MASA

物語や詩などを中心に色々なことをマイペースに投稿しています。

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マガジン

  • 短い物語

    作成したショートストーリーをまとめています。

  • スポーツマガジン

  • 詩集「イロイロナコト」

  • 超短編集「見上げた夕焼け空の下」

  • 風景写真集

最近の記事

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コントラスト①

 燃えるような八月の暑さは夕方になっても衰えることはなかった。駅の近くにある少年の銅像の前で6時半に待ち合わせという話だったのに約束の時間を30分以上過ぎても彼女はやって来なかった。  またか、と思い誠はタオルで流れる汗を拭ってからぬるくなったスポーツドリンクの残りを一息に飲み干した。日も傾き始めて暗くなった空の端に星がうっすら瞬いているのが見える。  駅の周りは年に一度の夏祭りということもあってたくさんの人が行き交い賑わっていた。同じように待ち合わせをしている人もそこか

    • 夏の背中

      毎日毎日暑すぎて 日々を過ごすことも一苦労 仕事や勉強も手に付かないくらいの 苛烈な夏 横並びにならない高い雲が 世界の広さを教えてくれるけれど やがて青空の下に映えている 緑の鮮やかさにも飽きてきて ただただ逃げ場のない暑さに うんざりとした だけど毎年毎年不思議に思うのは あの強烈な季節が去った跡を 名残惜しく思ったりして 静かに暮れゆく季節の中で 茹だる思い出につい触れてしまうこと それこそ少しの愛おしさを覚えながら そんな夏の背中に想いを馳せる 曇

      • 旅の行方

        ここは列車を待つホームの上 列を作る人々はそれぞれがそれぞれの目的地を目指して その迎えを待っている 表示された行き先と同じ切符を片手に握り絞めながら じっとその時を待っている 沈黙の上に乗車の合図が鳴り響くと 彼らは迷いのない足取りで車両の中へと消えていく 気が付けばそんな後ろ姿を何度も何度も見送って いつの間にか空となったポケットの中を弄りながら 失くした切符を探し求め続けていた そんな待ちぼうけの人影は 真っ直ぐ前を見つめる列から外れてチラホラと

        • 「夜空の満月」

          夜の暗がりに溶け合った しなやかな黒が時折輝きを見せながら うねるように目の前を過ぎていく 一瞥する瞳は満ち足りた月のようで 媚びることもなく独りを生きる凛々しい後ろ姿は 隠し切れない愛らしさを道に残し去っていく 塗り潰された物陰の闇に重なる直前 スラリと伸びた心の声は 右へ左へふわりと揺れて 潔い良い挨拶を一つ交わしていった “さよなら”なのか“それじゃ”なのか 声のない気持ちの揺らぎは、きっと自分だけに正直で 他人には曖昧な、いじらしい響きを残す

        • 固定された記事

        コントラスト①

        マガジン

        • 短い物語
          15本
        • スポーツマガジン
          15本
        • 詩集「イロイロナコト」
          52本
        • 超短編集「見上げた夕焼け空の下」
          6本
        • 風景写真集
          14本
        • 連載物「コントラスト」
          13本

        記事

          詩 月模様

          満ちては欠ける下り坂 だけど欠けては満ちる上り坂 寄せては返す波のように 何度も何度も繰り返し 崩れて戻ってと忙しなく 満たされる時はほんの一時 だけど、だからあんなにも 巡る夜に灯る明かりは 次第にすり減り 満ちる歩みが再び始まる どれだけ時間が掛かるのか どこまで歩けば届くのか 夜空に噛まれた虫食いは暗い影を残すもの だけど明かりはいつもでもそばに いつだって始まりと終わりを過不足のない 満たされた形で照らしている

          詩 月模様

          #3胸に響いた楽曲「夏鶯は憂の報せ」tsukinimade

          夏の終わりに配信されたtsukinimadeの新曲「夏鶯は憂の報せ」 初めてこの曲を聴いた時の印象は「とにかく余韻が綺麗」ということだった。 特に曲終わりの最後の抜け方は、風が吹き抜けた後のような爽快感と夏の夕暮れを感じるノスタルジックさを残しているように感じて、とても心地良い余韻として響いた。 だから何度も繰り返し聴いてしまう。それくらいの美しさを感じられる一曲だと思う。 また、個人的にtsukinimadeの中で好きだと感じる要素の一つとして、波の音や風鈴の音など

          #3胸に響いた楽曲「夏鶯は憂の報せ」tsukinimade

          詩 宙色の夜風

          冷たく染まった空から溢れる澄んだ空気は 寝静まった街に降る 高さを報せる宙色の風には 遠い記憶と季節の匂いが溶けている 水底のように静かな夜は 記憶の海へとダイブして 青い風にさらわれながら 高くて深い夜を舞う カーテンを押し除ける月光が 独りの部屋を訪ねれば どこまでも行ける想いを連れて 銀色の星海まで駆けてゆく いつか夢見た列車と共に 遙かな夜を感じながら

          詩 宙色の夜風

          詩 タイムマシン

          少し明るくなった夕暮れと風 穏やかな気配と春の匂い 擦り切れるほど回した「耳をすませば」 星を焚き付ける虫の声 そこには記憶が詰まってる 触れれば開く蕾のような 胸に残った記憶の跡が 巡る季節と世界に残ってる それは旅する身体を何時でも帰す 忘れずに光る思い出の楔 それに触れるだけで、それを感じるだけで 何時でもその時へ、何度でもあの時に そして豊かな時間は再び巡り あの頃へと巻き戻る 遡れぬ身体はそのままに 想いだけが、過ぎた時を超えていく

