『破墓/パミョ』ーアジアの境界線を引き直す
「アジアのまなざし」第3回
ホラーの肝は、境界の見せ方にある。あちらのものがこちらに来ることが恐怖の源泉であるから、境界が明確でなければ怖くない。ボーダーレスに悪霊が動き回るだけなら、全てのホラーは「ゴーストバスターズ」になってしまう。
本作において、悪霊は過去と現在の境界を越えてくる。ただし、時間の境界は目に見えないから、本作は墓や棺という具体的な境界を見せて、それを破壊することで、境界があやふやになる恐怖を演出する。
境界があやふやになっても、本作は「ゴーストバスターズ」にはならない。なぜなら、生と死、過去と現在に加えて、本作にはもうひとつの境界があるからだ。その境界とは国境である。
本作の悪霊は、日本のあらゆる残酷さを背負った、先の大戦の残党である。本作の特徴は、日本という敵を、韓国の内なる敵として描いた点にある。鬼畜日本兵を外側の敵としてではなく、日本と組んだ韓国側が招き入れた敵と位置付ける。
本作の悪霊が血族を狙う点も興味深い。本作の呪われた一族は、血縁という絶対的な境界に基づき、日本という悪霊を包摂したために、海の向こうのアメリカにいても、悪霊の攻撃から逃れることができない。
盗掘が境界を破壊する行為だとすれば、破墓は境界を作りなおす行為である。盗掘のごとく境界を踏み越え、韓国を侵略した当時の日本の行為が単純かつ暴力的なものだとすれば、もち米や馬の血を撒く主人公たちの行動は、日本と韓国の間にか細い境界線を引き直す作業に他ならない。その境界はひたすら奪う側たろうとする日本の悪霊を滅し、侵略した側が他国は自国ではないという至極当然のことを理解するスタートラインなのである。
画像は公式HPより
10/18 公開・映画『破墓/パミョ』公式サイト
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