「好き=話題」をつなげて課題解決力の高い体験をデザイン 「バイラルエンターテイメント」クリエイティブ
広告は邪魔、簡単にスキップされてしまう、そんな時代のクリエイティブに必要なことって?
広告が邪魔な存在だと思われてしまったら、クリエイターとしては、とても残念なことです。でも、魅力のない広告はいとも簡単にスキップされてしまう。これは私たちが受け止めなければいけないリアルだと思います。
そんな時代でも、人々にちゃんと届いて、企業の課題を解決できるクリエイティブとは?ズバリその答えの1つが「バイラルエンターテイメント」クリエイティブっていう考え方だと、勝手に思っておりまして。。。
申し遅れました。私、クリエイティブディレクターの守田健右と申します。ソリューションアイデアの専門店街「ADK CREATIVE MALL」で、その「バイラルエンターテイメント」というコンセプトを掲げてお店を切り盛りしております。
なぜいま私が、「話題性」と「エンターテイメント性」にこだわってクリエイティブと向き合っているのか。少しだけお話させていただければと思います。
話題にならない=誰にも届かない=課題を解決できない
20年以上クリエイターをやらせていただいていると、広告賞をいただく機会に恵まれたりもします。褒められるより、叱られたい体質の私でさえ、賞をもらうとやっぱりうれしい。家に帰ってこっそり妻にドヤ顔したり、いつもよりちょっといいお酒を飲んだり。
でも、賞をもらった仕事が一番うれしい仕事かと言われると、実はそうでもなかったりする。残念なことに、賞を獲得しているクリエイティブの中には、業界の中だけで評価されていて、世の中にはそれほど届いていないものも意外と多いんじゃないかなと、個人的には思っているからです。
それよりは、世の中で大きな話題になって、「みんなの心を動かすことができたな」「誰かの役に立てたな」「背中を押せたな」って実感できるクリエイティブを届けられた時のほうが断然うれしい!
興味のあること以外スキップされてしまう時代だからこそ、世の中で話題にならないクリエイティブに課題を解決する力はないと思っています。どんなに素晴らしい映像でも、グラフィックでも、ターゲットに届かなければ力を発揮することができない。
クライアントの課題をきちんと解決するためにも、「話題性」と、話題にするために必要不可欠な「エンターテイメント性」が、とても重要だと考えています。
日本中をしあわせにするCMシリーズから、世界中がざわつくガジェット開発まで。
自分の仕事をふり返っても、クライアントの課題解決に大きく貢献できたクリエイティブはターゲットの24時間やSNSのタイムラインで話題になったものばかりです。
UHA味覚糖「#ぷっちょあーん」キャンペーン
例えば、UHA味覚糖の「#ぷっちょあーん」キャンペーン。商品をそのまま広告するのではなく「ぷっちょあーん」という遊びに変えて世の中に再定義しました。
人気女優さんにぷっちょあーんしてもらえる気分を味わえる「ぷっちょあーん4Dゴーグル」はターゲットのタイムラインを席巻するだけでなく、自作のゴーグルを好きなキャラにつけてシェアしたり、ゴーグルを使ったゲームをプログラミングして楽しんだり、みんなが「ぷっちょあーん4Dゴーグルをいじって遊ぶ」という現象を巻き起こしました。
その現象は海外にまで広がり、YouTuberがゴーグルを自作するなど、大きな話題に。日本向けのキャンペーンだったにも関わらず、世界中で売上がアップするという異例の事態になりました。
格闘技・プロレスイベント「PRIDE&RIZIN&ハッスル」
20年近くクリエイティブディレクションに携わらせていただいていた格闘技&プロレスイベント「PRIDE」「RIZIN」「ハッスル」。
ファンの方々と絆を深めながら、「誰もが知っている流行語」や「子供からスポーツ選手、政治家までもがポーズを真似する社会現象」を生み出しました。話題になったキャッチコピーは漫画やTV番組などさまざまなコンテンツでオマージュされるまでに。
さらに、格闘技が日本の年末の風物詩になるなんて!「PRIDE男祭り」を立ち上げた当時は想像もつかないことでした。
明治安田生命「フォトコンテスト&企業CMシリーズ」
明治安田生命の企業CMシリーズでは、フォトコンテストの審査員から企画、コピー、演出までを長い間務めさせていただいています。
ありがたいことに、「毎年楽しみにしています」「感動しました」というメールやお手紙をたくさんいただきます。
フォトコンテストを通して、世の中の人々と「しあわせ」についていっしょに考えながら、広告の枠を超えて、企業と人の絆が深まっていく。とてもしあわせな仕事のひとつです。
企業からの一方的な発信ではなく、喜びや感動を共有し、ブランドとターゲットが絆を深めながら、話題を共創していく。それが、私が考える「バイラルエンターテイメント」クリエイティブの理想の形です。
例に挙げさせていただいた3つのクリエイティブは、課題もターゲットもトーン&マナーも全く違うものですが、すべてに共通して大切にしていることがあります。
❶スマホ、ゲーム、音楽、アニメ、人間のあらゆる興味と限られた24時間を奪い合うだけの求心力があるか。
❷自ら検索してでも体験したいと思えるクリエイティブか。
❸好き!を生み出すクリエイティブか。
どういうことか、少しだけ詳しく紐解いていこうと思います。
❶スマホ、ゲーム、音楽、アニメ、人間のあらゆる興味と限られた24時間を奪い合うだけの求心力があるか。
広告という枠の中だけで発想しない。
会社に入った頃は、他の広告の中でどうやって目立つか、を追求していました。でも今は違います。広告的に新しいとか、広告的に目立つというのはあまり意味がないと思っています。
なぜなら、人は、膨大な情報やコンテンツの中から役に立つものや興味のあるものだけを取捨選択しているからです。スマホ、ゲーム、音楽、アニメ、等々、他の広告なんかよりもはるかにチャーミングな強敵と、人間の限られた24時間を奪い合わなければならない。もう他の広告なんて、相手にしている場合じゃない(涙)!
