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「迷惑をかけたくない」想いが行動を変えた。CQ×TRAPOLサステナブルツアーで気付いた、それぞれの「サステナブル」【旅レポート②伊平屋島編】

ゼロカーボン社会を目指し、行動変容を呼びかける『CQプロジェクト』は、ローカルフレンド(現地の人々)と出会い、現地に溶け込むような旅を提供するサービス『TRAPOL(トラポル)』とコラボして、環境課題への価値観を変える「サステナブルツアー」を開催しました!

今回は、伊是名島編のレポートに引き続き、ツアー3日目から訪れた沖縄県・伊平屋島(いへやじま)で過ごした2日間と、旅を通じて参加者が学んだことを振り返ります。

そこには、個性的なローカルフレンドとの出会いが教えてくれた、それぞれの「サステナブルとの向き合い方」がありました。


ツアー3日目:ビーチクリーンに、ダイビング。伊平屋島の海と向き合った1日

■渡し船で、伊平屋島へ移動

ツアーは3日目を迎え、この日で伊是名島とはお別れです。次に向かう伊平屋島は、伊是名島の隣。

2つの島を繋ぐ交通手段がないため、今回は特別に伊平屋島のローカルフレンドが渡し船を出してくれました。チームに分かれて、船に乗り込むと、船は勢いよく前進していきます。

船が出てしばらくすると、参加者の誰かが「あ!」と声を上げました。参加者が指すほうを見ると、なんと伊是名島のローカルフレンドが平日の仕事を抜け出して、私たちの見送りに!

満面の笑みで大きく手を振ってくれるローカルフレンドの姿に驚いて、参加者も手を振り返します。たった2日間の短い時間でしたが、参加者とローカルフレンドの間にはたしかに絆が芽生えていました。

■伊平屋島に到着!現地の公民館で、環境保全について伺う

船に揺られること約20分。伊平屋島に到着し、島の公民館に向かうと、また新たにたくさんのローカルフレンドが私たちを出迎えてくれました。

ここからは、今回のツアーの本題である「環境課題」について、ローカルフレンドから話を伺います。ローカルフレンドのお話では、海を汚染する「プラスチック」について触れられました。

島に漂着するゴミのほとんどは、プラスチックです。プラスチックは今や生活に欠かせないものですが、土に還らないため、海を汚し、海洋生物を苦しませる原因になっています。

しかも、プラスチックは太陽光を浴びて劣化すると、毒性の物質を吸着するようになるんです。

大きなプラスチックであれば飲み込むことはありませんが、「マイクロプラスチック」と呼ばれる細かなプラスチックは、魚が飲み込み、それを食べる私たち人間の身体にも蓄積していくんですよ」

近年、漁に使われる網や漁具もプラスチック製のものが増えており、プラスチックによる海洋汚染はさらに深刻化しているのだそう。

参加者たちは、自分たちが当たり前のように使っているプラスチックが巡り巡って、海を汚していることにショックを覚えていました。

「“地球を守る”といった主語が大きな話は、自分ごと化するのが難しいかもしれません。でも、環境について友人と話し合ったり、なるべく水を汚さないよう環境負荷の少ないシャンプーや洗剤を使うことはできます。そうして、少しずつ環境課題を自分ごと化していってほしいんです。

最近では、サンゴ礁に有害な紫外線吸収剤を含まない、海洋環境に優しい処方の日焼け止めも増えてきました。海水浴をするときも、そんな日焼け止めを使うなど、自然への負荷を減らす行動を少しずつ増やしてみてください」

さらに、伊平屋島の海を愛するローカルフレンドたちは、「サンゴを大切にしてほしい」と続けました。

海をキレイに保つ条件は、人が少なく、サンゴが多いことにあるのだそう。海に入ったときも、決してサンゴを踏まないように念を押され、島に生きる人々がどれだけ海を大切にしているのかが、言葉一つひとつから伝わってきました。

■灼熱の太陽の下で、ビーチクリーン!

伊平屋島の海を汚すプラスチック問題についてお話を伺ったあと、自分たちの手で漂着ゴミを掃除する「ビーチクリーン」を行いました。

実際にビーチクリーンをしてみると、落ちているゴミはペットボトルやビニール袋など、本当にプラスチック製品ばかり。

なかには海外から流れ着いたものもあり、自分が何気なく買っているペットボトルが、「もしかすると、どこかの海を汚しているのかもしれない」と思うと、罪悪感に駆られました。

ビーチの気温は30度を超え、灼熱の太陽光が降り注ぐなかで行うビーチクリーンは、決して楽な作業ではありません。ゴミを1つ拾うたびに、体中から汗が吹き出してきます。

しかし、自分たちが捨てたプラスチックが海を汚しているのだからこそ、自分たちで拾わなければならないという使命感が、過酷な状況での作業を後押ししていました。

参加者が一生懸命ゴミを拾う姿を見て、ローカルフレンドは心配そうな顔をしながら、「無理しないでね」と冷たい飲み物を準備してくれました。そのおかげで、疲れた身体が少し癒やされます。

最終的には20袋以上のゴミが集まり、ビーチクリーンは終了。ゴミの山を見たローカルフレンドからは「海をキレイにしてくれて、ありがとう!」と感謝いっぱいの言葉をもらいました!

