お酒造りのスペシャリスト杜氏
お酒造りの職人、杜氏について少しお話しま
す。お酒を造る場所を酒蔵と呼び、酒蔵で働
く人々を蔵子といいます。酒造りの世界は、
昔ながらの独特な言い回しがあり、今でも一
般の方には馴染みの薄い言葉が使われていま
す。そしてお酒を造る時の最高責任者、現場
監督に当たる人を杜氏と言い、基本的に蔵元
に一人です。今でこそ変わりましたが、その
昔、1975年頃の高度成長期の頃まで、杜氏は
冬場の農家の閑散期に、秋から春までの間、
故郷を離れてまた故郷に帰るまでの間、同行
する集団の長として、留守を守る家族の生活
と率いる者たちの安全と安寧を守る重責を担
い、お酒造りの仕事を終え、皆を無事に故郷
に連れて帰ることが第一の仕事とされました
実はそれほど昔のお酒造りは過酷で重労働、
最悪の時には負傷者や亡くなる人まであった
そうで、杜氏は万が一の時の責任を取るため
常に心に刀を帯びて仕事に臨んだそうです。
凄いですね、まるで武士のような見事な覚
悟です。そしてお酒造りにおいては、蔵元に
代わり酒造りの全責任を負い、集団で活動す
る蔵子を指揮監督する権限と高い地位を持つ
存在の人物を「杜氏」と言いました。このこ
とからも解るように、杜氏とは農業従事者、
特にお米作りのプロフェッショナルです。
お酒はお米で造りますからね、お米のことを
一番良く知っている農家の方は正に適任者で
す。それに農閑期にお酒を造ることが農家の
収入源にもなり互いの利益が一致し生まれた
制度ですね。この制度が確立したのは江戸時
代中期の頃と言われています。また杜氏には
お酒造りの卓越した技術のほかに、集団の長
として人をまとめていく、人の上に立つ資質
が同時に求められました。
次回杜氏についてもう少しお話します。