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「障害者とよばれて」
コロナ前の話になるが、卒業した高校の文化祭に遊びに行った時のこと。
「障害者さんの……」
初々しく甲高い声に、ふと足が止まった(電動車椅子だけどね)。
見ると、ボランティアサークルのブースの前で、売り子の女子生徒が袋詰めのパンを両手に抱え、行き過ぎる人混みに向けて訴えている。
高校近くの作業所(今でいう就労支援施設)で作られたパンを売っているようだった。
「こちら、障害者さんが一生懸命作ったおいしいパンですよ~!」
声を枯らさんばかりに、女子生徒は繰り返す。
「障害者さん」という呼称(?)が耳慣れず、そのうえ少し面白かったので、思わずブースの前でしばらく彼女の様子を眺めてしまった。
もちろん、パンもいくつか買った。
障害者、肢体不自由者、チャレンジド。
私は脳性麻痺当事者だが、これまでにいろいろな「異名」で呼ばれてきた。障害者という呼称だけをとっても障碍者や障がい者など様々な表記があり、議論は今なおも複雑である。
英語では、いわゆる障害者は元々、「destabilized person」と呼ばれていた。
直訳すると、「(一部の)能力が欠如した者」という意味で、どちらかといえば堅苦しい表現らしい。
ただ、「能力の欠如」という表現に差別的なニュアンスが含まれているとの理由で、いつしか「handicapped person」が使われるようになった。
これで一件落着かと思いきや、ハンディキャップが一方的な表現であるという理由から、今度は「challenged」という呼称が使われるようになる。
障害というハードルの克服に「挑戦する者」という意味のようだ。
正直に言うと、私にはどの呼び方もしっくりこない。
「障害か、障碍か」という議論も、どうでもいい。
ただ、「障がい」などという中途半端なまぜ書きだけはやめてほしいと思う。
シンプルに、読みにくいから。
懸命に声を枯らしていた「パン売りの少女」は、障害者をどのように表せばいいかわからず、迷った末に「障害者さん」を選んだのだろう。
あるいは、自分なりの表現で呼びたいと、懸命に頭をめぐらせたのかもしれない。
私自身、マイペースな「障害者」として、決して気負わず、これからも自分らしく生きていこう。