ジャケットとポケットの中

家から駅まで送るのに

車で10分かからない道を

長い時間をかけながら

二人並んで歩いて向かう

歩道の狭い坂道を下りて

小さな公園を通り過ぎ

川に架かる立派な橋を超えたら

駅へと続く坂道を登る

歩道を照らす街灯は繋がる影を映し出す

彼女の手は僕のジャケットのポケットの中に

いつか聞いたあの歌みたいな瞬間は

想像以上に暖かくて

街の灯りと賑やかさに

ピタリとはまるようだった

ポケットの中に詰め込まれた

二人分の温もりに守られながら

冷たい風をやり過ごす

楽しみの尽きない時間の中で

歌を歌って歩いた無邪気な恋は

まっすぐな愛情を繋いでた

それはポケットの中の温もりと共に

身体に残り、その瞬間に溶けていった

それはいつかの思い出となって

姿を変えてしまっても

身体とその記憶の中に消えない余熱を残していた


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