とある大豆の一生②
僕たちを買ってくれた消費者さんの家に着いた。
レジ袋から取り出され、ちらりと横目で周りを見るとコンロの上に鍋がおいてあった。
大豆B 「どうやら一般家庭の台所みたいね。カレーや肉じゃがの具材かしら」
大豆A 「そうだね。あっ、酸素が入ってきたぞ。光がまぶしいなぁ…」
ハサミで密閉されていた袋が開封され、新鮮な空気とLEDの光が流れ込んできた。製造所以来の新鮮な空気を取り入れられ、開放的な気分だ。
30代くらいの女性と、その隣に5歳くらいの男の子の顔が袋の中から確認できた。
何を話してるかは分からないが、仲のよさそうな親子だ。
上空からおもむろに男の子の手が僕たちを覆うように陰をつくり数十粒の豆たちが手中に収められ天へ昇っていった。----------------------- その瞬間、
男の子「鬼はー外!!福はー内!!」
豆たちは空を切り、鬼の面を付けた男に向かって特攻隊のように投げつけられ、床へ叩きつけられた。そして次々に袋の中の大豆たちも、もぎつかまれては中を舞った。
大豆A 「なんだこれは!?ぐはぁっ!」
大豆B 「いやぁーー!!!」
大豆C 「痛い!!何の戦争だ!?」
逃げる鬼と追いかける男の子による足音で、床は地響きが鳴り止まない大地震だ。大豆たちは振動で小刻みに飛び上がる。
大豆 D,E,F 「ぅぎゃあぁぁぁぁぁっっ!!!!」
数粒の豆が踏まれた。至るところで断末魔が聞こえる。
大豆たちは無事食べ物として一生を終えることができるのか………
***続く***
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