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「モルモットになった男」
『Don’t die』をネットフリックスで鑑賞。「健康的な生活」にとりつかれるあまり最先端の医療技術にのめりこんでいく男の暮らしに密着したオリジナルドキュメンタリー。
起業家、ブライアン・ジョンソンは卓越したビジネスの才能によって一代にして巨万の富を手にするが、その裏では激務によって消耗する肉体と精神への後悔があった。
仕事漬けの生活で家族すらも失った彼は人生を根底から変えようと一念発起。無駄と欲にまみれたこれまでの暮らしをリセットし、ストイックな生活によって「不老不死の肉体」に限りなく近づくことを決意したのだった……。
1日に200錠以上ものサプリメントを飲み、最先端の理論に基づいたトレーニングで肉体を鍛え上げる。
だが、誰もが羨むような(あるいは眉をひそめるような)無駄のない肉体と精神を築き上げてもなお、ブライアン・ジョンソンの心の空白は満たされない。
「死なない肉体に近づきたい」
ブライアンの執着はやがて、親子間での血液交換という究極の「魔術」へとたどり着く……。
年老いた肉体を細胞ごとリセットするため、息子の血液を取り入れ、全身の機能を再生する。
理屈としては何となく理解できるが、常識と倫理の壁が立ちはだかり、やはり素直に受け入れることができない。
中世の時代には「瀉血」という治療法があったが、危険が大きすぎるという理由ではっきりと否定されている。
ブライアン・ジョンソンがどこまで本気で不老不死を目指しているのか、それはわからない。単なる「不老不死ビジネス」の一環と見ることもできるし、あるいは、一度失われた家族の時間を必死に取り戻そうとしているようにも思える。
ブライアン・ジョンソンの理論は狂気じみており、暴走している感が否めない。
やっぱり「健康のためには死にたくないよな」と、週2日はマクドナルドを食べずにはいられない私は思うのである。