          詩 タイムマシン

          詩 ルナ

          煌めく太陽にはなれなくて 脇役なのかもしれないけれど 暗い夜を助ける灯りとなって 陽の沈んだ世界を照らし出す 華やかな陽だまりは作れないけれど 想いを託すような光を添えて 誰かの夜を守れるように 暗く深い空に咲く 暖かい日差しが照らすまで 独りの色を払うように あまねく届く青い光は 窓から部屋へと伸びていき 一人の夜と手を繋ぐ 欠けても満ちる宙のライトは 不屈の姿で晩を守って それぞれの物語りを照らし出す 休息を見守る灯りはいつも 心を耕す光

          詩 ルナ

          詩 あめ玉

          ご馳走も食べ過ぎたらただの一食になって 大好きな曲もそれだけでは摩耗する 愛情も過ぎれば押し付けになって 求めてばかりじゃ枯れてしまう だからちょうど良い具合にゆっくりと 色んな角度から整えて 過不足のない形を描き出す ちょうど舌の上で転がるあめ玉みたいに まん丸と満たされた形は 胸の中でゆっくりと 人と人の間で少しずつ 甘く穏やかに溶けてゆき 優しい色を残してゆく

          詩 あめ玉

          バンドエイド

          ささくれた指にバンドエイド これ以上悪くならないようにと ずっと、そばで守り続けて 外敵から傷口を庇っては 良くなることだけを想ってる 傷を塞ぐバンドエイド 子供の頃のおまじないも もう効かなくなって 簡単に痛みは引かなくなった だからそれごとくるりと巻いて 一人の夜を守ってる 今日の1ページにバンドエイド 明日も変わらず歩けるように バンドエイド いつかそのことを忘れるまで 時間が洗ってくれるまで その為にと生まれた優しいカタチは 最後の時

          バンドエイド

          #2 胸に響いた楽曲 「あのさ」 berry meet

          緩く切ないメロディーにのろたくさんの哀愁ある高音が心地よく響く、耳障りの良い優しいバラードソング。 人気沸騰が予想されるスリーピースバンド「berry meet」の歌声は今後広く聞こえてくることになりそうだ。 甘すぎず悲観的になり過ぎない落ち着いた情緒を感じさせる詩の中に歌声とメロディーで切なさを注ぐ。 切ないけど優しい、悲しいけれど温かい、そんな相反する感情が混ざり合ってなんとも言えない心地良さが生み出されている。 奇を衒った訳でもなく、キャッチーさを押し出す訳でも

          #2 胸に響いた楽曲 「あのさ」 berry meet

          #1 胸に響いた楽曲 「彗星よさらば」 tsukinimade

          海の底と星空が重なるような、冷たく透き通った世界観が織りなすメロディーに切実な詩が刺さる繊細でとても美しい一曲。 ボーカルのRINOさんの歌声の美しさとコンポーザーのSyoさんが生み出す幻想的で澄んだメロディーが、過不足なく混ざり合って深く綺麗な世界が作り出されている。 SNS隆盛のこの時代、歌唱力と世界観に安定した魅力のあるこの楽曲には一気に人気を博す要素が詰まっており、その可能性がひしひしと感じられる。 現時点で既に多くの人に聞かれている状況ではあるが、楽曲のポテン

          #1 胸に響いた楽曲 「彗星よさらば」 tsukinimade

          電池の残り

          ふわふわな毛で覆われた柔らかな体を抱き上げる トクトクトクと素早く脈打つ鼓動のリズムが 温もりと共に染み渡る あぁそんなに急がないで。 喉を鳴らして埋める身体を撫でながら どうしようもない速度を時折嘆く 30億回。 私たちの燃料にもそれなりに決まった回数があるように 脈拍は命を消費する 小さいものほど駆け足で、大きいものほどのんびりと 同じ今を生きながら、違う時間を生きている だから待ってと時折心の中で嘆いてる 止まらないカウントを嘆いてる けれどそ

          電池の残り

          詩 一周の狭間

          深夜2時、まだ深い夜の底 まだ大丈夫、まだ大丈夫 辺りは静かな闇の海 何もかもが遠くに沈む 夢見心地の籠の中 けれどひとたび針が巡ればすぐそこに 今を報せる現実が嫌味なくらい正確に 現状を暴きながら顔を出す 深夜3時、始まりの声はすぐ近く あっという間に後がない 明確な事実は刻一刻と迫り来る 夜明けはもうすぐそこに だから一順する前の世界のあなたに届けたい 暗闇の余裕は幻だ 暗がりの向こうで世界は常に加速する 見えないところで着々と 照らされる前

          詩 一周の狭間

          ほんの少しの

          「魂の重さってどのくらいか知ってますか」 吊り下げられた照明から落とされる暖色の灯りに染まったテーブルを挟んで、後輩の関根ナオコが上目遣いで尋ねてきた。 「確か21グラムじゃなかったっけ」 「おぉ、才川さんは博識ですね。本とかよく読むタイプですか」 「本?いやいやマンガで目にしたことがあるだけだよ。それにその説は眉唾物でしょ」 「でもロマンがあると思いませんか。私も才川さんもあのテーブルの見知らぬ誰かも最後には同じ質量を失うなんて」 「うーん、でもさぁ・・僕と関根

          ほんの少しの