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息子の思い出

これは11年前、2013年の日記、
この時息子はまだ中学生だった。
安野モヨコの「働きマン」が流行っていて、
菅野美穂主演でテレビドラマになっていた。


『彼は将来「何マン」になるのか』

中学生の息子が、
「ねえ、知ってる?高卒の人と大卒の人とでは、
一生でもらえる給料の総額が1億円くらい違うんだって。」
と目を輝かせて言ってきた。
だから大学へ行きたい、という話なのだろうか?

僕は「へえ、そうなの」と、
適当に相槌を打っていたが、
「それは一生サラリーマンとして働くとしたら、
の話でしょう?」と内心思っていた。

「そもそもお前は、
サラリーマンになろうと思っているわけ?」
と問いただそうかとも思ったのだが、
子供はそこまで深刻な話として、
この話をしているわけではない。
ただ、ゲームの裏技のような情報のひとつとして、
最近聞いた面白い話として、
僕にしてくれているのだろうと思った。

しかし、この話には、
うちの子供にこの話をしてくれた、
情報ソースがあるわけで、
それはおそらく中学の同級生だと思うのだが、
その子がこの話を、かなりマジな、
深刻な話として受け止めている可能性はある。

僕は自分の感覚として
「もし、中学の頃から、
将来はサラリーマンになろうと思っているんだとしたら、
お前の人生はかなり希望がないぞ。」
とアドバイスしてやりたいところなのだが、
それをうちの子供が、
同級生のサラリーマンの御子息に、
「そういう考えは希望のない人生なんだって」と伝えたら、
そしてその子が親にその話をしたら、
色々な意味で問題になりかねないので、
どうしたものだろうかと思っている。

こういうのも子育ての悩みの中に入るのだろうか?
そこのご家庭では、
ご両親がそういう人生を歩んできたのかもしれないし、
おじいさんおばあさんたちまでが、
そういう考え方の家系かもしれないし・・・

というか、最近実際に、そういう考え方の違いから
離婚してしまったご夫婦を見てしまったのである。
プロ野球選手になりたいとか、
宇宙飛行士になりたいとかいうような、
ベタなのでもいいから、
子供にはもうちょっと、
子供らしい夢を持っていて欲しいのだが、
現在の教育制度からいくと、
中学時代からすでに諦観を持って、
高校進学、大学進学を見据えて、
塾に行くなり、予習復習するなりして、
準備しておかなければならいのかもしれない。

それが「いつやるんですか、今でしょ」
というやつなのだろう。

しかし中学生というのは、まだかなりバカである。
うちの子供なんて、ニキビがあってみっともないから、
毎日寝る前に顔を洗って寝ろと言っても、
そんな簡単なことさえできないくらいバカである。

そんな子が計算ドリルとか、
漢字の書き取りをやっている姿なんて、
痛々しくて見ていられないのだ。
こんな作業で脳細胞が疲弊して死んで行くのかと思うと・・・

そもそも、うちの子供が、
大学を出てサラリーマンになったとして、
総額で高卒の人より1億円くらい多く給料をもらえるのは、
65歳くらいまで勤め続けた後の話だと思うのだが、
それは今から50年以上も先の話なのである。

その時までサラリーマンという職業が、
この地球上に存在しているのかと考えると、
それは本当になんとも言えない。

地球温暖化にしても少子化にしても、
もし今と同じペースで進めば50年後には・・・
というようなノリで語られることが多いが、
そもそも今から50年前には、
温暖化も少子化も問題になってはいなかったので、
今から50年後に、今と同じように、
温暖化や少子化が問題になっているかどうかは、
それこそ何とも言えない話なのである。

僕は、50年後には、サラリーマンという労働形態は、
もしかしたら無くなっているんじゃないかと思うし、
できればそうなっていてほしいと思っている。
奴隷制度やカースト制度が、
少なくとも名目上は廃止されたように。

そんなうちの子供も今年24歳になって、
この春から東京で就職して働きはじめる。
何か広告代理店のコピーライターのような仕事らしい。


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