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「ザ・二元論」

この世界には、2種類の人間しかいない。

「自分が意図しない点を褒められた時に素直に喜べる人間」と、「素直には喜べない人間」だ。

コンプレックスの塊のような私だが、これでも時には、関わりのある介護士や看護師から褒められることがある。

とりわけ、「指の長さ」を褒められることが多い。

私の指は人よりも少しだけ長くて細く、形が整っているようで、シェアハウスでの手洗いや入浴の際にふと、「指、きれいだね」と言われることがある。

学生時代から言われてきたから、あながち社交辞令でもないのだろう。

幼い頃から土いじりなどをほとんどしてこなかったのも影響しているのかもしれない。

「ピアニストになれそうな指だね」

と言われた時には、さすがに大げさだろうと笑ってしまった。

さて……。

冒頭の二元論に戻ると、私は完全なる後者である。

だから、指を褒められたとしても、ほとんど嬉しくない。

学生時代はむしろ、脳性麻痺特有の反り返った親指と人差し指がいびつで、コンプレックスだった。

落ち着いていると、何とかカモフラージュできるのだが、原稿書きや握手などで力が入ると、どうしても指が反り返ってしまうのだ。

親指に至っては反り返ったまま元に戻らず、物を握る時も役に立たない。

そんな裏事情があるものだから、「指、きれいだね」と褒められたとしても反応に困り、ただただ中途半端に笑うしかないのである。

そのせいかどうかはわからないが、人を褒めるのも苦手である。

うかつに褒めて相手のコンプレックスを刺激してしまったらかなわないと、ついつい言葉を飲み込んでしまうのだ。

「女性は、(意識していない点を褒められると喜ぶ)」などと、安っぽい恋愛指南書には書いてあるが、はっきり言って机上の空論だと思う。

このテクニックを使ってみたことも何度かあるが、会話がうまくいった試しがない。

それはまあ、私の褒め方が下手なのだろう。

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