河童について
以下の文章は2014年にFacebookに書いたもの。
このバイト先の青年は、その後蕎麦屋を辞めて
不動産屋の営業みたいな仕事についた。
佐伯くんという名前だった。
「ガチンコファイトクラブ」を見て
ボクサーになると言っていた。
最近山口敏太郎さんが主催する
「怪談王」というイベントの編集をしたのだが、
そこにYoshinoさんという
鹿児島出身のミュージシャンの方が出ていて、
彼は河童の話をよくすると聞いた。
河童は鹿児島では「がらっぱ」というらしい。
「対馬の河童」
ある本に「長崎県の対馬で
河童が目撃されたらしい」という話が載っていた。
その本を読んだ当時、
蕎麦屋で一緒に出前をしていた青年が
対馬出身だったので
「対馬で河童を見たという話を聞いたことない?」と聞くと
「それ、俺の友達のじいちゃんが見たんですよ」と言った。
彼の友達の祖父は、役場を定年退職した後、
毎日のように明け方に釣りに行っていた。
そんなある日、川の側で子供を見かけた。
夜明け前だったので黒いシルエットしか見えなかったが、
小学生くらいの大きさだったという。
「こんな時間に子供がいるなんて」と思ったが、
きっと親と一緒に来ているのだろうと思ったそうである。
子供の横を通り過ぎてしばらくすると、
ボチャンと川に飛び込む音がして、
振り返ると子供はいなかったので、
あれは河童ではなかったかと思ったのだそうだ。
子供のいたあたりにはネバネバした足跡が残されており、
地元の警察の鑑識がそのネバネバを採取したのだが、
後に紛失してしまったということだ。
「この話は地元の町報にも載ったんですよ」と彼は言った。