レールの外

音を立てながら揺れる箱は

十色の運命を乗せてゴトゴト進む

あなたは、あの人は何を目指して

どこへ行くのだろう

向かいの客がふと口を開いて

「どこまで行くのですか?」と尋ねてくる

どこまで?

そういえばどこを目指していたのだろう

途中までは確かに覚えていたはずの

目的地はまるで幻のように

頭の中から消えていた

いつから見失ってしまったのか

どこまでも進む鉄のカゴは

そんな気持ちを置き去りに見る見る景色を流していく

それを眺めながら揺られていると

目的地を逃したような

乗り過ごしてしまったような気がしてきて

怖くなってそこから降りることを決めると

降り口で車掌に切符を渡す

「もうこの切符はご利用いただけませんがよろしいですか?」

機械みたいに話すその男に黙って頷き

そこから降りると下りのない列車は

人々を運んで遥か先へと遠ざかって行く

降りた先の無人の駅を抜けた

何も無い閑散とした場所で

失くした何かを探し求めながら

人影の無い道の上を自分の足で歩いていく

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