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勘定奉行「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜〜ッッ!!」 ←勘定奉行をなんだと思っているのか?
勘定奉行「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」 。
こいつ本当に勘定奉行か?
(20241222追記:あわせて読みたい「大蔵大臣! 大蔵大臣!」の記事はこちら)
謎のCM
勘定奉行が、相も変わらず白塗りで「お任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」 と叫んでいる。
会社の経理などのソフトのCMなのは十分に承知しているつもりだ。ところが、note諸賢も感じている通りこのCMにはいくつか奇妙な点がある。
本稿では、勘定奉行が白塗りで「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」と叫んでいることについて、いくつかの点から深掘りして考えてみたい。
白塗り
まずそもそも勘定奉行が白塗りであることが若干おかしい。
白塗りをするのは歌舞伎役者だ。実際に、「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」 と叫んでいるのは、勘定奉行役の歌舞伎俳優中村京蔵さんだ。
なのでまあ、歌舞伎役者がやっているのだから白塗りになるのは良いのだが、実際の勘定奉行を見てみよう。
私の好きな幕末の人物、川路聖謨はいっとき勘定奉行の職にあった。川路聖謨の肖像写真が残っている。
![](https://assets.st-note.com/img/1729082028-7X2N0ZLMBhyFSHzgiJvwfUCI.jpg)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E8%B7%AF%E8%81%96%E8%AC%A8#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Toshiakira_Kawaji.jpg
すげー勘定奉行っぽい。
まぁただ、川路は御家人という幕府内では低い家柄の出自ながら、幕末の時代に実力を認められて出世し勘定奉行になった人物だ。だからちょっと叩き上げ感はある。
それでも、やっぱ勘定奉行ってこんな感じなのではないか。
川路聖謨「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」
とかいうと思うだろうか?
川路はそんなこと言わなかったと思うぞ。
「お任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」 と叫ぶ
「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」という台詞は、若干おかしいのではないかと思っている。
勘定奉行は結構な役職だ。もちろん、老中や若年寄とか幕臣の中枢よりかは身分は低いが、おおよそ3000石の俸禄をもらう。江戸幕府内でも比較的地位の高い存在だし、当時の社会全体からしたら相当な身分と言える。
そんな勘定奉行が、白塗りで「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」と叫んでいる。
じゃあ勘定奉行クラウドを使っている私たちの身分はどうなのかということだ。
圧倒的に庶民だ。江戸時代で言うと、江戸っ子だ。宵越しの金を持たねえとか言っているレベルだ。そんな切り捨てゴメンな連中に面と向かって「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」とかいうのか? という疑問がある。
まぁ、会社のシステムを導入するのは最終的には取締役とかが判断するのだから、彼らを一国一城の主と考えると、勘定奉行が「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」というのはまあ良いのかもしれない。各藩にも勘定奉行がいたようだしね。
ただ、それは社長室とかでいうわけであって、庶民が見ているCMで「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」と叫ぶのは、その身分の高さからして違和感があるということだ。
勘定奉行
そもそも会社のソフトに勘定奉行が出てくるのがおかしい。
おかしい・・・のだが、このおかしさを勘定奉行クラウドは武器にしている。
勘定奉行が会社の経理ソフトするのはわからんでもないのだが、CMで白塗りの歌舞伎役者に「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」と毎回連呼させることで、他の会社のソフトと見事に差異化を果たしている。
いちばんやべえな・・・と思ったCMが以下のやつだ。
勘定奉行が顧客満足度4年連続第1位についてしばらく無言でうなづき続けている。そして増える。勘定奉行は同時に何名か補任されることがあったから増えることはさしたる問題ではないのだが、みんな一様に顧客満足度4年連続第1位について納得の表情でしばらく無言でうなづき続けている。ついにお任せあれとか言わない雰囲気を出し始める。
CMの後半もやばく、奉行クラウドの導入にあたり、勘定奉行たちが思い思いの歌舞伎の諸役に扮して雲の上でポーズをとっている。そしてあの台詞「お任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」と叫ぶ。
一般に勘定奉行はこんなことしないし、勘定奉行はこんなこと言わない。
ところが、株式会社オービックは大切にこの謎の概念を20年以上育ててきた。
その結果、需要が全くなさそうな勘定奉行オリジナルダンスムービーを制作している。
おそらくこれは別にたくさん再生されたいとかそう言うのではないだろう。会計ソフトを販売促進するための直接の手段でもない。
これが社内会議で真っ当に通って、しっかりと作成されてしれっとYouTubeに上がっていることは、会社として持つ奉行クラウドのブランディングへの信頼と、長年培ってきたイメージの成熟の証左なのではないかと思う。
つまり、ここに勘定奉行は勘定奉行として完成したのだ。そして会社がクラウドなりソフトなりを販売し続けるにあたり、もう白塗りの勘定奉行に「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」と叫ばせることは切っても切り離せない状態になっている。
私たちの令和の時代は、そんなところまで来ているのだ。
おわりに 大蔵大臣! 大蔵大臣! 勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!
オフィスの経理ソフトはパソコンの普及とともに市場が拡大されてきたことだろう。おそらく性能としては似たり寄ったりになる。ここで、会社ごとに独自のブランディングを施す必要があったのだろう。
経理ソフト業界には謎のキャラが2つ生まれた。前回論じた応建株式会社の巨大化した西郷隆盛が「大蔵大臣! 大蔵大臣!」と叫んでいるCMと、今回論じた株式会社オービックビジネスコンサルタントの白塗りした勘定奉行が「勘定奉行にお任せあれ〜〜〜〜ッッ!!」と叫んでいるCMである。
いずれもかつて存在した役職名をソフトにしている。それを謎の人物に叫ばせる共通点がある。
そしてその奇妙さで印象付けて、販売促進を促している。さらに言えば、一見するとアホみたいなキャラなのにそれをずっと大切にして、自社商品のわかりやすい象徴・マスコットにしているところも共通している。
探し切れていないだけで、会計ソフト・クラウド界隈はまだまだ謎のブランディングを貫く会社で溢れているのかもしれない。
両社のますますの繁栄と、新しいCMの作成を楽しみにしている。