■ついに、伊平屋島の海にダイブ!

灼熱のビーチクリーンが終わったら、次はお待ちかねの海! シュノーケリングとスキンダイビングのチームに分かれて船に乗り込み、ローカルフレンドおすすめのスポットに連れていってもらいました。

海底が見えそうなほど透明度の高い海に、恐る恐る入ってみると、海水はひんやりと冷たく、熱された身体を冷やしてくれます。

ゴーグルをつけて、海中を見るとそこは別世界! まるで絵画を見ているかのような美しい風景が広がっていました。

サンゴのまわりには、カラフルな魚が泳いでおり、その鱗は太陽の光を受けて、宝石のようにキラキラと輝いていました。

日常的にこんな海を見ていたら、心も豊かになりそう。ローカルフレンドのおおらかな人柄の理由がわかるような気がしました。

船を運転してくれたローカルフレンドの1人である「れいちゃん」に話を聞いてみると、彼女はこの海が気に入って、故郷である山口県から伊平屋島に移住したのだそう。

どこから見ても美しい海は、私たちの本能を刺激し、感動せずにはいられません。れいちゃんがこの海に魅了されて、移住したのも頷けました。

しかし、れいちゃんによると、彼女が山口から引っ越してきた5年前に比べて、海は毎年少しずつ濁ってきているといいます。海を愛して移住してきた彼女の「キレイな海を守りたい」という言葉には重みがありました。

参加者の1人がドローンで撮影してくれた1枚。
上空から見ても、海が透き通っているのがわかります。

■夜は、伊平屋島のローカルフレンド特製バーベキュー

伊平屋島での最初で最後の夜は、ローカルフレンドが公民館の庭でバーベキューを用意してくれました。

海で捕れたばかりのサザエや夜光貝、魚などを炭火で焼いた特製バーベキューは絶品。島に来たからこそ味わえるおいしさに、参加者たちは感動。

おいしい夕飯を楽しみながら、ローカルフレンドは島での生活について話してくれました。伊平屋島では、職業の選択肢が限られているため、男性の多くは漁師として働いているのだとか。

特に、伊平屋島の特産品である「もずく」を専門とする漁師が多く、バーベキューでもローカルフレンドが採ってきたもずくを食べさせてもらいました。

「スーパーで買って食べるもずくと全然違う!」と参加者が口々に言い合うくらい、歯ごたえがあって旨味の強いもずくは、伊平屋島のきれいな海が育んでいるのだそう。

しかし、伊平屋島付近の島では、海外企業によってリゾート開発の計画が進められているのが現状です。

もしリゾート施設が完成すれば、海に浮かぶもずくは景観を崩すため、生産自体を停止しなければならない可能性もあると、ローカルフレンドが教えてくれました。

リゾート施設が成功すれば、伊平屋島にもたらされる経済効果は計り知れません。しかし、自然環境への影響も大きいリゾート開発をこのまま推し進め、観光による経済効果を求めていいのかどうかは、現地住民の間でも意見が分かれているといいます。

沖縄名物オリオンビールを片手に集合写真!

■伊平屋島で、ツアー3日目が終了

伊平屋島では実際に豊かな海でシュノーケルやダイビングに挑戦することができ、参加者の誰もがその美しさに圧倒されました。

しかし、それと同時に現地のローカルフレンドの話を聞くと、リゾート開発によって美しい海が脅かされる可能性があるという事実を知ってしまったのです。

伊平屋島は深刻な少子高齢化に瀕しています。リゾート施設によって島の近隣に雇用が生まれ、さらに観光客が増えれば、島の抱える課題に解決の糸口が見えるかもしれません。

その一方で、島の美しい海に影響が出ると考えると、私たちはどちらを選ぶべきなのでしょうか。現地に滞在したからこそ、自分のことのように悩みました。

TRAPOL代表の森脇さんが「環境課題は正解がないからこそ、自分なりの答えを探してみてほしい」と話していたことを思い出します。答えの出ない問いに頭を悩ませ、ツアー3日目は終了です。

ツアー最終日:島との別れ。参加者が自然の中で感じた環境課題への想いとは

■ローカルフレンドの案内で、伊平屋の絶景フォトスポット巡りへ

ツアー最終日は、山口県から伊平屋島に移住してきたローカルフレンドのれいちゃんの案内で、伊平屋島のフォトスポット巡りに行ってきました。

島にはまだ人間の手が入っていない原風景が残っており、自然が作り出した美しい景色をたくさん見ることができます。

島を案内してくれたローカルフレンドのれいちゃん

特に印象に残ったのが、日本屈指の秘境と呼ばれる「クマヤ洞窟」。こちらは、むき出しの珪岩地層に囲まれた岩山で、沖縄に伝わる伝統的な霊能者・ユタの修行の場となっています。

