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ごりまる母さんメラピークへ③(全10話)

両膝ぷるぷる。どこまで続く下り坂



Day 4 : Pangom - Najing Dingma

[歩行距離]11.75km
[歩行時間]10時間26分
[Najing Dingma 標高]2850m

トレッキング2日目。
昨日までの雨も止み、朝から素晴らしい晴天。
歩き始めると暑く、汗ばむほどの陽気。
今思い返してみると、この2日目はものすごくキツイ1日となりました。
暑さに加え、高低差の激しい道のりに気力も体力も試される日となり、特に下り坂の長さには閉口するほど。チーム皆の口数も少なくなっていきます。

下りはどこまで続くんやろう
立ちとまっては下を見て、軽くため息

木々の中、青空に映えるタルチョ

チベット仏教信仰の一つである五色の経文が書かれた祈りの旗。
青・白・赤・緑・黄の色が空・風・火・水・地の五大を表現しています。
タルチョが風にそよぐたびに読経したことになると言われており、
仏の教えが風に乗って遠くまで届きますようにとの思いが込められています。

物音ひとつしない山の中
大地を感じながら歩いてゆく

“メラピークはこちらです”


庭先で休憩させてもらっていると、家主の女性が「一緒に写真撮ってもらお」
と出てきてくれました。
人と人の心の距離感がものすごく近くてあったかい。
素敵な笑顔。

ジョンに異変が。。。

お昼ご飯となり、休憩所に着いた頃には暑さと疲れで皆、かなりへとへとの状態でした。
帽子をぬいで蛇口の水を頭からかぶり、蒸しかえった登山靴と靴下も脱ぎすて、裸足になってやっと心も体も落ち着いた頃です。
いつも元気で明るくチームのムードメーカー的な存在であるジョンが「僕、お昼ごはんいらんわ」と元気なく言いました。
どこかしら顔色も悪そうです。
私も暑さから昼食はほとんど食べれませんでした。
今日の目的地であるNajing Dingmaまでは3時間以上の道のりに加え、下ってきたぶんここからはずっと登りが続きます。
1時間ほど休憩してもジョンの体調はすぐれず、これ以上待っていると目的地に着く前に夜になってしまうということで、ジョン・ロブ・パサンの3人を残して私たちは先に出発することとなりました。
一緒にジョンと残り、彼の荷物を担ぐ事を決めたロブ。
あの時、ロブが「僕らはチームや。ジョンは必ず上まで連れて行く。誰一人ここには残さん。
全員揃って登頂するためにここに来たんやから」と言った言葉は今も私の胸に残っています。

夜7時、Najing Dingmaに到着

一足先に今晩のロッジに着いていたポーターの皆さんがポットにあったかい紅茶をいれ、懐中電灯などの荷造りをし、体調の悪いジョンを助けるべく暗闇の中をトンボ帰りに山を下って行きました。

ジョンは大丈夫だろうか?
心配で心配でロッジの玄関口をジョンが入ってくるのを祈るような気持ちで何度も何度も見ていました。

ジョンと皆が帰ってきた!

それから2時間ほど待ったでしょうか。
ロッジの玄関口に人影が見え、ジョンや皆が帰ってきたのがわかりました。
本当に良かったとホッと胸をなでおろし、うれし涙がでできました。


ジョンの決断

皆がそろって夕食を食べ終わり、お茶を飲みながら談笑していた時です。
ジョンが「皆、ちょっと聞いて」と切り出しました。
「今の僕の体調では到底、この登山を続けることはできない。
ものすごく辛いけど、ここが僕の最終地点になる。」
と言い終えた途端、ジョンの目から涙がこぼれ落ちました。

1年以上前から一緒にトレーニングをしてきた仲間。

そして皆、仕事と家族との時間を両立させながら準備をしてきました。
それがどれほど大変であったか分かりあっているだけに、苦渋の決断だったことは容易に想像がつきました。
「まだ帰って欲しくない。どうにかして続けられないか」という気持ちと「彼の決断を尊重しなければいけない」という相対する気持ちの狭間を行ったり来たり。
沈痛な面持ちで夜が深まっていきました。

つらい話し合いの後
悲しみを笑顔で隠して
これがチーム5人全員揃った最後の写真となりました
(左からKen, 私, Andy, Rob, John)

まとめ

トレッキング開始、2日目。
体力的にもきつかった1日の終わり。
ジョンがチームを離れるという決断をした日。
「何が起こっても不思議ではない」という事を身をもって体験した日。

この③は悲しい出来事が起こるとわかっていたので、今こうして書き終えた後も、あの日の記憶が鮮明に甦り悲しみの余韻に包まれています。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

もしよろしければ引き続きお付き合いくださると嬉しいです。