中央フリーウェイ

「中央フリーウェイ」

 御存知の方も多いと思うが、「中央フリーウェイ」というのは、松任谷由実の歌のタイトルである。僕は当時、福岡市から北九州市の若松に通って仕事していたのだが、毎日JRで通うのも飽きたので、ある日、休みの日に、試しに車で若松まで行ってみた。その帰り道、3号線でまっすぐ帰るのも退屈なので、495号線という、並行して走る道路を使って帰った。すると途中で、なんとなく見覚えのある道があった。「あ、このあたりはKの家の近くだ」と思った。

 Kというのは高校の同級生で、残念ながらその数年前に亡くなってしまった友達である。そのKの家には、何度か遊びに行ったし、葬式の時にも行ったのだが、ちょっとわかりにくい場所にあって、何回行っても道が覚えられなかった。確か、今走っているあたりのどこかから、右に曲がったところにあるはずだと思ったのだが、やはりその場所はわからず、そのあたりを通り過ぎてしまった。

 それからしばらく走って、気がつくと、僕はこの歌を口ずさんでいたのである。僕は特に松任谷由実のファンというわけではないが、僕たちの年代にとって、松任谷由実は一般教養の必須科目のようなもので、みんなで車でどこかへ出かけるとかいうことになれば、必ず誰かがユーミンのカセットテープを持って来ていて、たとえ好きでなくても、強制的に聞かされたものである。それで「中央フリーウェイ」も、ワンフレーズくらいなら知っているのだが、僕はそのワンフレーズを延々と繰り返して歌っていたのである。

 「なぜ俺が、なぜ今、ユーミン?」と不思議だったのだが、「あ、Kか」と思ったら納得した。大学生の頃、Kが、「ユーミンの中央フリーウェイっていう歌は、実際に東京にある道路のことを歌っていて、首都高から中央自動車道に抜けると、右側に競馬場が見えて、左にビール工場が見えるらしいよ」と言っていたのを思い出したのだ。

 まさか、K降臨か?と思ったら、なんとなく頭が重くなってきて、目を開けていられない程眠くなり、近くにあったショッピングセンターの駐車場に入って、車を停めるなりシートを倒して爆睡してしまった。まあ、若松まで行って疲れていたんだろう、ということにしておいた。

 先日カラオケに行った時に、試しに「中央フリーウェイ」を唄ってみたが、やはりうろ覚えで、ワンフレーズしか唄えず、どう考えても無意識のうちに口ずさんでしまうような、なじみ深い歌だとは思えなかった。


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