もちろん、ゲームや音楽に取って代わろうという話ではありません。ゲームをする手をちょっと止めてでも、あるいは音楽を聴きながらでも、体験したい!と思えるクリエイティブか。
広告という狭い枠の中ではなく、ターゲットのあらゆる興味対象と限られた24時間を奪い合う、という広い視点で発想しようといつも心がけています。
❷自ら検索してでも体験したいと思えるクリエイティブか。
一方的にメッセージを発信しようとしない。
企業からの一方的な発信は、すべて無視される。それくらいの気持ちでいつもクリエイティブと向き合っています。
メディア特性を活かして、ターゲットに的確に当てていくことも確かに必要ですが。友人などからタイムラインにシェアされることで興味が湧き、「自ら検索してでも体験したくなるクリエイティブ」を届けることをいつも心がけています。
好きな動画を見ている合間に邪魔されて発信されるクリエイティブよりも「友達が好きって言ってる!」「なんか盛り上がってる!」もののほうが「自分も体験してみたい!」って思わせる力も強いし、共感性も高い。
届く人数も大切ですが、届き方の質のほうがより大切だと考えています。
❸好き!を生み出すクリエイティブか。
好きな相手のことは自分からもっと知りたくなるし、好きな相手からのメッセージには耳を傾けたくなる。
いろいろなお話をさせていただきましたが、シンプルに言うと、24時間を勝ち抜くためにも、検索してでも体験したいと思ってもらうためにも、「好き!」って思ってもらうことが結局重要だったりします。
いっしょに時間を共有して、好きだな、共感できるな、って思う人のことは自分からもっと知りたくなるし。好きな人からのメッセージには自然と耳を傾けたくなる。
ただ言いたいことだけを言って、仲良くなるプロセスも大切にせず、結果だけを求める人は好きになってもらえない。
そう、人と人、ブランドと人、はいっしょだと思うんです。
でも、好きになってもらうのって、難しいですよね。。。大人になると好き!ってあまり言われなくなりますし。。。(妻からでさえ)。それでも、好きになってもらう努力をし続ける。誠実に。愚直に。
今こそ「好き!」が世の中を動かす原動力なんじゃないかなと。個人的には思ったりしています。
ワクワクする時間、楽しい時間をみんなと共有する。それってエンターテイメント。
ターゲットのくらしやタイムラインで話題になる。音楽、ゲーム、アニメといったコンテンツと24時間を奪い合う。という視点に立つと、クリエイティブの発想はまったく違ったものになります。
一方的に「広く告げる」なんて発想はなくなり、ターゲットといっしょに楽しもう、感動しよう、時間を共有しよう、という気持ちになる。
商品特徴やブランドメッセージを「発信」するのではなく、楽しんだり、ワクワクしたり、感動したりしながら、「体験」してもらおうという発想になるのです。
それってつまり、エンターテイメント。
企業の課題解決のために、世の中をしあわせにするために、みんなをワクワクさせる、感動させるエンターテイメントを届ける。それが、今こそ私が必要だと考える「バイラルエンターテイメント」クリエイティブです。
独断と偏見、感謝と宣伝。
すごく身勝手な独断と偏見に長々とおつきあいいただき、ありがとうございました。「このnoteがエンターテイメントになってねえよ」って言われないかだけが心配です。こんな考え方の奴もいるんだな、くらいの感じで、頭の片隅にでも置いていただけたらうれしいです。
●自分の会社のクリエイティブがターゲットに届いている実感がない。
●マスだけではアプローチしづらい若い世代の日常やタイムラインでブランドを顕在化させたい。
●ブランドのファンをつくりたい。広告の枠を超えた関係性を構築したい。
●世の中を騒がせたい!楽しませたい!感動させたい!
という方がもしいらっしゃいましたら、ぜひご連絡を。いっしょに共創しましょう。
業界初!ソリューションアイデアの専門店街「ADK CREATIVE MALL」には、さまざまな専門性を持った課題解決のブレーンが私以外にもたくさんいます。
まずは、その専門店の店長たちがリレー形式でお届けするnote「ADKクリエイティブ・ノート」。
今回のnoteがおもしろかった方も、そうでない方も。私とはまったく違う個性を持った店長が次々と登場しますので、このnoteに懲りず、ぜひ次回もお楽しみに!
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Creative Director
守田 健右 / Kensuke Morita
日本中が感動するCMの企画・演出。ギネス認定されたフォトコンテストの審査員。日本の年末の風物詩となった格闘技のクリエイティブディレクション。世界中をざわつかせるVRガジェットの発明。誰もが知っている流行語の発信。広告賞受賞に加え、広告の枠を超えて話題となるクリエイティブを創りつづける。
趣味で20年以上、棚田で米創りを楽しんでいる。近年はオリジナルの日本酒創りを、酒米を育てることから。カヤックフィッシングとキャンプ、格闘技観戦を少々。