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流浪の月を読んで

★★★★★(5段階中、1番上という意味です)
読むのは二度目だったが、やっぱり面白い。今回もなかなか余韻が収まらなかった。

ーあらすじー
主人公の更紗は両親を失い、伯母の家に引き取られた。そこに待っていたのは、消えてしまいたくなるほど窮屈な日々だった。
そんな中、更紗に居場所をくれたのが、文だった。二人にとって幸せで自由な時間は、世間では
「誘拐事件」と呼ばれた。
15年後再会した二人は、再び共に時間を過ごすことを願った。この願いを周囲の人々はきっと認めてくれないであろう。
周りの「優しさ」を振り解いてでも、二人は一緒にいることを決心する。

家族でも恋人でもない二人が織りなす、新しい人間関係を描いた物語。


ー感想ー
この物語では自分の中にある「優しさ」というものについて考えさせられた。作品の中で、更紗は「被害を被った可哀想な子」というレッテルを貼られ、何度も他人の「優しさ」を受けてきた。実際は文からは何もされていない、寧ろ救われたのにも関わらず。
多くの人は、被害を受けた人に同情したり気を遣ってあげたりすることが「優しさ」だと考えている。勿論、この作品を読む以前の私も同じであった。
しかし、「優しさ」というのは他人の心を救うものでもあるが、時に心を抉るナイフのようになることすらある。例えば、他人が良かれと思って発した言葉が、更紗にとっては事実を言っても理解してもらえないことや文が悪者にされていくことへの辛さに繋がってしまった。私は、「優しさ」とは誰もが持つ感情なのに、使い方によっては天と地の差があるのかととても驚いた。
世界から弾き出されたような感覚や、自分の居場所を見つけられない孤独感は計り知れないものだと思う。
だからこそ、文と更紗のような名前の付けられない関係を持った人達も受け入れられ、自由に生きられる世界になればいいなと心から思った。これが私にできる更紗たちへの「優しさ」だと考えている。

世の中に起きているかもしれない事実を、自分のことのように考えさせられる素敵な作品。出会えて良かったなと思います!

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