ほんの数十センチの岩の裂け目を通ると、その先には大きな洞窟が広がっており、奥にはユタが儀式に使う鏡や祠が祀られています。

思わず息を飲むような荘厳な光景に、自然の持つ底知れぬパワーを感じました。伊平屋島に暮らす人々は、こんな自然にいつでも触れられる生活をしているからこそ、精神的にも自然との距離が近いのかもしれません。

30人以上の参加者が入ってもまだ余りある広さのクマヤ洞窟

■昼食後、旅の感想を発表

いよいよ旅も終盤。伊平屋島での最後の昼食を楽しんだあとは、今回のツアーで考えたことについて、それぞれの感想を発表することに。

まずは、ローカルフレンドのれいちゃんが、参加者と過ごした2日間について話してくれました。

「今回は、伊平屋島に来てくれて、ありがとうございました! 最初はどんな人たちが来るんだろうと思っていたけど、島の海を楽しんでくれて、ビーチクリーンにも真剣に取り組んでくれて、嬉しかったです。

島には美しい自然がある反面、狭い土地だからこそ島に暮らす人々は、島だけの価値観に囚われてしまっていることもたくさんあります。

こうして、若い世代のみなさんが新しい価値観を広めてくれることは、島の人々にとっても価値観を広げるきっかけになったと思うんです。だから、また伊平屋の海に遊びに来てくださいね!」

島に移住してきたれいちゃんならではの言葉に、参加者からは「また絶対、この島に来たい」という気持ちが溢れます。

そして、「今まで考えたこともなかった環境課題について、真剣に考えるきっかけになった」という感想が、たくさんの参加者から出てきました。

日常生活を送っているだけでは見えてこなかった環境課題に取り組む理由が、伊是名島と伊平屋島を訪れたことによって、「この自然を守るために、環境課題に取り組みたい」という明確な形で見えてきたようです。

■ついに出港。港では、たくさんのローカルフレンドが見送りに。

島から本土に向かうフェリーが到着し、ついに島ともお別れ。フェリーの下では、ツアーに協力してくれたローカルフレンドはもちろんのこと、ローカルフレンドの友だちや親戚までもが一同に見送ってくれました。

フェリーの出発と共に参加者たちが投げたカラーテープが、伊平屋島の美しい空に舞います。寂しさを胸に、3泊4日のツアーが無事終了しました。

旅を終え、普段の生活に戻っても「自然と人々への想い」は残り続ける

ツアーを終え数日経ってから、参加者に環境課題に関して意識が変わったかを聞いてみました。

すると、「環境課題のことはまだよくわからないけれど、少なくとも島に暮らす友だちに迷惑をかけたくない」という言葉が返ってきたのです。

旅に出る前は、自分が捨てたプラスチックゴミがどこに行き着くのか、世の中にある「エコ」と名の付いた行動や商品にどんな意味があるのか、イメージが湧かなかったという参加者たち。

しかし、単なる観光客として訪れるのではなく、現地のローカルフレンドと時間をかけて関係性を築いたからこそ、その土地を大事にするローカルフレンドを通して、島の自然を見ることができるようになりました。

島で暮らすローカルフレンドはみんな優しく、協力し合って暮らしているため、自分以外のことも自分ごとのように大切に思っています。ツアー中も、現地住民が助け合う様子を何度も見てきました。

「自分さえ良ければいい」という感覚ではなく、「周囲を含めた自分」という広い範囲で生活を捉えているからこそ、島の住民は自然環境のことも自分ごととして捉えられるのではないかと感じます。それが、島の住民ならではの「サステナブルへの向き合い方」です。

一方で、島の住民が持っている自分を含めた広い範囲で生活を捉える感覚の対局にあるのは、すでに環境を蝕んでいる「もっと便利で、もっと快適でありたい」という人類の身勝手な欲望かもしれません。

ローカルフレンドと過ごして良い影響を受けた参加者たちだったからこそ、キレイな海にゴミが漂着している光景にショックを覚えることができました。

そして、その海を愛する友だちに迷惑をかけたくないと思えた体験が、環境への向き合い方を大きく変えたのだと感じます。

実際に、参加者の中には、旅から帰ってきてマイボトルやマイバッグを使い始めたという人もいます。実体験を通じて変わった意識は、たしかにCQプロジェクトが目指す「行動変容」に繋がるのだと思えた瞬間でした。

島に生きる人々は、自然と密接に暮らしているからこそ、それぞれのサステナブルとの向き合い方を持っています。しかし、そうでない自然から離れて生きている人々はどう暮せばいいのでしょうか。

その1つの答えが、この旅で何度も心に浮かんできた「旅で出会った美しい自然と、人々の笑顔を守りたい」という気持ちを持って、生活を営んでいくことなのだと改めて感じます。

(取材・執筆=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)/(撮影=深谷亮介(@nrmshr)、TRAPOL提供、ツアー参加者提供)

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