見出し画像

自作品の紹介をさせていただきます【コラージュエッセイ】

足を運んでいただきありがとうございます。
紅石紗良(くれいし さら)と申します。
4度目の投稿になります。

crèche(クレイシ)の名前でコラージュ作品(デジタル)を制作しています。

まだ30作ほどしかありませんが、自分で作った作品の1つをnoteで投稿させてください。


カタコンベ(最初の題名は「奇跡」でした)

今のところ、自分で一番気に入っているコラージュ作品。
そして使用している素材数も3つ(背景、女性、零れる氷)だけ、と一番少なく仕上がりました。

この2人の女性の表情がかわいくて素敵で...
フォルダの最初の方に保存されていた彼女たちを目にするたびに、
(いつかあなたたちの光りが照らす先を見せてあげるからね!)
と語り掛けていました。

彼女たちはMuseum für Kunst und Gewerbe Hamburgというドイツの美術館のアーカイブから来てくれました。パブリックドメインです。
撮影者はÉmile Joachim Constant Puyoという19世紀後半から20世紀はじめに活躍した方。1900年に発表された作品で、元のタイトルは「聖歌」とのことです。

まさしく聖歌を捧げている最中の二人。
コラージュの手法でよく、頭部や身体の一部を動物や他の物体に置き換えることがありますが、そんな技が煩わしく思われるほど完璧な二人でございました。

対するのは、The New York Public Libraryからやって来た双眼鏡を構える顔の見えない男性。(こちらもパブリックドメイン)
彼を含んだ背景写真も、聖歌の二人と同時期に出会った古参です。
彼が双眼鏡で何を見ているのか?
最初、最奥の海に浮かんでいる女性の裸体(海から女性の身体の一部が生えていたりすることがコラージュではよくあると思います。)なんかを覗き見しているのかなとやや滑稽さを込めて考え、いろいろ素材を配置してみたがしっくりこないし双眼鏡の視線も合わない。
しばらく保留ということで、彼も「背景」のフォルダの最初の方に待機してもらっていました。

そうこうしているうちに、どんどん新しい仲間がやってきては去っていく。

いいかげん、闇雲に双眼鏡を巡らさせるのが憐れに思われてきた。
彼にちゃんと目標を与えようと、ある日思い立ちました。

今度こそと背景写真に向き合ってからはまず、海に人を配置するのではなく、下方の黒い部分に配置してみようと考えました。まずは誰でもいいからちょっと来てもらおう、ということで「彼女たち多分、ここは少し苦手と言うだろうな」と思いつつ、前から活躍の場を与えたかった聖歌の二人に来ていただくことにしました。

すると、不思議にしっくり来た。両者を立ち合わせる前は全く予想もしなかったが、画質が合っている!ぴったりしている!
しかも現代的な制服姿に帽子という出立ちの男と、薄くヴェールを被ったギリシア風の出立ちの女性という組み合わせの意外さが、シュールレアリスム的な面白さの可能性を漂わせている!

人物の素材を下に配置することで、男の挙動にも変化が見えました。彼は覗き見などではなく、立派に「見る」ことを己の業務としていたのです。下劣な不審者からお国の監視官へ出世したのね、おめでとうと私は祝福しました。

冷然と職務をこなす監視官の男。
純真に歌声を響かせる聖歌隊の少女。

——上層部から渡された監視リストには、社会不安を煽る危険因子として、聖歌隊の名称が載っていたのかもしれません。

これで登場人物は十分揃った。だけどコラージュ作品としてはまだ足りない。
画面の左上です。海の上には何を置こう?
ここで私は悩みに悩み、へとへとになってしまいました。あともう一息なのに、ようやく古参たちを日の目に出せそうなのに、ここでまた保留になってしまったらどうしよう……
息抜きしようと私は新しい素材集めに赴きました。

状況を打開してくれたのは偶然性でした。
私的利用できる素材を無作為に選んでは切り取り、切り取っては順番に海の上に置いてみました。
そしてフリー素材サイト「unsplash」で出会い「何かに使えるかも」程度の気持ちでダウンロードしたグラスとアイスキューブの画像は、やはり予想外の情景を見せてくれました。

(これ、隕石に見える!)

私は海の上に何かを載せるか、あるいは生やすことばかり考えていたため、「空」にはまったく注目していませんでした。

「空から異物が降って来る」

グラスとアイスキューブの画像を置いた瞬間、作りかけのコラージュにスピード感が忽然と現れました。併せて、監査官と聖歌隊の両者の関係にもより深みが増したような、物語性が見えるような……

監視の行き届いた街中で、二人が普段どんな服を着て、どんな表情で過ごしていたのかは分からない。けれど今は二人だけの洞窟で無上の幸福と身を寄せ合っている。暗くて湿った海岸に掘られたカタコンベ。狭いところだけれども、大好きな人に捧げる歌があれば何時間でも何日でも過ごせる場所。……そしていつかは見つかってしまう場所。
幸福の終わりはすぐそこまで迫っていた。監視の目がすぐ背後まで迫っていた。官吏用の黒光りするブーツの靴音が歌声に混じっても、どれだけ海風に曝されたヴェールが冷たくても、彼女たちは歌と祈りを捧げることを止めない。
無垢な二人の祈りが届いたのか、忽然と、音もなく、かつて見たこともない巨大な星がするりと落ちてくる。監視官は二人の正確な居場所を探るために双眼鏡を覗き込み、まだその接近に気が付かない。

揺蕩うように歌う彼女たちもまた気が付かないだろう。自分たちが起こした奇跡に。数秒の後に自分たちを包み込む温かい波に。

監視官の彼には申し訳ないけれども、どちらが主役かとなれば、聖歌隊の二人だと私は考えてしまいます。

彼女たちの光りと祈りが起こした「奇跡」。
いや。それとも、隕石が落ちて来ることは元より決まっていて、彼女たちは幸運にも良いタイミングで幸せな終りを迎えられただけでしょうか?
そういう意味での「奇跡」でもあるかもしれません。

途中から小説になってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました!
またこういう「アート+制作話+小説」みたいな記事を書きたいです。




いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集