新規事業・DX化推進で起こる問題10選 -実践の現場から-
クレイジータンクは、企業や個人からの依頼を受け新規事業の立ち上げやDX化推進などのクリエイティング事業を担っています。昨年から1年かけて取り組んできた内容を「クレタン式仕事術」として記事にて公開しています。
読んでいただいた方には、もしかしたらクレイジータンクが関わる新規事業立ち上げやDX化推進を含むクリエイティング事業は、すべてが順当にうまくいっているように見えているのではないかと思います。
事実はそうではありません。
失敗は成功の母、と言われるように、実際は各現場で起こるさまざまな課題から学び、組織の知見にし、解決策を模索してきました。そしてこれだけは言えます。
うまくいかないことがあったからこそ成功に近づいた
クレイジータンク事業の大半が「ヒト」を相手にする仕事です。DX化推進においてはデジタルツールを多数活用するケースがありますが、ツールを使うのは「生身のヒト」ですからやはりヒトに関する問題が多数発生します。
全てをお伝えすることはできませんが、新規事業や会社変革を起こそうと考えておられる方向けに、実際にクレイジータンクが対峙してきた「こういう問題が起こる!」事例10選ご紹介し、参考にしていただければと考えました。
行動と実践の中から生まれる問題と向き合ったクレイジータンクの事例集をぜひご一読ください。
1.モチベーションは秋の空
モチベーション:「やる気」「意欲」「動機」などの意味で用いられる表現。主に「行動を起こす契機となる刺激や意欲」といったニュアンスで用いられる。
モチベーションはどんなことをする時でも必要となる気持ちのガソリンのようなものです。社員のモチベーションを可視化、など、昨今は多くの会社でモチベーションに関する議論がなされています。
こんなにも様変わりするものを知らない、と感じるほど人のモチベーションは変化します。昨日まで「よし!やろう!」と言っていた人が、翌日には「自分の役回りが分からない」と言い始めることも珍しいことではありません。
まさに女心と秋の空ならぬモチベーションは秋の空。
2.無形の価値を生かせない、奪い合う、搾取する
クレイジータンクは"発想"を商品価値としてクライアントワークをすることが多いのですが、ある時お客様からこんなことを言われたことがあります。
「実態のないものでビジネスをするって怖くないですか?」
私たちとしては、これからのビジネスでは、物質を売るよりも“発想”が重要視されると未来予測していたので返答に困りました。これは多くの会社で無形の価値をどう評価するかまだまだ難しい問題なのだと感じた出来事のひとつでした。
社員一人が良い意見を言ったとしても、その価値がしっかり評価されなかったり、価値ある意見をしっかり活かしきれないケースが多数見られます。会社は「意見」や「発想」という無形の価値では評価が難しい場合が多いからでしょう。その意見や発想が最終的にビジネス形になった実績が重要視されます。
また、無形の価値が評価の土台にのる場合には、その価値の奪い合いすら発生してします。日本人特有?とも言われる「ちょっと話(相談)を聞かせてほしい」という無形価値の搾取もよく見られます。
どれも「無形の価値」への意識の低さことが影響しているものと想像します。
3.嫉妬は結局自分を苦しめる
誰であっても自分より有能であったり、誰かが評価されたりする姿を見ると、辛く感じることがあると思います。その気持ちの状態を"嫉妬"という言葉で表されますが、新規事業の推進の際、表面化するかしないかは別として高頻度で出てくる問題だと思います。
そのような状態を目にするたびに感じるのは、本質的な意見交換ができなくなりプロジェクトにとって損害になる、イコール会社にとっても損害になるということ。さらに、嫉妬している人自身が一番苦しそうだということです。
クレイジータンク内ではよく「本質的なオリジナリティを持つことができれば人と比べることができなくなり、嫉妬心もなくなる。そしてそれは誰にでも持てる価値である」と話しています。
どんな小さなことでも良いので、自分のオリジナリティを見つけ、それを周りがしっかり評価することが大切だと考えています。自分のオリジナリティを見出し、育てることは簡単ではありません。周りがいくら評価していても、本質的なオリジナリティに辿り着くまでは時間がかかるものです。急がば回れ精神で「時間はかかるものだから着実に積み重ねていこう」と声かけしながら、本人も周りも長い目で見ることがとても大切なことだと考えています。
4.抽象度の高い意味合いでは動きにくい
人は生まれてから社会人になるまで、基礎学習を続けます。子どもの頃から「良い大学に入るため」や「自分が働きたいと思う会社に就職するため」に学習してきたという方が多いかもしれません。
しかしみなさんにとって「社会人以降の学習」とはどのようなものを想像するでしょうか。たとえば資格を取ることや業務に生かされる講演を聞きに行くなど、ある程度「目先の具体的な結果が見えるもの」ではないと学習に結びつかない人が多いと感じています。
これ自体は間違ったことではありません。しかし、少しでも抽象度が上がる課題に遭遇するとたちまち手や思考が止まってしまう人が多いのもまた事実です。
新規事業を進めるうえでは「わからないこと」に多く出逢います。社会や会社で未だ一般化されていないことほど「新規」の可能性を秘めていますので、新規事業メンバーは常にこの抽象度が高い事案とぶつかっていかなくてはならないのです。たとえば「今後はよりデジタル分野の発展により、集客はメタバースに変わる可能性やNFTを活用するケースなども出てくる」といった言葉に出会った際、それが何を意味するのか調べ学習することが大切でしょう。
