かつて映画をよく見ていた頃
かつてはフリーの映像ディレクターをしていて、その頃は、
娯楽としてではなく、お勉強として映画を見ていた。
それはちょっとつらい事なのだが、それはそれで得るものも多かった。
その頃僕が一番注目していた監督はミヒャエル・ハネケだったのだが、
ダーレン・アロノフスキー監督の「ブラックスワン」が、
ハネケの「ピアニスト」に似ているという噂を聞いたので見てみた。
確かに似ていると言えば似ているが、
オマージュというよりは、稚拙なパクリといったレベルの作品だった。
この二本を比較するのはハネケに失礼だと思った。
しかし明らかに「ブラックスワン」の方が、
「ピアニスト」よりも有名な作品なのが悔しかった。
そして更に「ブラックスワン」は、
今敏監督の「パーフェクトブルー」にも似ているという噂を聞きつけ、
10年以上前に見ていた「パーフェクトブルー」も再見した。
確かに「ブラックスワン」に通じるものはあった。
実はダーレン・アロノフスキーは、
「パーフェクトブルー」のリメイク権を買っていて、
「レクイエム・フォー・ドリーム」という作品においては、
「パーフェクトブルー」のワンシーンを忠実に実写化しているらしい。
結局ダーレン・アロノフスキーは、いろんな作品を
ちょいちょいパクッて、それでアカデミー賞という、
大変商売上手な監督だということになるのかもしれない。
しかし、寄せ集めているだけに、「ブラックスワン」には、
何か、物語の核になるようなものが、
決定的に欠如しているように感じられるのだが・・・
以上のような理由から、
久し振りに再見した「パーフェクトブルー」なのだが、
これは1998年の作品で、まだ携帯電話もインターネットも、
今ほど普及していない時代に、
ネット上で他人になりすましてホームページを開設するとか、
ホームページから情報を得たファンがストーカーのような行動をするとか、
最近は現実の事件として起きているようなことが描かれている。
日本のアニメーションには先見性がある、というよりも、
むしろアニメで描かれた世界を現実が後追いしてなぞっているような感じがして、いかに現在の日本がオタク文化に浸食されているかがよくわかる。
ところで、この時にネットで調べて知ったのだが、
監督の今敏さんは、46歳で膵臓癌で亡くなっていた。
僕はもう彼よりも長く生きているんだなあと感慨深かった。
参考までにウィキペディアに載っている、
「パーフェクトブルー」のあらすじです。
アイドルグループのチャムに所属する
霧越未麻(きりごえ みま)は突如グループ脱退を宣言し、
女優への転身を計る。
かつてのアイドルからの脱却を目指すと
自分を納得させ(つつも事務所の方針に流されるままに)、
ドラマ出演でレイプシーンを演じる。
さらにはヘアヌードのオファーが来るなど、
アイドル時代からは考えられなかったような仕事をこなしてゆく未麻。
しかし、人気とは裏腹に未麻は現状への不満を募らせ、
アイドル時代の自分の幻影さえ見るようになる。
レイプシーンやヘアヌードは本当の自分の姿なのか。
自分が望んだことなのか。そんな疑問を抱く中、
何とかインターネットに接続して見たホームページに
自分の行動が本人の記憶以上に詳しく描写されていることに気づく。
未麻はストーカーに監視されていたのだった。
また、未麻の周辺で関係者が次々と殺される事件が発生する・・・
とまあこんな感じで、「お勉強」として映画を観たりしていました。自分にとってとても大切で「聖域」であったはずの映画に、こんな視点で取り組むようになって、少し映画というものの宝物観はうすれましたが、これはこれで自分に必要な体験だったんだと思ってはいます。
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