きではないのかも知れない。
ゾウの鼻やキリンの首がどう生き物として機能しているのか。長さとか関係なく、そこをこれからも知りたいしYouTubeとかで見ていたい。