こういった一般社会に実装されていないものを検討のテーブルに乗せ、自発的に話していかなくてはならないのです。しかし「わからない」ものに出逢うと人の学習意欲は、具体的なものよりも半減しがちになり、かつ怒り出してしまう人もいます…。
クレイジータンクは「わからないことにこそ可能性がある」「学習と行動を続けることが大切」といったメッセージをことあるごとに伝えていきます。
5.出発当初はリーダーが止まると全部止まる
新規事業、と聞くとしっかりした事業計画や目標、ビジョンの元に社員がやるべきことをどんどんやっていく姿が想像されます。まさにそれが理想の新規事業の姿です。
しかし、実は今この世の中はそういった新規事業が作りにくい状態も存在していると感じています。その根源的理由として、DX化における新しいIT技術や新しい情報が世界中でどんどん更新されるという状態があります。それに合わせて事業計画や時にはビジョンすら更新されてしまうからです。
しかし、そうなると何が起こるか。統率者である社長やリーダーが悩んだり、行動を止めてしまうとすべてが止まってしまうのです。だからこそ、変化の激しい時代に常に柔軟に変化に対応しながら先人を切ってくれる人材の価値はどんどん上がってくる感じています。
クレイジータンクが関わるDX化や新規事業案件では、常に「変化を恐れずどんどん受け容れていこう」は合言葉になっています。
6.少しの成功体験が超人感覚を生む
これは、私たち自身も日々プロジェクトを進める上で特に気をつけていることかもしれません。人材育成に携わっていると業種問わず多くの人が陥りがちな状態、それが「少しの成功体験が超人感覚を生む」です。
クレイジータンクは人材育成やクリエイティング事業(詳しくはこちら)に携わる時、「会社の成長曲線と人の成長曲線をなるべく同じ角度で上昇させる」ということを意識しています。
これはどういうことかというと…例えば商品をたくさん売りたい会社があるとします。仮にその状態を実現することができたとしても、それに伴い求められるサービスの質向上やトラブル対応能力の向上など、組織の「人」の成長が伴っていないと結局会社の成長を阻害してしまうということが発生します。なるべく「会社」「人」の成長曲線を同じようにしておくことで、ストレスなく目標に迎えるということを表しています。
しかし...会社と人の成長曲線をなるべく同じ角度で上昇させようと動いていても、人の成長曲線の中で「人の“意識”曲線」に突然変異が起こるといったケースが発生します。新規事業推進を通じてひとつの成功体験を得て、それが社内などで評価された時「もう自分一人でやっていける!」と思ってしまう心理状態のことです。
まさに超人になったかのように、気持ちが大きくなってしまったり、時にはともにプロジェクト推進する関係者への必要な確認や連絡をせずにひとりで進めていってしまったり。ほとんどの場合、その後になにか問題が起こりどうすればいいのか分からなくなった時に連絡があり軌道修正することになりますが、その時にはすでに手遅れになっているケースもあるのが事実です。
そうはならないようにこの事例については初動期にメンバーへ共有させていただきますが、実際にその当事者になってみないと身体化できないケースも多いようです。
7.コンサル会社は教師的存在
コンサルティング会社、とは一企業では解決できないことに知見や経験を伝える、ある意味教師的な存在です。教師ですので、その存在が重宝される場合もあれば、生徒によっては煙たがるようなことも起こります。
生徒が「外部の人間が何か言っている」「会社をぐちゃぐちゃにしにきた」と教師を認めることができない場合には、コンサル会社の価値が適切に企業に反映されない状態になってしまいます。
教師と生徒という立場認識をするのではなく、あくまで人と人であると意識することがとても重要だと考えています。そのためには、コンサル会社側もクライアント企業(そして社員)側も双方に目標に向かって意見を出し合い、同志のように事業推進していく状態を創り上げる必要があります。それが何かしらの理由でむずかしい場合には体制の変更も検討する必要が出てくるでしょう。
8.体育会系世代が若手を縮こませる
クレイジータンクは世代間で人を分けることを好みませんが、メンバーの中にはミレニアル世代が多くいます。学生時代の部活動では先輩の存在は絶対的で、敬語の使い方や態度を間違えれば厳しく怒られたものです。
しかし、その下の世代に話を聞くと人によっては「敬語はなかったです」「上下関係は緩いです」という若手もいます。明らかに世代によって経験が異なります。
現在は、ミレニアル世代よりもさらに厳しい上下社会、まさに体育会系と呼ばれる世界で育ってきた世代が会社の中で上司として君臨しています。そういった方々の意見は"絶対的であるべき"と本人たちは考えています。
その結果、どんなことが起こるのか。もともと忖度してしまう世代と体育会系世代が長い時間一緒に仕事をすると...……想像は簡単にできると思います。
新規事業を推進する上でこういった「絶対的」な存在は時として毒になるケースがあります。先にも書きましたが「新規性」は「わかりにくい」ものから生まれることが多くあるため、若手が自由に発想し発言できる機会を自然と喪失するような状態は百害あって一利なし、であることがお分かりいただけるかと思います。
9.逃げ切れない世代は、逃げ切り世代を捕まえろ
逃げ切り世代...逃げ切れない世代...
逃げ切り世代は、クレイジータンクがオリジナルで作った言葉です。簡単に説明すると、年金もある程度もらえて、仕事の面で挑戦しなくても退職金ももらえるような、まさに死ぬまでに"本当のお金の苦労"をしないで済む世代のことを指します。
逃げ切れない世代はその逆で、年金がもらえるのか不透明で、仕事でも終身雇用もなくなり漠然とした不安を持ちやすい、まさに若い世代のことを指します。
クレイジータンクメンバーには逃げ切り世代はいません。企業案件でさまざまな企業に関わるとまさにこの逃げ切り世代と逃げきれない世代の間に大きな隔たりがあること感じます。
逃げきれない世代は漠然とした不安や未来に対する希望を持って色々挑戦しようとします。しかし、逃げ切り世代は挑戦して失敗する確率や自分の評価を下げないような選択をどうしてもしてしまいがちです。
逃げきれない世代は、逃げ切り世代の人たちを捕まえて仲間にするスキルが求められています。
10.分からない、が怖い
「どれぐらいの売り上げが見込めるの?」
「結果が見えないのだけど」
「デジタルに疎いから分からないよ」
「文化が違い過ぎて理解ができない」
こんなことを言われた経験がある人も多いのではないでしょうか。当たり前にビジネスには事業計画というものが存在し、ある程度未来を見込んだ状態で投資が始まります。その未来が不明確な場合で、思いや勢いを持ってビジネスを展開する企業をベンチャー企業と呼び、棲み分けがされています。
景気が悪くなった、言われるようになってどのくらい年月が経ったでしょうか。誰もが分かる事業計画を通し続け成長した企業はどのくらいあったでしょうか。分かることを進めることを否定したいのではありません。しかし、分からないことに挑戦することを否定する人が多いことは事実です。
分からないことが怖い、逃げ切り世代とも繋がる思考かもしれませんが、バブルが残してくれた恩恵を受け過ぎた社会がまだまだ残っているように感じています。
最後に
どれだけ技術革新が起こっても、どれだけ優秀なコンサルタントが入っても、どれだけ面白い事業計画が生まれても、結局はヒトがどのような振る舞いを見せるかが大切です。
会社という組織体は、社会という入れ物が持つルールの中で発展してきました。終身雇用があり、社会保障があり、年功序列や福利厚生など、先人が作ってきたルールの上に成り立ってきました。しかし、時代は少しずつたしかに変わりつつある中で、会社も人も変化が求められています。
変化には必ず摩擦が付き物です。本noteでは私たちが目の当たりにしてきた摩擦を10選でご紹介しましたが、この他にも現場ごとの問題や課題があるでしょう。そういった摩擦があるからこそ変化や革新が起きることも確かです。しかし摩擦に正面から向き合う当事者は日々悩みながら挑戦をつづけていかなければならず、持久力が求められるのもまた事実です。
だからこそクレイジータンクでは関わる全てのヒトの気持ちに寄り添いながら、自らが変化を楽しみ、挑戦の当事者であり続けたいと思い行動をしています。
会社を変えたい、何か挑戦したいと思っている人がいましたら、その苦しみや楽しさを感じているのはあなた一人ではありません。
一緒に変化の時代を楽しんでいきましょう!
クレイジータンク一同
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